緊急消防援助隊(緊援隊)の活動は、炎天下・真夏・高温火災・長時間活動など、
熱中症リスクが極めて高い環境で行われます。
実際、熱中症は隊員の負傷原因として上位に入り、
「体調管理が不十分=隊の戦力喪失」 につながる重大要因です。
ここでは元消防職員として、緊援隊が実践する熱中症対策と健康管理の“核心”を解説します。
■① 熱中症対策は「装備よりも先に整えるべき準備」
熱中症は 準備不足でほぼ100%発生する防げる事故 です。
緊援隊が現場へ入る前に行うことは、
- 前日の睡眠
- 朝の水分摂取
- 塩分補給
- 暑熱順化(体を暑さに慣らす)
- 活動前の体調自己チェック
現場に行く前から勝負は始まっています。
■② 活動前の“水分・電解質補給”を徹底する
消防は発汗量が多く、体重2〜3kg減ることもあります。
そのため緊援隊は活動直前に必ず、
- 水
- スポーツドリンク
- 塩タブレット
などで 水分+電解質 を同時に補給します。
水だけでは逆に危険で、低ナトリウム血症を招きます。
■③ 防火衣の中は40℃以上になる“灼熱地獄”
炎天下で防火衣を着ると、内部温度は40〜60℃まで上昇することがあります。
- こまめな服の開放
- 陰でのクールダウン
- ベストの冷却(保冷剤など)
- 活動前に濡れタオルを首へ
これらを徹底し、少しでも体温上昇を遅らせる工夫が必要です。
■④ 20〜30分ごとの“強制休憩”が必須
熱中症は「自分で自分の危険に気づけない」災害です。
そのため緊援隊は 強制的に休憩を入れる方式 を取ります。
- 早め早めの休憩
- 交代制で活動
- 涼しい場所での冷却
- ヘルメット・防火衣を脱いで体温下降
元消防職員として、
無理をした隊員から倒れるのは現場の“あるある” です。
■⑤ 指揮者が隊員の“異変サイン”を見逃さない
熱中症は必ず前兆があります。
- 返事が遅い
- 歩き方がふらつく
- 顔が赤い or 逆に青い
- 作業が雑になる
- 汗が止まる
緊援隊では、これらの異常を指揮者が即座に察知し、
即撤退・冷却・補水 を判断します。
■⑥ 現場には“水分ステーション”を必ず設置
活動拠点(ベースキャンプ)には、必ず水分補給所を作ります。
- 冷えた水
- スポーツドリンク
- 氷・保冷剤
- 塩タブレット
- 椅子と日陰
- ミスト・扇風機
これにより隊員の体力維持が飛躍的に向上します。
■⑦ 夜間・休息時の健康管理も“活動の一部”
熱中症は日中だけでなく、夜や睡眠中にも危険があります。
緊援隊は休息中も健康管理を怠りません。
- 十分な睡眠
- 風通しの確保
- 水分補給の継続
- 食事と塩分摂取
- 体調不良者の早期申告
隊員が倒れれば、翌日の活動力が著しく低下します。
■⑧ 熱中症リスクが高い隊員を“事前に外す”判断もある
指揮者は、以下の隊員を前線に出さない判断をすることもあります。
- 睡眠不足
- 体調不良
- 食事を取れていない
- 発熱・倦怠
- 強い疲労
- 夏バテ気味
これは甘えではなく、
“隊員を守るためのプロの判断” です。
■まとめ|熱中症対策は「人を守るための戦術」
緊急消防援助隊は、暑さの中での活動が最も危険であることを熟知しています。
- 活動前の準備
- 電解質補給
- 強制休憩
- 体温管理
- 指揮者の観察
- クールダウン設備
- 夜間含む健康管理
これらを徹底することで、隊員の命を守りつつ、
継続的な活動力を維持しています。
結論:
熱中症対策と健康管理は、緊急消防援助隊の“命を守る最重要任務”。 元消防職員として、暑さは火より危険だと断言します。

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