緊急消防援助隊(緊援隊)は、被災者の捜索・救助・支援活動を行うだけでなく、
住民とのコミュニケーション も重要な任務の一つです。
災害直後の住民は、不安・混乱・疲労・怒り・焦りなど、
さまざまな心理状態に置かれており、
適切な対話が行われなければ、誤解や不信感が生じることもあります。
ここでは元消防職員として、緊援隊が現場で実践している「住民とのコミュニケーションの重要ポイント」を解説します。
■① コミュニケーションは“安心を届ける行動”
住民が欲しているのは、
「状況を理解したい」「今何をすればいいか知りたい」という“安心材料”です。
- 現場の状況
- 今後の見通し
- 危険箇所
- 支援の進み具合
- 避難行動の必要性
これらを丁寧に伝えることで、住民の不安は大幅に軽減されます。
■② 住民の話を“まず聞く”姿勢が信頼につながる
最初から説明だけをすると、住民は心を開きません。
大切なのは 「聞く → 受け止める → 必要な情報を返す」 という順番です。
- 不安
- 家族の安否
- 家の状態
- 救助要請
- 今の困りごと
住民が抱えている気持ちを受け止めることで、
その後のコミュニケーションがスムーズになります。
■③ 現場情報を“わかりやすく簡潔に”伝える
災害中は情報量が多すぎて、住民も混乱します。
そのため、説明は以下を意識します。
- 専門用語は使わない
- 結論から伝える
- 行動指示は簡潔に
- 地図や指差しで説明する
- 誤解を招く表現を避ける
元消防職員として、
「伝わっているか」を常に意識するのが現場の鉄則 です。
■④ 高齢者・子ども・外国人には“特別な配慮”が必要
住民には多様な属性があり、伝え方を変える必要があります。
- 高齢者:ゆっくり・はっきり・メモを渡す
- 子ども:怖くさせない・安心させる言い方
- 外国人:簡易言語・翻訳アプリの活用
- 障害者:状況に応じたサポート
誰も取り残さず、安全情報を届けることが重要です。
■⑤ 避難行動の促しは“冷静・丁寧に”
避難が必要な場合でも、
「強く言う=伝わる」ではありません。
- 危険の理由を説明
- どこへ避難するか伝える
- 移動手段を案内
- 不安に寄り添う
- 強制ではなく“納得”を促す
強圧的な指示は反発を招き、避難行動の妨げになります。
■⑥ 現場での“表情・態度”も安全の一部
隊員の態度は、住民の安心に直結します。
- 焦った態度を見せない
- 冷静な声で話す
- 身だしなみを整える
- 礼節ある対応
- 子どもには特に優しく
- 不安な住民には寄り添う姿勢
緊援隊の落ち着いた行動が、住民の心を安定させます。
■⑦ 住民とのトラブルを防ぐ“情報の一元化”
複数の隊員がバラバラに説明すると、
住民は混乱し不信感が生まれます。
そのため緊援隊は、
- 伝える内容の統一
- 指揮本部からの最新情報の共有
- 誤解を生む発言の回避
- SNSでの未確認情報の否定
を徹底しています。
■⑧ 感謝されるより“安心してもらう”ことを目的とする
隊員の目標は「ありがとうをもらうこと」ではありません。
目的は 住民の安全確保と不安軽減 です。
- 感謝されなくても行動を続ける
- 住民の混乱には寄り添う
- 時に怒られることもあるが冷静に対応する
元消防職員の経験上、
住民が落ち着き、行動が安全になることこそ最大の成果 です。
■まとめ|住民との対話は“安全を生む力”
緊急消防援助隊の活動には、技術だけでなく、
住民とのコミュニケーション力が欠かせません。
- まず話を聞く
- わかりやすく伝える
- 特別な配慮が必要な住民を支える
- 避難行動を丁寧に案内
- 態度や表情で安心を届ける
- 情報を整理して一貫性を保つ
これらができることで、住民の安全が守られ、活動もより円滑に進みます。
結論:
住民とのコミュニケーションは、緊急消防援助隊の“現場安全を強化する最強のツール”。 元消防職員として、対話の質が災害対応を大きく左右すると確信しています。

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