緊急消防援助隊(緊援隊)は、被災地で救助・捜索・消防・避難所支援を行いますが、
その活動を支えるのは 「被災地でのマナー」 です。
被災者は強い不安、喪失感、混乱の中にあり、
隊員の一つひとつの言動が、安心にも不信にもつながります。
ここでは元消防職員として、緊援隊が実践している「被災地での振る舞い・配慮の鉄則」を解説します。
■① 被災者の“心情への配慮”が最優先
災害直後の住民は、精神的に非常に不安定です。
- 家族の安否が不明
- 家が倒壊
- 思い出の品が失われた
- 怒りや悲しみの爆発
こうした状況では、
「相手の心を傷つけない」「不安を煽らない」態度 が絶対条件です。
■② 現場での言葉選びに細心の注意を払う
被災地では、何気ない言葉が大きな誤解や悲しみを生むことがあります。
避けるべき言葉の例:
- 「大したことないですよ」
- 「思ったより被害少ないですね」
- 「これくらいなら大丈夫」
- 「早く片付けましょう」
代わりに、
- 「お辛かったですね」
- 「安全のため確認させてください」
- 「ご不安な点はありますか?」
など、寄り添う言葉が必要です。
■③ 写真撮影は禁止・記録は必要最小限で
被災地での写真撮影は極めて慎重に扱います。
- SNS投稿は厳禁
- 住民の許可なしに撮らない
- 個人情報・家財が写らないよう配慮
- 任務上必要な記録のみ許可された端末で行う
元消防職員として、
写真の扱いでトラブルが起きるケースは現場あるある です。
■④ 大きな声・威圧的な態度は絶対に避ける
災害直後は、たとえ良かれと思った行動でも誤解を生むことがあります。
- 威圧的な指示
- 無表情
- 乱暴な動作
- 早口での説明
隊員は常に 落ち着いた態度・穏やかな口調・丁寧な動作 を心がけます。
■⑤ 住民の“プライバシー”を守る
避難所や仮設の場では、プライバシーが極端に失われています。
- 会話の内容を必要以上に聞かない
- 避難スペースに無断で入らない
- 女性や子どものスペースに配慮
- 心のケアが必要な人には静かな環境を確保
プライバシー保護は非常に重要です。
■⑥ 車両・資機材の扱いも“被災地マナー”の一部
緊援隊は大型車両を多数運用しますが、
その扱いが住民の印象を大きく左右します。
- 住民の生活動線を塞がない
- 不必要にサイレンを鳴らさない
- 車両を家屋の前に長時間停めない
- 泥・水の飛散に注意
「住民の生活を妨げない配慮」がマナーです。
■⑦ 被災者が怒っているときは“理由の裏側”を見る
被災者は感情を爆発させることがあります。
- 救助が遅い
- 支援が届かない
- 行政への不満
- 理不尽な怒り
しかしその裏には、
- 恐怖
- 喪失感
- 不安
- 焦り
などの根深い感情があります。
隊員は怒りの矛先を受けても感情的にならず、
「まず受け止める」 ことが大切です。
■⑧ “被災者主体”の姿勢を忘れない
緊援隊の目的は、
「助ける側が主役になること」ではありません。
- 住民の意見を尊重
- 支援は押し付けない
- できること・できないことを丁寧に説明
- 主体はあくまで“住民”である
元消防職員として、
支援者の行動が“被災者の尊厳”を守る と強く感じています。
■まとめ|マナーは“信頼と安全を生む技術”
緊急消防援助隊の活動は、技術だけでなく、
住民への配慮・言葉・態度といった“人としての振る舞い”が不可欠です。
- 心情への配慮
- 言葉選び
- 写真・情報の扱い
- 落ち着いた態度
- プライバシーの尊重
- 車両・資機材の適切運用
- 感情の受け止め
- 被災者主体の姿勢
これらができることで、住民の安心が生まれ、活動も大きく前進します。
結論:
被災地でのマナーは、緊急消防援助隊が“信頼される存在”であり続けるための根幹。 元消防職員として、人としての配慮が災害対応の質を決めると断言します。

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