【防災士が解説】防災 × プレースリップ(前兆すべり)|大地震を引き起こす“ゆっくりした始まり”とは?

地震は突然起きるように見えますが、実はその前に「断層がゆっくり滑る現象」が起きていることがあります。
この現象を プレースリップ(前兆すべり) と呼び、近年の観測技術の向上により注目されています。

プレースリップを理解すると、
「地震は何がきっかけで始まるのか」
がより明確になります。


■① プレースリップ(前兆すべり)とは?

プレースリップとは、
地震が発生する直前に、断層がゆっくりと滑り始める現象 のことです。

  • ゆっくりしたすべり
  • 人は体感できない動き
  • 地震波がほとんど出ない
  • 数時間〜数日続くこともある

地震は、この“前兆の滑り”が急激な破壊へ進んだ結果として発生します。


■② なぜプレースリップが起きるのか?

断層には常に大きな力がかかっており、
岩盤が限界に近づくと 弱い部分から静かに滑り始める と考えられています。

  • プレートの圧力
  • 地下深部の高温・高圧環境
  • 岩盤のひび割れ
  • 摩擦力の低下

こうした条件が重なり、地震前の「静かなすべり」が起きます。


■③ プレースリップは“地震の引き金”になる

プレースリップは、
その後の大きな地震を誘発することがあります。

  • ゆっくりした滑り →
  • 応力が一気に集中 →
  • 断層が急激に破壊 → 大地震発生

つまり、プレースリップは地震の始まりの合図 のようなものです。


■④ 南海トラフ巨大地震でも重要

南海トラフでは、プレースリップの研究が特に進んでいます。

理由は、

  • 過去の巨大地震で前兆すべりが確認されている
  • プレート境界が広大で観測データが豊富
  • 海底地震計・海底変位計が整備されている

南海トラフの前兆として、
プレースリップは最も注目されている現象の一つです。


■⑤ プレースリップは“予知”にはつながらない

ここは非常に重要なポイントです。

プレースリップを観測しても、 地震の日時を特定することはできません。

理由は、

  • 前兆すべりが起きても地震が発生しない例もある
  • すべり量や速度が一定ではない
  • 観測できない深部で起きることもある
  • 地震学的に完全な因果関係が特定できていない

「確率は上がる」ものの、確実ではありません。


■⑥ それでも重要な理由

プレースリップを監視することは、
巨大地震の早期把握にとって重要です。

  • 地震発生の可能性上昇を把握
  • 広域の防災態勢の準備
  • 行政・防災機関の警戒レベル引き上げ
  • 津波対策の迅速化

科学的データを把握することで、
“早期の備え”が可能になります。


■⑦ 一般の家庭が理解するメリット

プレースリップを知ることは、家庭防災にもつながります。

  • 地震の仕組みがわかる
  • 地震は突然ではないと知れる
  • 危機意識が高まる
  • 長期備蓄・避難計画に前向きになれる
  • 地震ニュースを正しく理解できる

防災意識を高める「知識の土台」になります。


■⑧ プレースリップ情報はどこで確認できる?

以下の機関が継続監視しています。

  • 気象庁
  • 防災科学技術研究所(NIED)
  • 海上保安庁(海底地殻変動)
  • 大学の地震研究所

一般向けには、
地震活動・海底変位の異常速報などを通じて情報が提供されます。


■まとめ|プレースリップは“静かに始まる地震のサイン”

プレースリップは、地震の始まりに起きる“前兆すべり”であり、
地震学の中でも非常に重要な現象です。

  • 地震の仕組みを知る
  • 巨大地震への備えに役立つ
  • 最新の観測技術で把握されている
  • 家庭・地域防災の意識を高める材料になる

結論:
プレースリップは、巨大地震の前に起きうる“静かなサイン”。 防災士として、地震の仕組みを知り、日頃からの備えの大切さを伝え続けたいと思います。

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