南海トラフ巨大地震は、日本で最も被害が大きくなるといわれる巨大災害です。
その中でも特に危険度が高い地域を国が指定しているのが
「南海トラフ地震防災対策推進地域」 です。
指定地域では、強い揺れ・大津波・長期停電・交通麻痺が予測され、
“地震発生後の対応” では命を守れないケースもあります。
ここでは、防災士として
推進地域が指定される理由と、住民が取るべき具体的な備えについて解説します。
■① 南海トラフ地震防災対策推進地域とは?
国が南海トラフ地震に備えるために特別に指定した地域で、
法律に基づき 警戒・避難・防災行動を強化すべきエリア のことです。
指定されるのは、
強い揺れや津波で甚大な被害が予測される沿岸部の自治体で、
- 静岡県
- 愛知県
- 三重県
- 和歌山県
- 徳島県
- 高知県
- 愛媛県
- 大分県
などが広く含まれています。
■② なぜ“推進地域”に指定されるのか
推進地域は、以下のような理由で被害が突出して大きくなると評価されています。
- 津波の高さが 10〜30m以上
- 津波到達が 最短数分〜10数分
- 強い揺れによる建物倒壊
- 広域の火災
- 液状化の発生
- 長期の停電・断水
- 道路・港湾・鉄道の壊滅
- 高齢化率の高さ(避難困難者が多い)
これらの複合災害は、地域全体を長期間にわたり麻痺させます。
推進地域では、通常の災害対策では不十分となるため、
国が重点的に対策を求めているのです。
■③ 最悪の場合、死者32万人・全壊238万棟の被害規模
中央防災会議の想定では、
- 死者:最大 32万人
- 全壊:238万棟
- 断水:数週間〜数ヶ月
- 停電:数週間
- 道路途絶:数日〜数週間
- 津波避難者:最大900万人
日本の防災史上、最も甚大な被害が想定されています。
推進地域は、この被害が特に集中する地点です。
■④ 推進地域は“揺れと津波”の複合災害が最大の特徴
南海トラフ地震では、
巨大な横揺れが起こった後、短時間で津波が押し寄せます。
- 津波到達まで 最短5〜10分
- 地震による道路寸断
- 塀・家屋倒壊で逃げ道が塞がる
- 夜間・冬季は避難が極めて困難
揺れのショックで動けないと、津波に巻き込まれる危険があります。
■⑤ 推進地域に求められる“住民の行動”
国が示す推進地域の住民行動の原則は以下です。
- 揺れたらすぐ逃げる(津波の前に逃げ切る)
- 高台か避難ビルへ最優先で移動
- 車避難は原則禁止(大渋滞が命取り)
- 家族で事前に避難場所を共有
- 夜間の避難を想定した懐中電灯の確保
- 高齢者の避難は地域でサポート
- 地震が小さくても海から離れる
推進地域では、
「避難の早さ=生存率」となる厳しい現実があります。
■⑥ 長期避難に備えた“生活の準備”
南海トラフ地震では、
数週間にわたる以下の障害が予測されています。
- 停電
- 断水
- ガス停止
- コンビニ・スーパーの機能停止
- 燃料不足
- 医療機関の受け入れ制限
そのため、家庭での備蓄は次の量が推奨されます。
- 水:1人あたり7日分以上
- 非常食:最低7日分
- モバイルバッテリー複数
- カセットガス・カセットコンロ
- トイレセット
- 防寒具・雨具
- 車のガソリンは常に半分以上
“南海トラフ仕様の備蓄” が必要です。
■⑦ 推進地域では“地域の助け合い”が特に重要
推進地域には高齢者が多く、
地震直後の避難が難しい人が多いため、
- 近所同士の安否確認
- 避難の手助け
- 集落単位の避難ルート共有
- 見守り活動の強化
など、地域力が生死を左右します。
南海トラフの被害規模は、
「自助+共助」が最大限必要な災害です。
■⑧ 行政・企業にも強化すべき対策が求められている
推進地域では行政・企業にも行動が求められます。
- 津波避難ビルの整備
- 防災道路・避難ルートの確保
- 燃料の確保
- 企業のBCP(事業継続計画)
- 学校の安全確保
- 医療・介護施設の避難計画
- 津波避難タワーの整備
「逃げる場所」と「逃げるための道」を整える必要があります。
■まとめ|推進地域は“日本で最も甚大な被害が想定されるエリア”
南海トラフ地震防災対策推進地域は、
国が特に重大な被害を受けると判断した、最も危険な沿岸地域です。
- 津波到達が最短数分
- 高さ10〜30mの巨大津波
- 死者32万人が想定される被害規模
- 長期の停電・断水による生活危機
- 自助・共助が不可欠
- 行動の早さで命が守られる
結論:
南海トラフ推進地域は「最も早い避難」が必須の地域。 防災士として、住民一人ひとりが“事前の準備と即時避難”を徹底することが何より重要だと強く感じます。

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