首都直下地震は、日本で最も重大な都市災害として位置づけられています。
その対応方針を国全体で統一するために作られたのが
「首都直下地震緊急対策推進基本計画」 です。
これは、被害想定・避難・消防・医療・交通・救助・治安維持まで、
“東京を守るために必要な全分野の国家計画” をまとめたものです。
ここでは、防災士として、計画の要点を分かりやすく整理します。
■① 計画の目的
この基本計画は、首都直下地震における
- 死者を減らす
- 被害を最小化する
- 国の機能維持
- 行政・消防・警察・医療の連携
- 広域支援の迅速化
を確実に行うために作られています。
つまり、
「首都直下地震に対して国・都道府県・自治体が何をするか」 を明確にした国家の行動指針 です。
■② 想定される地震と被害規模
計画が重視する地震は主に2つ。
- 都心南部直下地震(M7.3)
- 立川断層帯地震(M7級)
被害想定は以下の通り。
- 死者:約2万3千人
- 負傷者:約12万人
- 建物全壊:約61万棟
- 帰宅困難者:約800万人
- 火災延焼:約6,000ha
- 首都機能の喪失
都市火災と交通麻痺が甚大な影響を与えるとされています。
■③ 国家レベルの「初動体制」が最大の柱
計画の中核は、地震発生直後の初動体制です。
- 内閣府・警察庁・消防庁・自衛隊が即時対応
- 情報収集司令室を直ちに設置
- 首都圏の被害状況を迅速に把握
- 緊急消防援助隊を全国から派遣
- 医療救護班を即時投入
- 交通管制・救助ルート確保
- 首都機能のバックアップ体制(代替拠点)
「最初の1時間でどれだけ動けるか」が被害を大きく左右します。
■④ 消防・救助・医療の強化策
計画では、都市災害に対応するため以下が強化されています。
- 消防車が通れない地域への初動対応
- 高層ビル・地下街での救助方法
- 同時多発火災への対応力アップ
- DMAT(災害派遣医療チーム)の出動
- 大規模医療拠点の設置
- ヘリポートの活用
火災・建物倒壊・負傷者多発という都市特有の問題を想定しています。
■⑤ 帰宅困難者800万人への対応
首都直下地震では、
通勤者が一斉に帰宅しようとすると都市が完全に麻痺 します。
そのため、
- 一斉帰宅抑制(その場に留まる)
- 事業所内での備蓄義務
- 駅構内の滞留者対策
- 道路の混雑予測
- 帰宅支援ステーションの整備
が計画に明記されています。
■⑥ 都市火災対策(最も重視される項目)
首都直下は地震より“火災”のほうが深刻です。
計画では、
- 木造密集地域の延焼遮断
- 初期消火体制の強化
- 消防車が通れない地域へのドローン・小隊投入
- 消火栓・貯水槽の増設
- 風が強い季節を前提にした延焼モデル
都市火災は「首都直下最大の死因」とされており、対策が最重要です。
■⑦ インフラ復旧と広域支援の仕組み
計画で示されるインフラ対策は以下です。
- 停電の早期復旧
- 上水道・下水処理の緊急補修
- ガス供給の復旧優先順位
- 医薬品・燃料の緊急輸送
- 自衛隊・消防・警察の広域応援体制
- 羽田空港・自衛隊基地の活用
「電気・水・燃料・通信」が国家的優先項目です。
■⑧ 住民が取るべき行動も明記されている
計画では住民の行動も大きく取り上げられています。
- 家具固定の義務を強化
- 7日以上の備蓄
- 帰宅困難を前提にした家族計画
- 周囲の安否確認
- 火災発生時の早期避難
- 地下街からの速やかな脱出
- エレベーター利用禁止
特に「火災拡大を止めるための行動」が重視されています。
■まとめ|首都直下は“国が全力で備えるべき災害”。だからこそ家庭の備えが必須
首都直下地震緊急対策推進基本計画は、
東京を守るために国が定めた総合防災計画です。
- 人口密集地を襲う最悪級の都市災害
- 火災・倒壊・交通麻痺による大混乱
- 帰宅困難者が800万人
- 国・自治体・企業・住民が一体で動く必要
- 初動の1時間が被害を大きく左右
結論:
首都直下地震は「国の計画+住民の備え」でしか守りきれない災害。 防災士として、東京都民・首都圏住民は“都市災害に特化した備え”を強化すべきだと強く感じます。

コメント