日本の都市では、豪雨のたびに
「道路冠水」「地下街浸水」「駅の水没」
といった被害が毎年のように発生しています。
その背景には、
都市が本来持っている排水能力が、すでに限界に近い
という深刻な課題があります。
ここでは防災士として、
風水害対策の課題③
「都市部の排水能力が限界」 をわかりやすく解説します。
■① 都市は“雨を吸収しない構造”
都市部にあるのは、
- アスファルト
- コンクリート
- ビル群
- 大規模商業施設
これらの地面は雨を全く吸収しません。
その結果、
- 降った雨のほぼ全量が排水路へ一気に流れ込む
- 排水管が急に満水になる
- 道路が一瞬で冠水する
という現象が起こります。
■② 下水道の容量が“昔の雨量”を基準に作られている
多くの都市では、
下水道の容量は 1970〜1990年代の雨量を基準 に設計されています。
しかし現在は、
- 1時間50mm級の豪雨が頻発
- 80mm以上の雨も珍しくない
- 線状降水帯で数時間降り続ける
明らかに想定を超える雨が降っています。
そのため、
→ 下水道の容量ではもう“間に合わない”のが現実
です。
■③ 地下街・地下通路が“水の通り道”になりやすい
都市の地下構造は迷路のようになっており、
- 地下鉄
- 地下街
- 地下通路
- 地下駐車場
これらは水にとって 最も流れ込みやすい空間 です。
一度大量の雨が流れ込むと、
- 階段から滝のように落ちる
- 地下街が水没
- 地下鉄の停止
- 多数の帰宅困難者が発生
という状況が広範囲で発生します。
■④ 排水ポンプの限界がすぐに来る
都市部には巨大な排水ポンプが設置されていますが、
- 雨の量がポンプの排水量を上回る
- 電源喪失でポンプ停止
- ゴミ・流木が詰まる
- 維持管理が追いつかない
などの理由で、
機能が間に合わないケース が増えています。
ポンプは万能ではなく、
“限界がすぐに来る”のが実情です。
■⑤ タワーマンション周辺でも水害が起こる
意外かもしれませんが、
高層マンションの周囲も水害に弱いです。
- 地面が完全に舗装されている
- 排水が一気に流れ込む
- 地下駐車場が冠水
- 電気設備が浸水 → 全館停電
実際、冠水でマンションが丸ごと停電した例もあります。
■⑥ 気候変動で“都市型集中豪雨”が増えた
都市はコンクリートだらけで熱がこもりやすく、
その熱が積乱雲を発生させやすい環境を作ります。
これにより、
- 都市部で一気に降る
- 局地的すぎて予測が難しい
- 公共交通機関が麻痺
- 住民が避難判断を誤りやすい
という、
都市特有の集中豪雨 が増加しています。
■⑦ “想定外浸水”が増えている
近年の水害では、
本来浸水想定が低い地域でも浸水が起こっています。
理由は、
- 短時間の雨で処理限界を超える
- 排水路が逆流
- マンホールから水が噴き出す
- 川ではなく「下水」が原因で浸水する
つまり、
ハザードマップ外でも安心できない のが都市水害の特徴です。
■⑧ 住民ができる“都市水害への備え”
都市部の住民は、
次のポイントを必ず意識する必要があります。
- 地下は豪雨時に絶対使わない
- 雨が強くなったら早めに帰宅
- 車で冠水路へ進入しない
- マンションの電気室・駐車場を確認
- 水害時にエレベーターを使用しない
- ハザードマップを事前確認
- 家庭内も床上浸水を想定して備える
都市災害ほど、
判断の数分が命を左右 します。
■まとめ|都市の排水は“もう限界”。これからは行動の早さが命を守る
都市の排水能力には次のような決定的な課題があります。
- 下水道が古い想定のまま
- アスファルトで吸水ゼロ
- 集中豪雨で一気に限界突破
- 地下街・地下鉄が浸水しやすい
- ポンプが物理的に追いつかない
結論:
都市部では「排水で守る」時代から「行動で守る」時代へ。 防災士として、豪雨予兆段階で地下を避け、早めに移動する行動を強く推奨します。

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