風水害の現場では、
「夜間に起きた災害ほど被害が大きくなる」 という傾向があります。
実際に、全国の水害・土砂災害で亡くなった方の多くが、
夜〜深夜の時間帯に被害に巻き込まれています。
ここでは防災士として、
風水害対策の課題④
「夜間の災害は避難が遅れやすい」 を詳しく解説します。
■① 暗闇で“危険が見えない”という最大の問題
夜間はとにかく視界が悪く、以下の危険が見えません。
- 増水した川の水位
- 道路の冠水状況
- 土砂崩れの前兆
- 側溝の位置
- 水の流れの向き
- 道路の陥没
- 用水路や川への転落リスク
昼間なら気付けることも、
夜では視認できないまま命を落とすケースが多発しています。
■② 高齢者・子どもが“移動しにくい”
夜間避難は身体能力の差が大きく影響します。
- 高齢者は暗闇で転倒しやすい
- 足腰が弱いと水流に負ける
- 子どもは状況判断が難しい
- 家族をまとめるのに時間がかかる
結果として、
夜は避難に2〜3倍の時間がかかる のが実情です。
■③ 情報を見落としやすい
夜はどうしても情報収集が遅れます。
- 行政放送が聞こえない
- スマホ通知に気づかない
- テレビやラジオを見ていない
- 子どもを寝かしつけている
- 入浴中・就寝中で反応が遅れる
特に就寝時は、
“避難情報を受け取る力”が大きく低下します。
■④ 夜は「川を見に行く」事故が増える
残念ながら、
夜間に川の様子を見に行って流される事故が後を絶ちません。
理由は、
- 水位が分からない
- 流速が速くなっている
- 足元の側溝が見えない
- 路肩が崩れている
- 橋が危険な状態になっている
防災士として断言できます。
→ 夜の“見回り行動”は絶対に禁止
です。
■⑤ 家の前の危険にも気づけない
夜間は、家のすぐ近くでも危険が潜みます。
- 側溝の冠水
- 道路の段差が隠れる
- 車庫の浸水
- 玄関前の流水
- 隣家から流れてくる水
「少し見てみよう」が命の危険に直結します。
■⑥ 夜間は避難所への移動が困難
夜の避難動線には多くの障害があります。
- 水路や側溝への転落
- 石・木・土砂が見えない
- 街灯の少ない地域では完全に視界ゼロ
- 大雨・強風で傘が使えない
- 道路冠水で歩行不能
夜間の避難は、
昼間の避難とは全く別の難しさがあります。
■⑦ “早めの避難が必須”という現実
夜間災害の死亡率が高い最大の理由は、
→ 住民が避難をためらうこと
です。
- 「もう少し様子を見る」
- 「雨が弱くなってから」
- 「深夜に子どもを起こしたくない」
- 「まだ行かなくていいはず」
こうした判断の遅れが、
最も命を奪います。
■⑧ 夜間災害に備えて“今すぐできること”
- 夜の豪雨予報が出たら 日没前に避難
- 家族で「避難の基準」を決める
- 懐中電灯を各部屋に配置
- モバイルバッテリーを満充電
- 高齢者の避難を最優先
- 避難所までの道を昼間に確認
- 1階は浸水を想定して準備
夜に逃げるのは困難なので、
“夜になる前に動く”が基本行動 です。
■まとめ|夜の災害は“避難の難易度が段違い”
夜間の災害は、
昼とは比べ物にならないほど危険が増します。
- 危険が見えない
- 情報が受け取れない
- 移動が難しい
- 家族の避難に時間がかかる
- 判断が遅れがち
結論:
夜の災害で命を守る唯一の方法は「先手の避難」。 防災士として、夜を迎える前に避難を完了させる行動を強く推奨します。

コメント