【防災士が解説】防災 × 避難所の受け入れ能力の限界|“全員が避難できるわけではない”という現実

風水害が大規模化する中で、
多くの地域で深刻化している問題が

「避難所の受け入れ能力が限界を迎えている」という課題 です。

「避難所に行けば安心」というイメージがありますが、
実際は 全員を受け入れるだけのスペースや環境が整っていない のが現実です。

ここでは防災士として、
風水害対策の課題⑥
「避難所のキャパ不足」 をわかりやすく解説します。


■① 避難所の数が“災害規模に対して足りない”

豪雨・河川氾濫など広域災害では、
同時に多くの住民が避難を開始します。

しかし、

  • 体育館の収容人数に限界
  • 小中学校だけでは不足
  • 高齢化でスペース需要が増加
  • コロナ以降は1人当たりの必要面積が増えた

結果として 避難所が満員になる地域 が増えています。


■② 体育館=安全ではない

避難所の多くは学校の体育館ですが、
次のような問題があります。

  • 断熱性が低い(夏は暑い・冬は極寒)
  • 雨音・風音が響きやすい
  • 風で扉が開くと雨が吹き込みやすい
  • プライバシーが確保できない
  • 高齢者・乳幼児の環境として不十分

特に風水害は“長期避難”になりやすく、
環境が体調悪化につながることも多いです。


■③ ペット同伴の課題が大きい

避難所では、

  • ペット同伴エリアの不足
  • アレルギー問題
  • 吠え声や臭いのトラブル
  • ケージ不足
  • 屋外スペースに限定される場合も

という課題があり、
ペットを連れている住民が避難をためらうケースが増えています。


■④ 外国人・障がい者への対応が十分ではない

避難所は「全員が使いやすい」場所ではありません。

  • 多言語表示が不足
  • アレルギー食・宗教食への配慮不足
  • 洗面・トイレがバリアフリーではない
  • 説明が伝わらない
  • 障がい者支援の人手が不足

多様化する住民に対して、
避難所の整備や運営が追いついていません。


■⑤ 車中泊避難への対応が遅れている

風水害では、

  • 車中泊を選ぶ人が増加
  • でも支援方法や駐車スペースが不十分
  • エコノミークラス症候群の危険
  • トイレまでの距離が遠い

自治体の想定よりも、
実際の住民の選択肢は多様化しています。

車中泊は自己判断が多く、
サポート体制が整っていないのが課題です。


■⑥ 食料・水・物資の不足が起きやすい

避難所が満員になると、物資もすぐ不足します。

  • 食事が足りない
  • アレルギー対応ができない
  • 水が不足
  • 乳児用品・生理用品の不足
  • 救急・医療物資が不足

特に“想定外の雨量による広域避難”では、
物資が間に合わない状況が生まれます。


■⑦ 避難所は“長期滞在に向いていない”

風水害は、
「水が引くまで数日〜1週間」の避難が必要になることが多いです。

しかし避難所は、本来“短期滞在用”。

長期化すると、

  • 体調悪化
  • プライバシーの崩壊
  • 子どものストレス
  • 高齢者の脱水・低体温
  • 感染症のリスク

といった問題が発生します。


■⑧ 解決には“多様な避難方法”が必要

避難所不足を解決するためには、

  • ホテル避難との連携
  • 車中泊スペースの整備
  • 民間施設の開放
  • バリアフリー避難所の強化
  • ペット対応避難所の拡大
  • 自主避難所の設置
  • 事前の分散避難(早期避難)

が求められます。

住民は、

  • 「避難所に行くだけが避難ではない」
  • 「早めに分散して避難する」

という考えを持つ必要があります。


■まとめ|避難所は“万能ではない”。だからこそ前倒し避難が重要

風水害対策の課題⑥
「避難所の受け入れ能力不足」 は、全国共通の深刻な問題です。

  • 収容人数に限界
  • 環境が厳しい
  • ペット・高齢者・障がい者に対応しづらい
  • 物資が不足しやすい
  • 長期滞在が困難

結論:
避難所に頼りすぎず、分散避難・早期避難を前提に考えること。 防災士として、避難所は“最後の選択肢”であり、前倒しの行動が命を守ると強く伝えたいです。

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