豪雨・浸水・土砂災害が増える中で、
深刻化している問題のひとつが 「避難所の収容力不足」 です。
「避難しようと思ったら満員だった」
「駐車場が足りず車で避難できない」
「体育館が人であふれ、プライバシーが確保できない」
こうした現実が被災地で繰り返されており、
風水害対策の大きな課題となっています。
ここでは防災士として、
風水害対策の課題⑨:避難所の収容力不足と環境課題 を解説します。
■① 避難所のキャパは“地域住民全員分”ではない
多くの人が誤解していますが、
避難所は 地域全員を収容する前提では作られていません。
- 1つの避難所に数百人しか入れない
- 自治体の想定より人口が増えている
- 学校の統廃合で避難所数が減った
- 高齢者の増加で避難所ニーズが上昇
そのため、大規模災害では必ず
「避難所に入りきらない層」が発生 します。
■② 車中避難の増加で“駐車場がパンク”
コロナ以降、
「密を避けるために車中避難を選ぶ」家庭が増えました。
しかし実際は、
- 避難所の駐車場が足りない
- 道路が冠水して車で入れない
- 渋滞で避難所に到着できない
- 夜間は誘導が十分に行われない
といった問題が起き、
避難しようとした人が“はじかれる”ケースもあります。
■③ 体育館の避難環境は過酷
避難所に入れても、環境は決して快適ではありません。
- 床が硬い
- 寒い・暑い
- プライバシーゼロ
- 騒音で眠れない
- トイレの混雑
- 衛生環境の悪化
結果として、
高齢者の体調悪化や エコノミークラス症候群 のリスクが高まります。
■④ 特別な支援が必要な人への対応が十分ではない
避難所によっては、
以下の支援が十分に提供できない場合があります。
- 障がい者の受け入れ
- 医療的ケア児のスペース
- ペット同伴者の対応
- アレルギー対応食
- 外国人への言語支援
特にペット同伴避難は、
「入れないので帰った」
という危険な行動につながる場面もあります。
■⑤ そもそも“職員の人数が足りない”
避難所運営は多くの場合、
自治体職員や地域の自主防災組織が担います。
しかし、
- 人手不足
- 夜間の人員確保困難
- 受け入れまで時間がかかる
- 物資到着も遅れる
といった問題が重なり、
避難所開設が遅れてしまうこともあります。
■⑥ 大規模災害では複数の避難所が同時に満員に
実際の災害では、
- 土砂災害警戒区域が広範囲
- 浸水想定が複数地区に及ぶ
- 夜間で避難行動が集中する
こうした条件が重なり、
複数の避難所が同時に満員になることがあります。
その結果、
- 避難者が車でさまよう
- 別の避難所へ移動している間に被災する
- 狭い空間に詰め込まれ感染症リスクが上昇
といった危険が生じます。
■⑦ 解決策は“分散避難”と“事前の判断”
避難所の収容不足は、
住民自身の“避難選択肢の準備”で大きく改善できます。
- 親族・友人宅
- 安全なホテル
- 車中泊場所の確認
- マンション上層階への一時避難
- 早期避難(警戒レベル3で避難開始)
- ペット対応避難所の事前確認
行政単独では避難所の容量は増やせません。
だからこそ、
住民が複数の避難ルートと選択肢を持つことが重要です。
■⑧ 避難所は“最終手段”。事前の家庭防災が決め手に
避難所は大切な場所ですが、
“快適な空間”ではありません。
だからこそ、
- 自宅の耐震・防水対策
- 土のうの準備
- 飲料水・食料の備蓄
- 簡易トイレのストック
家庭防災が整っているほど、
避難所に頼る必要が減り、
収容力不足の課題も同時に解決していきます。
■まとめ|避難所は万能ではない。準備と選択肢が命を守る
風水害対策の課題⑨
「避難所の収容力不足」 は、
自治体も住民も直面している深刻なテーマです。
- 避難所は地域全員分のキャパはない
- 車中避難は駐車場不足が課題
- 体育館生活は過酷
- 特別支援が必要な人が入りにくい
- 職員不足で運営が追いつかない
結論:
避難所依存は危険。防災士として、分散避難・早期避難・家庭防災を組み合わせ、「避難しないといけない状況を作らない」という備えを強く推奨します。

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