風水害では自治体が
・警戒レベル
・避難情報
・緊急速報
・河川水位
など、膨大な防災情報を発信しています。
しかし現実は、
「情報は届いているのに逃げない」
という行動ギャップが毎回発生します。
これは行政の努力不足ではなく、
住民側の受け取り方・判断力・生活事情 など、複数要因が重なる複雑な課題です。
今回は、防災士として現場経験から、
風水害対策の課題⑪:行政情報が住民の避難行動につながらない問題
を解説します。
■① 情報が多すぎて“何が重要か分からない”
現代は情報があふれています。
- SNS
- TV
- アプリ
- 緊急速報
- 行政放送
- 気象庁情報
住民はこれを同時に受け取り、
どれを基準にすればいいのか分からなくなる状況に陥っています。
結果として行動が遅れます。
■② 避難レベルの意味が十分理解されていない
行政は避難情報を
- 警戒レベル3
- 警戒レベル4
- 警戒レベル5
と段階的に発表しています。
しかし住民の多くは、
- レベル3がどれくらい危険なのか
- レベル4は「避難指示=即行動」なのか
- レベル5は“もう逃げ遅れ”なのか
意味を正しく理解できていません。
■③ 行政放送が聞こえない・聞き取れない
多くの地域で、行政放送に問題が生じています。
- 雨音にかき消される
- 高層住宅では聞こえにくい
- 夜間は窓を閉めていて聞こえない
- 音は聞こえても内容を把握できない
結果として、
「言ってるのは分かるが内容が分からない」
という状態になります。
■④ 情報を受け取っても“自分ごと”にならない
行政情報は事実を伝えるだけでは動いてもらえません。
住民側には、
- 「うちは大丈夫」
- 「前も大丈夫だった」
- 「避難所は行きたくない」
- 「高齢で動けない」
などの心理や生活事情があり、
危険を“自分ごと”として捉えにくくなっています。
■⑤ SNSの誤情報に上書きされてしまう
行政の公式情報よりも早く、
SNSの非公式情報が住民に届くことがあります。
- 「まだ避難しなくていいらしい」
- 「この川は絶対に氾濫しない」
- 「避難所が満員らしいから行かない方がいい」
これらは誤情報であることが多く、
住民の判断を邪魔してしまいます。
■⑥ 外国人や高齢者には“配慮された情報”が届かない
行政情報の限界として、
- 外国語対応不足
- 音声のみで視覚情報がない
- 高齢者に難しい表現が使われている
- 専門用語が多い
という課題があります。
情報は届いても、
それを「理解できない層」が一定数いるのが現実です。
■⑦ 家庭の事情で“避難しにくい”
住民は行政情報を理解していても、実際には避難できない場合があります。
- 高齢者を連れて移動できない
- 子どもが寝ている
- 雨が強くて外に出るのが危険
- 車が使えない
- ペット避難先がない
生活上の事情は避難行動の大きな壁になります。
■⑧ 行動につながる情報発信が必要
行政の発表に加えて、
住民行動につながる工夫が求められています。
- 具体的な場所を示す
- 避難の“理由”を伝える
- 何分後に危険なのか明示する
- 避難することでどう助かるかを説明
- 行動例(ホテル避難・親戚宅避難など)を提示
- 子どもや高齢者向けのわかりやすい言葉
情報の「質」を上げることで、
住民が動きやすくなります。
■まとめ|行政の情報発信だけでは限界。行動につながる工夫が必要
風水害対策の課題⑪
「行政情報が住民の避難行動につながらない」 は、
災害現場が直面している深刻な問題です。
- 情報が多すぎて判断できない
- 警戒レベルの意味が伝わらない
- 行政放送が届かない
- 心理的に“自分ごと”にならない
- SNSの誤情報に支配される
- 外国人・高齢者が取り残される
- 生活事情で避難しにくい
結論:
防災士として、行政情報だけに頼らず“家庭ごとの避難判断ルール”を持つことが、避難行動を確実にする最大のポイントだと強く伝えたい。

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