風水害が全国で増え続ける中、
被害を大きくしている要因のひとつが
「家庭の備え不足」 です。
特に水害は、地震とは違う備えが必要です。
しかし現場を見てきた防災士として断言すると、
多くの家庭が“地震の備えはしていても、水害の備えは不十分”
という危険な状態にあります。
今回は、風水害対策の課題⑫
「家庭の備え不足(特に水害対策の欠落)」
について詳しく解説します。
■① 多くの家庭は“地震向け”に偏った備蓄しかしていない
よく見られる傾向として、
- 飲料水
- 食料
- 簡易トイレ
- 防災リュック
など、地震向けの備蓄は整っていても、
水害特有の備えが完全に抜けている家庭が多い です。
水害は
・浸水
・停電
・断水
・トイレ使用不能
・避難長期化
という複合災害になるため、必要な備えがまったく異なります。
■② 浸水対策がまったくされていない家が多い
現場で特に感じるのは、
- 土のうがない
- 水のうの準備なし
- 止水版なし
- 家具のかさ上げをしていない
- 車の避難ルートが決まっていない
など、
浸水そのものに対する備えがゼロ という家庭が多いことです。
床上浸水が起きると、
家具・家電・車の損害額は数百万円規模になります。
■③ トイレ問題を甘く見ている家庭が多い
水害時は断水だけでなく、
下水が逆流し、トイレが使えなくなることがあります。
しかし多くの家庭で、
- 簡易トイレの備えがない
- トイレ用ビニールの在庫なし
- 消臭剤がない
- 長期避難を想定していない
という状態で、
実際の災害時に大きな困難となります。
■④ 家族の“避難基準”が決まっていない
家庭内で、
- どのタイミングで避難するか
- 川の水位を誰が確認するか
- 夜間の避難ルール
- 台風接近時の事前準備
が決まっていないと、
避難が遅れて命に関わります。
家族ごとのルールは必須です。
■⑤ 乳幼児・高齢者がいる家庭の備えが特に不足
水害は移動が困難になるため、
以下の家庭は特にリスクが高いです。
- 乳幼児のいる家庭
- 高齢者世帯
- 障がい者がいる家庭
- 介護が必要な家族がいる家庭
必要なものは多いのに、
“荷物が多くて避難できない” というケースが頻発します。
■⑥ 自家用車への水害備えが抜けている
車は水害に非常に弱いにも関わらず、
- 車の避難場所を決めていない
- 冠水道路の危険を知らない
- 車内の非常用セットがない
- 夜間の移動ルートを確認していない
こうした状態が多く見られます。
冠水した道路は、
30cmの水深で車が動かなくなり、 50cmで流されます。
■⑦ 防災アプリを入れていない・設定していない家庭が多い
水害対策として、
防災アプリは“命を守る情報ツール”です。
しかし現実は、
- アプリ未インストール
- 通知がOFF
- 地域設定が間違っている
- 家族で共有していない
など、情報が届かない状態の家庭が多いです。
■⑧ 解決策は“家族単位での水害シフト”
水害は事前に予測できるため、
家庭の備えを「水害モード」に切り替えるだけで
被害を劇的に減らせます。
◎必要な備え
- 土のう・水のう
- 止水板
- 家具家電のかさ上げ
- 車の移動ルート
- 簡易トイレ
- 防災アプリの統一設定
- 避難する基準の共有
◎避難先
- 親戚宅
- ホテル避難
- 車中避難(安全な場所)
- マンション上層階への緊急避難
「避難所だけ」に頼る時代ではありません。
■まとめ|水害は“事前対策が8割”。家庭の備えが命を守る
風水害対策の課題⑫
「家庭の備え不足(特に水害対策の不足)」 は、
被害を拡大させている大きな原因です。
- 浸水対策の欠落
- トイレ備品不足
- 避難基準の不明確さ
- 乳幼児・高齢家庭の遅れ
- 車のリスク管理不足
- 防災アプリ未設定
結論:
防災士として、水害は“事前の備え”が最も効果的な災害。家庭単位での事前準備と判断ルールが命を守ると強く感じています。

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