日本では高度経済成長期に整備された
道路・橋・堤防・下水道などのインフラが、
いま一斉に老朽化のピークを迎えています。
その結果、風水害のたびに
「まさかここが壊れるとは」
という場所で被害が発生しています。
今回は、防災士としての経験から、
風水害対策の課題⑬:インフラ老朽化による水害リスクの増大
を詳しく解説します。
■① 日本のインフラは“作られてから50年以上”が大多数
以下の設備は、1960〜80年代に集中的に整備されました。
- 河川堤防
- 下水道
- 排水ポンプ
- トンネル
- 高架道路
- 排水路
- 用水路
これらは寿命が40〜60年と言われています。
つまり、
いま一斉に寿命を迎えている ということです。
■② 設計時の想定雨量では“現代の豪雨に耐えられない”
昔のインフラは当時の雨量を基準に設計されているため、
現代の「線状降水帯」のような豪雨には対応できません。
- 1時間100mm超の豪雨
- 数十時間降り続く雨
- 氾濫寸前の河川が同時多発
こうした想定外の降雨が増え、
古いインフラが限界を迎えています。
■③ 下水道の処理能力不足で“街なかの冠水”が増加
下水道は街の排水を支える最重要インフラですが、
老朽化・容量不足で以下が起きています。
- 道路冠水
- 家屋への逆流
- 浸水の長期化
- 汚水と雨水が混じる衛生リスク
「街の真ん中が冠水」という事例が増えているのは、
下水道能力の限界 が原因です。
■④ 堤防の弱点がそのまま残っている
堤防は“弱い箇所から壊れる”のが特徴です。
- 老朽化
- 補強が追いつかない
- 材料が古い
- 地盤が弱い
- 洗掘(川底の削れ)が進む
その結果、
水位がギリギリのときに決壊する危険性 が高くなっています。
■⑤ 排水ポンプの故障・容量不足
暴雨時は排水ポンプが生命線ですが、
- 老朽化で作動しない
- 雨量に対して能力不足
- 故障後の部品調達が困難
- 停電でポンプが停止
ポンプが止まった地域は一瞬で水が溜まり、
避難が間に合わなくなることがあります。
■⑥ 橋・道路の老朽化で避難ルートが寸断される
水害時は道が使えなくなることで、
住民の避難が困難になります。
- 道路の陥没
- 橋の破損
- 土砂流入
- ガードレールの流出
- アンダーパスの浸水
避難ルートが消えれば、
住民は自宅に閉じ込められてしまいます。
■⑦ インフラ改修には莫大な予算と時間が必要
老朽化したインフラの問題は分かっていますが、
- 膨大な総工事量
- 優先箇所の選定
- 予算不足
- 作業員不足
- 工期の長期化
といった要因で、
改修は全国的に間に合っていないのが現状です。
■⑧ 住民ができる“インフラ依存しない防災”が必要
インフラが完璧ではない以上、
住民側も備えが必要です。
- 浸水想定区域の確認
- 避難ルートを複数用意
- 車の避難場所を確保
- 土のう・水のうの準備
- 家具家電のかさ上げ
- ホテル避難・親族宅避難の選択
- 夜間の早期避難
「行政が守ってくれる」は幻想です。
■まとめ|インフラは万能ではない。住民の備えが“最後の盾”
風水害対策の課題⑬
「インフラ老朽化が水害を拡大させている」 は、
全国で進行している深刻な問題です。
- 50年前の基準で設計されたインフラ
- 豪雨が想定を超えている
- 下水道能力不足
- ポンプ故障
- 堤防の弱点
- 道路・橋の寸断
- 改修が追いつかない
結論:
防災士として、インフラは完全に信頼できるものではなく“壊れる前提の防災”が必要だと強く感じています。家族と地域の備えが、命を守る最後の盾になります。

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