風水害の死亡原因の多くは、
「避難の遅れ」 と並んで
“危険行動” が原因 です。
特に水害では、
・車での移動
・用水路の様子見
・田畑の見回り
・川の確認
・側溝の掃除
など、
「少しだけ」「すぐ戻る」
という行動が命を奪うケースが後を絶ちません。
今回は防災士として、
風水害対策の課題⑮:水害時の危険行動がなくならない問題
を解説します。
■① 水害は“静かに・突然”危険レベルが上がる
水害は地震と違い、ゆっくり進むように思われていますが本当は違います。
- 30分で水位が一気に上がる
- 用水路が爆発的な流速になる
- 道路があっという間に冠水
- 低い土地に一気に水が流れ込む
この“急激な変化”が危険行動につながります。
■② 車の移動は最も危険な行動のひとつ
水害で亡くなる方の多くが「車中での被災」です。
車は水に極端に弱く、
- 30cmの水深で動かなくなる
- 50cmで車は浮き始める
- 70cmで流される
- エンジンが停止すると脱出できない
- 夜間は冠水が見えない
「車なら安全」と思われがちですが、
水害時は車が“最も危険な場所”になります。
■③ 用水路の様子見は“絶対にやってはいけない行動”
豪雨時の用水路は、
- 流速が時速40~60km
- 足元の地盤が崩れやすい
- 深さが見えない
- 暗くて状況が分からない
一度落ちたら助かりません。
現場でも“見回りによる死亡事故”が最も多い行動です。
■④ 田畑の見回りは命より作物を優先してしまう
農家さんが特にやりがちなのがこの行動。
- ポンプの確認
- 水門の調整
- 田畑の浸水状況確認
これらは重要な作業ではありますが、
水害時は命の危険が一気に高まります。
農家の死亡事故は、
「少し見てくる」が原因の8~9割 と言われています。
■⑤ 川の状況確認は“見に行った瞬間に危険”
川の状況は、家からは分かりません。
だからといって絶対に見に行ってはいけません。
- 濁流の勢いが強い
- 堤防が崩れやすい
- 地面が滑りやすい
- 風で飛ばされた物が当たる
- 夜は水位が見えない
川は「見に行った瞬間に危険」
という前提で考えるべきです。
■⑥ 側溝の掃除は最悪のタイミング
豪雨の最中に、
- 側溝を掃除する
- 排水口に詰まったゴミを取る
- 家の前の水路を確認
これは絶対にダメです。
側溝は吸い込まれる力が強く、
落ちたら助からないケースが多いです。
■⑦ なぜ危険行動がなくならないのか(心理要因)
危険行動の背景には、次の心理があります。
- 「すぐ戻るから大丈夫」
- 「自分は平気」
- 「田んぼは自分の仕事だから」
- 「車なら逃げられる」
- 「避難するほどではない」
特に高齢者は
過去の経験が“判断を鈍らせる” 傾向があります。
■⑧ 危険行動を防ぐ方法は“事前ルール化”しかない
危険行動をゼロにする最善策は、
家庭・地域でルール化することです。
- 水害時は車を使わない
- 用水路・川を見に行かない
- 田畑の確認は災害中は中止
- 側溝掃除は雨の前に実施
- 夜間の外出は絶対にしない
- 高齢者に「絶対行くな」と伝える
命を守る行動は、
“事前の約束”がすべてです。
■まとめ|水害の死亡事故の多くは“防げた事故”。危険行動ゼロが命を守る
風水害対策の課題⑮
「水害時の危険行動がなくならない」 は、
毎年のように犠牲者を生む深刻な問題です。
- 車での移動
- 用水路の様子見
- 田畑の見回り
- 川の確認
- 側溝掃除
- 夜間外出
結論:
防災士として、これらは“絶対にやってはいけない行動”。水害時は家族で事前にルール化し、危険行動ゼロを徹底することが最も大きな命の防災です。

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