風水害は近年、
・広域化
・長期化
・複合災害化
が進んでおり、避難所の運営がこれまで以上に難しくなっています。
防災士として現場を経験して感じるのは、
「避難所は開設だけなら何とかなる。しかし“長期運営”が続かない」
という深刻な課題です。
今回は、風水害対策の課題⑯
「避難所の長期運営に必要な人員・物資・体制が持続しない」
について解説します。
■① 避難所は“開設”より“維持”が難しい
避難所は災害直後の数日は何とかなります。
しかし4日目、5日目と進むにつれて、
- 人員不足
- 物資不足
- 役割分担の混乱
- 生活空間の劣化
- 衛生環境の悪化
が一気に進みます。
特に水害は浸水が長引くため、
避難期間が想定より長期化しがちです。
■② 運営人員が圧倒的に足りない
避難所運営には、実は膨大な人員が必要です。
- 受付
- 情報伝達
- 配膳
- 清掃
- トイレ管理
- 物資管理
- 要配慮者対応
- 夜間見回り
しかし現実は、
- 職員の人数が足りない
- 夜間に人が確保できない
- 高齢者しか地域にいない
- 繁忙期で人が動けない
といった理由で
避難所が形だけの運営になりやすい のが課題です。
■③ 物資が届かない・不足する・管理ができない
特に長期化すると、
- 水
- 食料
- 衛生用品
- 生理用品
- 乳幼児用品
- ペット用品
- 簡易トイレ
- 毛布・マット
などの不足が深刻化します。
また“物資が届いても”
- 仕分けができない
- 配布が追いつかない
- 保管スペースがない
- 情報共有が不十分
という問題が起き、
必要な人に必要な物が届かない 状況になります。
■④ トイレ・衛生環境が短期間で悪化する
避難所の最重要課題のひとつが衛生です。
- トイレの詰まり
- 清掃の遅れ
- 感染症リスク上昇
- 生活ごみの山積み
- 風呂・洗濯ができない
- 食中毒リスク
特に水害は汚泥を含む水が流れ込むため、
衛生環境が悪化しやすいのが特徴です。
■⑤ 要配慮者対応が困難
避難所には様々な人が集まります。
- 高齢者
- 障がい者
- 乳幼児
- 妊婦
- 外国人
- 持病のある方
長期化すると対応が追いつかず、
負担が避難所全体に広がっていきます。
■⑥ 避難所職員自身が疲弊していく
避難所で働く職員も、被災者です。
- 家が浸水している
- 家族が避難している
- 睡眠不足
- 連続勤務
- 情報の混乱
- プレッシャー
こうした負担は、
長期運営を難しくする大きな要因 となっています。
■⑦ 長期化すると“自治体内の人材が枯渇”する
風水害は広域化しやすいため、
応援職員が到着しにくい特徴があります。
- 隣の市も被災
- 県全体が浸水
- 道路寸断で応援が来れない
- ボランティア到着が遅れる
その結果、
自治体の職員だけで全避難所を回す限界 に陥ります。
■⑧ 解決策は“避難所に頼らない避難”の推進
避難所が長期運営に向かない以上、
住民側も「避難所に行かない選択肢」を準備する必要があります。
- ホテル避難
- 親族宅避難
- 車中避難(安全な場所)
- マンション上層階への緊急避難
- 小規模避難拠点の活用
- 分散避難の推進
避難所への集中を減らすことで、
長期運営の負担は大きく改善されます。
■まとめ|避難所は“最終の選択肢”。分散避難が長期化時代のキーワード
風水害対策の課題⑯
「避難所の長期運営が続かない」 は、
災害が大型化する現代において特に深刻な問題です。
- 人員不足
- 物資不足
- 衛生環境の悪化
- 要配慮者対応の限界
- 職員の疲弊
- 応援職員が来れない
- 長期化・広域化で運営破綻
結論:
防災士として、避難所は万能ではありません。住民の“分散避難”と“家庭防災の強化”が、長期化時代の水害対策に不可欠だと強く感じています。

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