水害後の復旧は、
・泥出し
・家財搬出
・消毒作業
・ゴミ運搬
・生活再建支援
など、多くの場面でボランティアの力に支えられています。
しかし防災士として現場を見てきた経験から言うと、
「災害規模が大きくなるほど、ボランティア頼みは成り立たない」
という深刻な課題があります。
今回は、風水害対策の課題⑲
「復旧作業がボランティア頼みで、災害が広域化すると支援が追いつかない」
について解説します。
■① ボランティアは“来る前提”では成り立たない
多くの人が勘違いしていますが、
ボランティアは必ず来てくれるものではありません。
- 豪雨で道路が寸断
- 県外から入れない
- 航空便・高速道路の停止
- ボランティアセンターが開けない
- 近隣自治体も同時に被災
こうした状況が重なると、
「支援ゼロ」状態が数日〜1週間続くことも珍しくありません。
■② 広域災害では“人数が全く足りない”
1つの市だけが被災するケースならボランティアは集まりやすいですが、
広域化・同時多発化すると一気に不足します。
- 県全域が被災
- 複数の市区町村で同時に浸水
- 周辺地域も暴風雨で動けない
結果として、
必要人数の20〜30%しか確保できない
ということも多くあります。
■③ ボランティアは専門職ではないため、限界もある
ボランティアは非常に大切な存在ですが、
- 重機は扱えない
- 危険な家屋には入れない
- 電気・ガスの復旧はできない
- 専門的な消毒ができない
- 医療行為はできない
など、できることに限界があります。
泥出し・片付けが中心になり、
本格復旧は専門業者が必要 です。
■④ 被災者が“ボランティア待ち”になってしまう
支援依存の地域では、
- 来たら片付ける
- 手伝いが来るまで待つ
- 行政の支援待ち
となり、
復旧が極端に遅れます。
特に高齢者・一人暮らし世帯では、
“待つしかない” 状況になりがちです。
■⑤ ボランティアセンターの運営も人手不足
ボランティアセンターは裏側で、
- 受付
- マッチング
- 物品管理
- 安全管理
- 調整業務
を行っていますが、
こちらも人手不足になりやすく運営が追いつきません。
■⑥ ボランティア依存は“生活再建の遅延”につながる
ボランティアの到着が遅れたり、人数が少なかったりすると、
- 家の泥が腐敗
- カビが大量発生
- 家財が乾かない
- 建材が腐る
- 修理が遅れる
- 生活が戻らない
など、
被害が長期化・深刻化してしまいます。
■⑦ 解決策は「ボランティアに頼らない備え」を地域と家庭で作ること
支援が来る前提ではなく、
“支援が来ない前提で備える” 時代になっています。
◎地域でできること
- 自主防災組織の強化
- 小規模ボランティアチームの常設
- 町内会での泥出し訓練
- 道路・排水路の事前清掃
- 災害時の役割分担の明確化
◎家庭でできること
- 家具のかさ上げ
- 重要書類の避難
- 保険加入(特に水災)
- 災害後3日分の生活備蓄
- 乾燥・消毒用品の備蓄
- 車を安全場所へ待避
「自力でできる部分は自力で」 「助け合う部分は地域で」
という体制が最も強い復旧力になります。
■まとめ|広域災害時は“助けが来ない”。だからこそ地域の助け合いが防災力
風水害対策の課題⑲
「ボランティア頼りの復旧体制」 は、
災害が大型化している現代に合わなくなっている問題です。
- 広域化するとボランティア不足
- 専門的な復旧は難しい
- ボランティア待ちで再建が遅れる
- センターも人手不足
- 支援依存は危険
結論:
防災士として、“助けが来ない前提”での備えが最強の防災。地域と家庭でできる復旧力の底上げこそ、これからの水害対策に不可欠です。

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