水害が発生すると、
家庭だけでなく 職場・事業所・工場・店舗 も深刻な被害を受けます。
しかし現場を経験する中で感じるのは、
「中小企業は災害への備えが圧倒的に不足している」
という深刻な課題です。
特に、風水害では
・浸水
・停電
・設備故障
・取引停止
・従業員の安全確保難
など、事業継続が困難になり、
会社そのものが存続できなくなるケースもあります。
今回は、風水害対策の課題⑳
「中小企業・個人事業主のBCP(事業継続計画)が未整備」
について解説します。
■① 中小企業の“7割以上”がBCPを作っていない
中小企業庁の調査では、
中小企業の約70%がBCPを未策定 という結果が出ています。
多くの企業が、
- 時間がない
- うちには関係ない
- うちは小規模だから大丈夫
- 作り方が分からない
という理由で後回しにしているのが現状です。
■② 水害は企業に“壊滅的”なダメージを与える
風水害は、火災と違って 広域かつ長期的な停止 を引き起こします。
被害は、
- 事務所・店舗の浸水
- 商品・在庫の破損
- 冷蔵施設の故障
- 電気・ガス・水道の停止
- 工場ラインの停止
- 車両・機材の水没
- データ消失
など多岐にわたり、
1回の水害で倒産するケースも珍しくありません。
■③ 取引先が同時に被災→売上ゼロのリスク
風水害は広範囲で発生するため、
企業だけでなく、
取引先・顧客・物流 も同時に停止します。
結果として、
- 商品が入ってこない
- 納期が守れない
- 顧客が利用できない
- 注文が止まる
など、売上が急減します。
■④ 従業員の安全確保ができず、業務再開が遅れる
災害時は従業員も被災者であり、
- 家族の避難
- 自宅浸水
- 車両水没
- 通勤困難
- 子どもの世話
- ライフライン断絶
など、出勤できない状況が続きます。
企業としても
「人が揃わないと再開できない」
という問題があります。
■⑤ 「データ消失」は中小企業の致命傷になりやすい
特に水害では、
- 紙の書類が濡れる・流される
- PCやサーバーが水没
- 電源が落ちて復旧不能
- バックアップがない
などで、
経理・顧客名簿・契約書などの重要データを失う
ケースが非常に多いです。
■⑥ 企業は“行政の支援が遅い”と感じやすい
事業者向け支援は、
- 災害復旧補助金
- 融資制度
- 税制優遇
- 保険
などがありますが、申請が複雑で、
被災直後の中小企業には手続きが難しいケースも多いです。
結果として、
- 補助金が間に合わない
- 手続きが煩雑で諦める
- そもそも制度を知らない
という“支援格差”が生まれます。
■⑦ 事前にできる最強の対策=「BCP+日頃の備え」
企業が生き残るためには、
“被害をゼロにはできない”前提で備える必要があります。
◎最低限のBCP項目
- 浸水想定の確認
- 重要機材のかさ上げ
- 在庫の分散管理
- データのクラウド保存
- 従業員の安否確認体制
- 代替オフィスの確保
- 非常用電源の確保
- 取引先との連絡手段整理
◎日頃の備え(会社版備蓄)
- 飲料水・食料
- 発電機
- 簡易トイレ
- モバイルバッテリー
- 消毒用品
- 作業手袋・長靴
- 大型ブルーシート
BCPは“紙だけの計画”では意味がなく、
行動できる仕組みまで整えることが重要です。
■⑧ 個人事業主は「自分=会社」。倒れたら終わり
個人事業主は、
自宅兼事務所が浸水するとそのまま仕事が止まります。
- PC水没=仕事停止
- 車両損壊=移動不可
- 自宅浸水=避難生活で作業不可
- 家族の世話で業務停止
“収入ゼロ”リスクが非常に高いため、
早めの避難・データ保全・保険加入が必須です。
■まとめ|中小企業のBCPは“地域の防災力”。会社が止まると地域も止まる
風水害対策の課題⑳
「中小企業・個人事業主のBCP(事業継続計画)不足」 は、
地域の経済と雇用に直結する重大課題です。
- 被害が広域化して事業が止まる
- 従業員の安全確保が難しい
- データ消失が致命傷になる
- 行政支援の手続きが複雑
- 取引先も同時被災で売上ゼロ
- 個人事業主は生活そのものが止まる
結論:
防災士として、中小企業のBCPは「地域を守る防災」。会社が生き残れば、地域の暮らしと雇用が守られます。

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