日本の大都市(東京・大阪・名古屋・福岡など)は、
人口・建物・産業が集中しており、
地震が起きた際に 被害が極端に大きくなりやすい地域 です。
防災士として現場を経験してきた立場から言うと、
「大都市は地震に対して最も脆弱」
と言っても過言ではありません。
今回は、地震対策の課題④
「大都市の人口密集地域の脆弱性」
について解説します。
■① 人口密集で“避難そのものができない”
大都市の特徴は 人が多すぎる という一点につきます。
- 通勤時間帯は道路が人でいっぱい
- 観光地は人が密集
- 商業地では混雑が常態化
- 狭い道路に多数の人が滞留
地震発生直後は、
「どこにも動けない」 状況が起こりやすくなります。
■② 狭い道路が多いエリアは“火災延焼”の危険が非常に高い
特に古い市街地では、
- 路地が狭い
- 木造住宅が密集
- 老朽家屋が多い
- 消防車が入れない
このため、
出火 → 延焼 → 消防が到着できない → 広範囲火災
という最悪の連鎖が起こりやすいです。
阪神・淡路大震災の記憶が示すように、
大都市の密集地域は“火災が最大の脅威”です。
■③ 老朽インフラ・古い建物が多い
大都市は建物が多い分、
老朽化した建築物も多く残っています。
- 旧耐震基準のマンション
- 老朽ビル
- 無補強のブロック塀
- 古い商店街
- 走行中の高架道路の老朽化
これらは地震時に倒壊・崩落する危険があります。
■④ 帰宅困難者が“何十万人単位”で発生する
大地震が発生すると、交通網は必ず止まります。
- 地下鉄停止
- JR停止
- 私鉄停止
- 道路の渋滞
- 信号停止
その結果、
帰宅困難者が都市全体であふれる ことになります。
東京では 500万人以上 と言われています。
水、トイレ、通信が確保できず、
都市全体が混乱します。
■⑤ 通信障害で“情報が取れない”
大都市は携帯電話の利用者が多いため、
- 回線混雑
- 通信制限
- SNS停止
- 公式情報にアクセスできない
など、地震時は 情報が遮断される ことが多いです。
情報がないことは、
避難判断の遅れに直結します。
■⑥ エレベーター閉じ込めが多数発生する
大都市には高層ビルが多くあります。
大地震の直後には、
- エレベーター停止
- 閉じ込め
- 停電による救出遅延
- 階段での避難困難
などが多数発生し、
救助要請が殺到します。
■⑦ 医療機関・行政がパンクしやすい
大都市ほど利用者が多いため、
地震後はすぐに限界がきます。
- 救急搬送の集中
- 病院のベッド不足
- 手術や処置が追いつかない
- 市役所の相談窓口が長蛇の列
人口密集がそのまま“負担の増大”につながります。
■⑧ 防災意識が高くても“実際の行動が取りにくい”
都市部の住民は
防災意識そのものは高い傾向があります。
しかし、
- 車を持たない
- 家が狭い
- 備蓄スペースがない
- 仕事が忙しく避難訓練に参加できない
- 周囲と関わりが薄い
という理由で、
実践的な防災行動がとりにくい という課題があります。
■まとめ|大都市の地震対策は“最悪を想定して備える”が基本
地震対策の課題④
「大都市の人口密集地域の脆弱性」 は、
被害の拡大を生む大きな要因です。
- 避難ができない密集環境
- 火災延焼の危険
- 老朽インフラ
- 帰宅困難者問題
- 情報混乱
- エレベーター閉じ込め
- 医療の限界
- 防災行動の取りにくさ
結論:
防災士として、大都市は“最悪のケースを前提”に備えることが必要。行動計画と備蓄が命を守り、混乱を最小限に抑えます。

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