大地震が発生したあと、
住民の最大の不安は 「自宅に戻れるのか?」 という点です。
この判断に欠かせないのが、
応急危険度判定(建物の安全性をチェックする制度)。
しかし防災士として現場を見る限り、
「応急危険度判定の遅れ」 は全国的な課題です。
住民の不安が長引き、
生活再建にも影響を与えます。
今回は、地震対策の課題⑨
「応急危険度判定の遅れ」 を解説します。
■① 判定員(建築士など)が圧倒的に不足している
応急危険度判定を行うのは、
- 建築士
- 技術者
- 研修を受けた判定員
ですが、
全国的に人数が不足 しています。
特に大地震の際は、
- 同時多発で対応が追いつかない
- 被災地外から応援を呼ぶ必要がある
- 道路寸断で現地に入れない
など、判定に時間がかかります。
■② 家が危険か分からず住民が“帰れない”
応急危険度判定の目的は、
- 赤(危険)
- 黄(要注意)
- 緑(使用可能)
というステッカーで住民に安全情報を伝えることです。
しかし判定が遅れると、
- 家に戻れない
- 生活用品が取り出せない
- ペットが救出できない
- 修繕に取り掛かれない
- 仮住まいが決められない
など、生活再建のスタートが遅れます。
■③ 判定結果の“ばらつき・誤判定”も課題
応急危険度判定は、人が目視で行うため、
- 判定員の経験差
- 判断基準の曖昧さ
- 被害の見落とし
- 写真の撮り方による誤差
など、ばらつきが生じることがあります。
誤判定は住民の安全に直結するため、
大きな課題です。
■④ 大規模災害では“後回し”になりやすい
地震直後は救助・消火・避難が最優先です。
そのため、
- 人命救助
- 火災対応
- 避難所運営
に人員が集中し、
応急危険度判定が後回しになることがあります。
結果として、
“安全確認ができない家”が増える → 生活再建が遅れる
という悪循環が起きます。
■⑤ 判定の予約が殺到し、住民の不安が増す
大地震のあと多くの住民が、
- 「うちの家、大丈夫ですか?」
- 「判定に来てほしい」
- 「修繕のために結果が必要」
と問い合わせますが、
判定員が不足しているため、
- 数日待ち
- 1週間待ち
- 最悪1ヶ月以上待ち
というケースもあります。
住民の不安は日増しに大きくなります。
■⑥ 修繕・保険申請にも影響する
応急危険度判定がなければ、
- 保険の迅速支払い
- 修繕工事の開始
- 罹災証明の補強
- 仮住まいの手続き
などにも影響するため、
生活再建が大幅に遅れます。
家の安全が確認できないことは、
生活の全てが止まること を意味します。
■⑦ 情報共有の仕組みが弱い
判定結果は、
- ステッカー
- 行政の管理台帳
- 住民への告知
などで共有されますが、
情報が住民に届きにくいケースがあります。
特に、
- 高齢者
- 外国人
- 情報弱者
には届かず、不安が増す原因になっています。
■⑧ 解決の鍵は“判定員確保”と“デジタル化”
応急危険度判定を早めるためには、
◎判定員の増員
- 建築士への研修強化
- 自治体間連携の強化
- 防災士との協力体制
◎デジタル化
- スマホ・タブレットで調査
- AIで破損箇所を検出
- 被害写真の共有システム
- 結果をアプリで通知
これにより、判定スピードは大幅に改善できます。
■まとめ|“家に戻れるか分からない”不安を減らすことが復旧の第一歩
地震対策の課題⑨
「応急危険度判定の遅れ」 は、
生活再建を最初の段階で止めてしまう重大問題です。
- 判定員不足
- 判定の遅れ
- 誤判定リスク
- 情報共有不足
- 修繕・保険手続きが進まない
結論:
防災士として、家の安全確認が早く進む体制を整えることは“生活再建の原点”。判定の迅速化が住民の未来を守ります。

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