大地震では家の倒壊だけでなく、
室内の家具転倒による死亡・重傷事故 が大量に発生します。
実際、阪神・淡路大震災では
死者の約8割が家具転倒・窒息・圧死 とされています。
それほど重要であるにもかかわらず、
日本では 「家具固定の未実施」 が大きな課題のまま残っています。
防災士としての経験から見ても、
“家具さえ固定していれば助かっていた命” は非常に多いのが現実です。
今回は、地震対策の課題13
「家具の固定が進まない問題」 を解説します。
■① 家具固定の重要性が理解されていない
住民アンケートでは、
- 「面倒くさい」
- 「そこまで必要じゃない」
- 「うちの家は大丈夫」
という声が多く、
家具固定の優先度が極めて低いのが現状です。
しかし家具転倒は、
- 即死・重傷
- 頭部打撃
- 出口が塞がれ避難できない
- 火災の原因になる
など、命に直結します。
■② 賃貸住宅では固定が進みにくい
賃貸では、
- 壁に穴が開けられない
- 原状回復の義務
- オーナーの理解が必要
といった問題があり、
家具の固定が進まないのが実情です。
■③ 子ども部屋の“危険家具”が野放し
もっとも危険なのが子ども部屋。
- 本棚
- タンス
- 勉強机の大型収納
- テレビ
- カラーボックス
これらが固定されていない家庭が多く、
地震時に子どもが下敷きになるリスクは非常に高いです。
■④ 高齢者宅は“家具固定がゼロ”も珍しくない
高齢者の家では、
- 昔の重いタンス
- 高さのある食器棚
- 重量のある家具
- 古いテレビ台
が多く、
固定されていないケースが圧倒的です。
避難の遅れにつながり、致命傷になるリスクがあります。
■⑤ 家具固定の方法が“難しい”と思われている
実際は難しくありませんが、
- どれを買えばいいか分からない
- 設置が面倒
- DIYに自信がない
- 何から手を付ければいいか分からない
といった理由で後回しになります。
■⑥ 固定しても“誤った方法”が多い
意外に多いのが、
固定しているつもりで固定できていないケース。
例:
- つっぱり棒を1本だけ
- テープが劣化して外れる
- 背面が合板でネジが効いていない
- 重量バランスが崩れている
誤った固定は、かえって危険になることもあります。
■⑦ 固定していないと“避難経路”が塞がれる
家具が倒れると、
- 玄関
- 廊下
- 階段
- ドア付近
が塞がれ、避難ができなくなります。
特に夜間は家族を守るための行動が
著しく制限され、命に直結します。
■⑧ 家具固定を進めるには“正しい知識+手軽さ”が鍵
家具固定を広げるには、
専門知識よりも “手軽さ” と “分かりやすさ” が重要です。
◎最低限やるべき家具固定
- L字金具で壁に固定
- 突っ張り棒は2本以上
- 耐震ジェルで家電を固定
- 冷蔵庫の固定ベルト
- テレビ転倒防止ストラップ
◎賃貸でもできる方法
- 強力耐震ジェル
- 転倒防止マット
- つっぱり式家具ストッパー
- 家具配置を工夫する(寝室に大型家具を置かない)
◎行政支援の充実
- 家具転倒防止器具の配布
- 出張設置サービス
- 高齢者への無料取り付け
- 地域での固定講習
家具固定は“地域全体で進める”ことが効果的です。
■まとめ|家具の固定は“最も簡単なのに命を守る効果が大きい”対策
地震対策の課題13
「家具の固定が進まない問題」 は、
災害による死者・負傷者を確実に減らせるにもかかわらず
見過ごされている重要な課題です。
- 危険性の認識不足
- 賃貸の制約
- 子ども部屋・高齢者宅の危険家具
- 誤った固定方法
- 固定の手間・迷い
結論:
防災士として、家具の固定は“最もコスパが高い命の備え”。今日から始めるだけで家族の生存率は劇的に上がります。

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