企業は従業員の命を守り、
事業を継続し、
社会にサービスを提供し続ける責任があります。
しかし防災士として多くの企業と関わってきた経験から言うと、
会社の地震対策には 見過ごされがちな課題が非常に多い のが現実です。
今回は、地震対策の課題17
「企業が抱える地震対応の弱点」 を解説します。
■① 職場の耐震化・家具固定が進んでいない
オフィスや工場では、
- 本棚
- キャビネット
- スチールラック
- OA機器
- コピー機
- 観葉植物
- 工場設備
などが多く、
倒れれば重傷事故につながる危険があります。
しかし“職場の家具固定”は家庭以上に進んでいない企業が多いです。
■② 会社独自の避難計画が不十分
地震後の初動対応は極めて重要ですが、
- 避難経路が曖昧
- 避難訓練が形式的
- 集合場所が狭すぎる
- 高層ビルでの対応が不明確
など、計画が現場に合っていないケースが目立ちます。
■③ 高層ビル勤務者は“エレベーター停止”が最大の課題
地震時、エレベーターは停止します。
その結果、
- 速やかに避難できない
- 階段が大混雑
- 体力のない人は降りられない
- 避難に時間がかかり火災時は危険
という状況が発生します。
高層ビル勤務者をどう守るかは非常に重要です。
■④ 従業員の“帰宅困難”が想定されていない
首都圏や都市部では特に大問題。
- 電車停止
- 道路混雑
- 徒歩帰宅の危険
- 従業員が動けない
こうなると、
従業員が会社に“滞在せざるをえない”状況になります。
食料・水・毛布などを備蓄していない企業は多いのが現実です。
■⑤ 安否確認ができない
会社が最も困るのは、
「誰が無事なのか分からない」 こと。
- 連絡網が古い
- メールや電話が繋がらない
- グループウェアが使えない
- 社内サーバーが落ちる
こうした状況では、
従業員の把握ができず初動対応が遅れます。
■⑥ 工場・倉庫は“固定されていない機械”が凶器になる
製造業・物流業では、
地震が起きた瞬間に次が起こります。
- 重機が倒れる
- ラックが崩れる
- 商品が落下
- 火気設備が破損
- 生産ライン停止
工場災害は二次災害に直結するため、
家庭より危険度が高いこともあります。
■⑦ 在宅勤務中の災害リスクが見落とされている
テレワークが普及した今、
多くの企業は次の点を想定していません。
- 従業員自宅の家具固定
- 自宅の停電
- ネット障害
- 連絡不能状態
“会社は無事でも従業員が被災”
というケースが急増しています。
■⑧ BCPとの連携が不十分
BCP(事業継続計画)を作っていない企業や、
作っても浸透していない企業が多く、
- 何を優先して復旧するか
- 誰が何を担当するか
- 代替手段があるのか
が明確になっていません。
■まとめ|会社の地震対策は“従業員の命と事業の存続”そのもの
地震対策の課題17
「企業が抱える地震対応の弱点」 は、
災害発生時に企業の明暗を分ける重要テーマです。
- 職場の家具固定不足
- 避難計画の曖昧さ
- 高層ビルでの対応不十分
- 帰宅困難者対策なし
- 安否確認ができない
- 工場の機械転倒リスク
- 在宅勤務の盲点
- BCPが機能していない
結論:
防災士として、会社の地震対策は“命と経済を守る最後の砦”。備えている企業ほど復旧が早く、従業員を守る力が強い。

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