地震のあとに最も多い二次災害――
それが 地震火災 です。
揺れそのものでは助かっても、
その後の火災で命を落とすケースは過去の災害で数多くありました。
元消防職員として火災現場を経験してきた立場からも、
「地震火災は防げるはずの火災」 が非常に多いと感じています。
今回は、地震対策の課題18
「地震火災を防ぎきれない問題」 を深掘りします。
■① 地震直後は“通電火災”が最も多い
地震火災の大半は、
揺れではなく 停電復旧時の通電 で起きます。
- 落ちたヒーターの電源が復活
- 損傷したコンセントから出火
- 家電のショート
- 断線箇所が発火
特に冬は火災が多発します。
■② ガス・油・暖房器具が倒れて出火する
揺れによって、
- 石油ストーブ
- ガスコンロ
- 電気ヒーター
- 延長コード
が倒れると、
火災につながる危険が非常に高くなります。
家庭で火災になりやすいのは、
“小さな器具の転倒” です。
■③ 密集市街地は“一度火がつくと止められない”
古い住宅が密集する地域では、
- 木造住宅の隙間
- 老朽配線
- ガス管の破損
- 電柱の倒壊
が重なり、
一度燃え広がると消火活動が間に合わないことがあります。
阪神・淡路大震災でも、
火災が一気に広がり甚大な被害が出ました。
■④ 消防車が現場に到達できない
地震直後は道路が塞がれます。
- 倒壊家屋
- 電柱の倒れ
- 車両渋滞
- 道路の亀裂
- 信号の停止
これにより、
消防車がたどり着けず、
火災が拡大してしまうケースが多いです。
■⑤ 消火栓が使えないケースがある
地震で地面が動くと、
- 消火栓の破損
- 水道管の破裂
- 水圧低下
が起き、水が使えなくなります。
水がないと、
初期消火ができず延焼を止められません。
■⑥ 初期消火のタイミングを逃す
地震で揺れた直後に、
- 火元確認しない
- 家電をそのままにする
- 電気復旧時の危険を理解していない
など、
住民の行動が遅れることで火災が拡大します。
■⑦ 通電火災を止める“感震ブレーカー”が普及していない
通電火災を防ぐ最強の対策が
感震ブレーカー(自動的に電気を遮断する装置)。
しかし、
- まだ設置が進んでいない
- 高齢者が導入していない
- 賃貸で許可が出ない
- そもそも存在を知らない
という理由で普及が遅れています。
■⑧ 地域で“延焼を防ぐ仕組み”が不十分
地震火災を止めるには地域力が必要です。
しかし現状では、
- 消化器の整備が不十分
- 住民の教育不足
- 自主防災組織の弱体化
- 消防団の人員不足
が重なり、
火災を地域で止める力が弱いままです。
■まとめ|地震火災は“防げる死”。家庭と地域の対策が命を守る
地震対策の課題18
「地震火災の発生・延焼を防ぎきれない問題」 は、
揺れよりも怖い“第二の地震被害”です。
- 通電火災
- 暖房器具の転倒
- 密集地の延焼
- 道路封鎖で消防が到達できない
- 消火栓が使えない
- 初期消火の遅れ
- 感震ブレーカーの未普及
- 地域力の低下
結論:
元消防職員として、地震火災は“知っていれば防げる被害”。家庭・企業・地域の備えこそ最大の延焼防止策です。

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