地震から命を守るために欠かせないのが
自助(自分の命を守る) と
共助(地域で助け合う) の力です。
しかし現場を経験してきた防災士として感じるのは、
日本ではまだまだ 自助も共助も十分に機能していない地域が多い ということです。
行政の支援である「公助」は最後に届きます。
その前段階で守れる命を守るには、
自助と共助が確実に動く仕組みが必要です。
今回は、地震対策の課題19
「自助・共助の弱さ」 を解説します。
■① 自助=自分の命を守る行動ができていない
地震発生後は、
自分で自分の命を守る時間(数分〜数時間) が必ずあります。
しかし現実には、
- 家具固定ができていない
- 備蓄がない
- 避難経路を知らない
- 家族ルールを決めていない
- そもそも危機意識が低い
という家庭が非常に多く、
“助けを待つ前の段階”で命が危険にさらされます。
■② 自助の平時行動(備蓄・家具固定)が全く進んでいない
自助の基本は、
- 3日〜1週間の備蓄
- 家具固定
- 災害時の避難計画
- 家族の集合場所確認
ですが、実施率は全国的に低いまま。
地震後、
“備えておけば避けられた危険” が毎回出ています。
■③ 共助の中心である“地域のつながりが弱体化”
マンション・都市部・転入者の多い地域では、
- 隣人を知らない
- 町内会に入っていない
- 声かけ文化が弱い
- 災害時の役割分担が決まっていない
という地域が増えています。
地震時に一番頼りになるのは近所の人ですが、
その仕組みが崩れつつあります。
■④ 自主防災組織が形骸化している
本来、地域の防災の要である自主防災組織。
しかし現実には、
- 人材不足
- 高齢化
- 活動頻度が少ない
- 訓練が形式的
- 若い世代が参加しない
という問題が深刻です。
“助け合う力” の低下は大きなリスクです。
■⑤ 高齢者・障がい者を支える体制が弱い
要配慮者の支援は共助の重要な部分です。
しかし、
- 見守り体制がない
- 支援者名簿が未整備
- 近所が高齢者に気づけない
- 避難が間に合わない
という状況が全国で起きています。
地震時の犠牲は、
こうした弱い層に集中しやすい現実があります。
■⑥ 住民同士で助け合う訓練が不足
避難訓練はあっても、
- 要配慮者の避難訓練
- 消火訓練
- 救助訓練
- 情報共有訓練
など、
“共助の実践訓練” が不足しています。
知っているだけでは動けず、
体験していなければ地震時に役立ちません。
■⑦ SNS時代の“個人化”で共助が弱まっている
SNSは災害時に有効ですが、
- 近所に頼らずネットで完結
- 個人主義が強くなる
- 地域の連携が弱体化
という“副作用”もあります。
地震時に本当に助けてくれるのは、
画面の向こうの人ではなく 3メートル以内にいる人 です。
■⑧ 自助・共助を強化するには“仕組み化”が必要
気持ちや意識だけでは動きません。
◎自助の仕組み化
- 家具固定を家庭標準に
- 備蓄チェックを年1回
- 家族ルールの書面化
- 避難経路の可視化
- 防災アプリの設定
◎共助の仕組み化
- 名簿整備(個人情報配慮)
- 役割分担の事前決定
- 地域訓練の定期化
- 若い世代の参加を促す
- 防災マップの共有
- 高齢者の見守り連携
組織の力だけでなく、
“日常の人間関係” こそ共助の土台になります。
■まとめ|自助と共助こそ“命を守る最初の防災”。行政に頼るのはその後
地震対策の課題19
「自助・共助が十分に機能しない問題」 は、
災害死を減らすうえで最も重要なテーマです。
- 自助ができない
- 家庭備蓄の不足
- 地域のつながりの弱体化
- 自主防災組織の形骸化
- 要配慮者支援の不足
- 訓練不足
- SNS時代の孤立
結論:
防災士として、自助・共助は“最初の命の砦”。助け合える地域づくりが、地震による被害を最大限減らす鍵です。

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