車内の一酸化炭素(CO)中毒は、毎年全国で命を奪う非常に危険な事故です。
特に冬の車中泊・暖房中・大雪時に多く、防災士として一貫して伝えているのは、
「車内での一酸化炭素中毒は本人が気づけないまま急激に悪化する」という事実です。
この記事では、車内のCO中毒が起きる理由、症状、そして命を守るための具体策を解説します。
■① 一酸化炭素とは?“無色・無臭”で気づけない毒
一酸化炭素(CO)は、
- 無色
- 無臭
- 無刺激
で、呼吸してもまったく気づけません。
しかしCOは血液中のヘモグロビンと強力に結びつき、
酸素を体に運べなくなる致死性のガス です。
わずかな量でも短時間で危険に陥ります。
■② 車内でCO中毒が起こる主な原因
車という密閉空間は、条件がそろうと一気に危険性が高まります。
特に多いケースは以下の通りです。
- エンジンをかけたまま仮眠
- 大雪時に排気口が雪で埋まる
- 風向きで排気ガスが車下に滞留
- 低気圧・吹雪で換気が悪化
- 車内で火器(ストーブ・コンロ)を使用(絶対NG)
- 換気が十分にできない環境
この中でも、特に多いのが、
「雪によるマフラー閉塞 × エンジンのつけっぱなし」
です。
■③ CO中毒の初期症状は“ただの疲れ・眠気”に見える
CO中毒は進行がとても静かです。
初期症状は以下のように、誰でも感じるものばかり。
- 頭痛
- 眠気
- だるさ
- めまい
- 吐き気
- 判断力低下
- 手足のしびれ
特に「眠気」は非常に危険で、
眠っている間に意識を失い、命を落とすケース が多発しています。
■④ 大雪時の車中泊は最も危険
冬の大雪時はCO中毒のリスクが急上昇します。
- 雪が短時間でマフラーを塞ぐ
- 気象条件で排気がこもる
- 外気が寒すぎて窓を閉め切る
- 寝るために暖房を使い続ける
- 夜間で周囲が気づけない
この条件が重なると、
短時間で致死レベルまでCO濃度が上昇 します。
■⑤ 車内で絶対にしてはいけない行動
以下は車内のCO中毒を防ぐための“絶対NG行動”です。
- エンジンをかけたまま寝る
- 雪に埋もれた状態での暖房使用
- 車内でカセットストーブ・石油ストーブを使う
- 車内で火器(ガス・固形燃料)を使う
- 換気ゼロでの長時間滞在
- ガレージ内でエンジンをかける
これらは全て、命に直結する危険行為です。
■⑥ CO中毒の“安全な予防行動”
命を守るためには以下を徹底してください。
- 大雪時は必ずマフラー周囲を完全に除雪
- エンジンをつけっぱなしにしない(特に睡眠時)
- 窓を少し開けて換気を確保
- 車の下に風がこもらない位置に駐車
- 雪が降り積もる環境ではこまめに外を確認
- 火器類は車内で一切使わない
- 寝具(寝袋・断熱)で暖房への依存を減らす
- ポータブル電源+電気毛布を活用(COリスクなし)
- CO警報器を設置する(車中泊ユーザーに有効)
■⑦「少しだけ」「短時間だけ」が最も危険
CO中毒は“短時間だから大丈夫”ではありません。
- 10〜30分で致死レベルになるケース
- 気づいた時には手遅れ
- 眠気が強く判断力がなくなる
- 雪が徐々にマフラーを塞ぐ
- 風向きで急に排ガスがこもる
「まさか自分が」は通用しない事故 です。
■⑧ 冬にやむを得ずエンジンを使う場合の最低条件
どうしても必要な場合は、下記すべて必須です。
- マフラー周囲が完全に除雪
- 排気口が再び雪で埋まっていないか定期確認
- 換気(一部分の窓開け)
- 寝ない
- 火器は絶対に使わない
- できるだけ短時間でやめる
できれば、
「エンジンを暖房目的で使う」という考え方を手放すこと が安全につながります。
■まとめ|車内の一酸化炭素中毒は“気づけないまま”命を奪う
車内でのCO中毒は、
- 無臭・無色で気づけない
- 眠気で判断力が落ちる
- 雪で排気口が塞がる
- 寝ている間に進行する
- 子ども・高齢者はさらに危険
という、非常に致死性の高い事故です。
最も重要なのは、
- エンジンつけっぱなしで寝ない
- 火器は絶対使用しない
- マフラー周囲の除雪を徹底
- 換気と断熱を組み合わせる
という基本行動です。
結論:
防災士として、車内の一酸化炭素中毒は“たった一度の油断”で命を奪う事故です。暖房よりも、断熱と寝具の準備が最も安全な命の守り方です。

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