冬になると全国で毎年発生する「雪による立ち往生」。
高速道路・国道・生活道路を問わず、突然動けなくなり、長時間車内に閉じ込められる重大な道路災害です。
防災士として現場対応を経験してきた立場から言えるのは、
雪の立ち往生は「準備不足 × 判断の遅れ」で命に関わる事故になる ということです。
この記事では、雪の立ち往生がなぜ危険なのか、どう備えるか、どう行動すべきかを詳しく解説します。
■① なぜ“立ち往生”が毎年大規模に起きるのか
大雪での立ち往生は複数の要因が重なって起きます。
- 降雪量の急増
- 路面凍結によるスリップ
- 登坂区間でのタイヤ空転
- ノーマルタイヤ車の混在
- トラックのスタック
- 吹雪で視界不良
- 車線減少による渋滞
- 事故車両の処理遅れ
1台のスタックが連鎖し、
数km〜数十kmが完全に動かなくなる ケースも珍しくありません。
■② 車内に閉じ込められる“命の危険”
雪による立ち往生で最も危険なのは、
気温低下 × 長時間拘束 です。
- 外気温が氷点下
- 暖房を切ると急速に冷える
- エンジンが使えなくなる可能性
- 燃料が尽きる
- 水・食料不足
- 子どもや高齢者は低体温症リスクUP
特に夜間の立ち往生は、
生命にかかわる状況 に発展します。
■③ エンジンをつけたままでは“一酸化炭素中毒”のリスク
大雪時の車内暖房は危険です。
- マフラー(排気口)が雪で埋まる
- 排気ガスが車内に逆流
- 風向きで車の下に滞留
- 寝ていたら気づかない
立ち往生中にエンジンを使う場合は、
排気口の除雪・換気・短時間使用 が絶対に必要です。
■④ 長時間動けないことで起きる“健康被害”
車内で長時間過ごすことで、以下の健康リスクが発生します。
- 低体温症
- 脱水症状(冬でも起きる)
- エコノミークラス症候群
- 精神的ストレス
- 睡眠不足
- 子ども・高齢者の体調悪化
立ち往生は“災害そのもの”と認識する必要があります。
■⑤ 雪の立ち往生を避けるための事前チェック
外出前の判断が命を守ります。
- 目的地の天気予報(降雪量・警報)
- 高速道路の通行止め情報
- 国道のチェーン規制
- 迂回路の有無
- スタッドレスタイヤの状態
- 燃料は満タンにして出発
- 防寒具の積載
- スマホ・モバイルバッテリー満充電
- できれば移動を中止する勇気も必要
冬の移動は「行けるか?」ではなく「行くべきか?」で判断する。
■⑥ 車に積んでおくべき冬の“必須装備”
立ち往生しても命を守るために必要な装備です。
- スコップ(マフラー除雪用)
- 毛布・寝袋
- カイロ
- 防寒着
- 手袋・帽子
- 非常食・飲料水
- 防寒シート
- 携帯トイレ
- モバイルバッテリー
- ポータブル電源(あれば最強)
- 牽引ロープ
- スノーブラシ・雪落とし
- 砂・チェーンスプレー(スタック対策)
準備の有無で生存率が変わります。
■⑦ 立ち往生してしまった時の正しい行動
すでに動けなくなった場合は、次の順番で行動します。
- 周囲の状況確認(事故・雪量・車間)
- マフラー周囲を除雪(最優先)
- エンジンは短時間使用+換気
- 暖房は寝具・断熱を中心に
- ハザードやライトで存在を知らせる
- 水分補給・体を温める
- SNSで位置情報を共有(救助要請補助)
- 車外へ無理に出ない(吹雪・凍傷の危険)
とにかく 「低体温症・CO中毒」 を防ぐことが最優先です。
■⑧ 立ち往生を抜けるための行動(可能な場合)
以下の状況なら自力脱出も検討できます。
- マフラー・下回りが雪で埋まっていない
- スリップしていない
- 周囲が安全
- 車幅が確保できる
脱出方法:
- スコップでタイヤ周りを掘る
- 砂・チェーンスプレーで摩擦を増やす
- 2速発進(ATでも可能)
- タイヤをまっすぐにする
- アクセルを踏みすぎない
ただし危険があれば、無理をせず待機が最優先です。
■まとめ|雪の立ち往生は“道路災害”であり命を奪う危険がある
雪による立ち往生は、
- 低体温症
- 一酸化炭素中毒
- 脱水
- エコノミークラス症候群
- 長時間拘束
- 救助遅延
といった複数の危険が重なる“冬の災害”です。
冬の外出は天候・道路情報を最優先に判断し、
装備がなければ無理をしないことが命を守る行動になります。
結論:
防災士として、雪の立ち往生は「準備不足が命取りになる災害」です。出発前の判断・装備・情報収集が、生死を分ける最も大切なポイントです。

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