高潮は単独でも危険な災害ですが、
実際の現場では 高潮・大雨・河川増水が同時に起こる複合災害 が多く、
被害が一気に拡大します。
防災士として現場を経験してきた立場から、
「高潮が他の自然現象と重なったときの本当の危険性」を解説します。
■① 高潮は単独で来ない“複合災害”が基本
高潮が起こる場面の多くは、
- 台風接近
- 前線の活発化
- 大雨
- 河川水位の上昇
これらが同時に発生するため、
どれかひとつだけで判断すると危険 です。
■② 内水氾濫との合体で被害が倍増する
高潮で海側の水位が上がると、
河川や排水路から海へ水が流れ出にくくなります。
その結果、
- 街中の排水が追いつかない
- 低い土地の地下・道路が冠水
- マンホールから水が噴き出す
こうした 内水氾濫と高潮が同時発生する ケースが非常に多いです。
特に都市部では下水道の能力を超えやすいため要注意です。
■③ 外水氾濫との同時発生|河川堤防の越水リスク
高潮で海側の水位が高いところに、
上流から大雨の増水が重なると、
- 川の水位が下がらない
- 堤防が越流しやすい
- 河川水が一気に住宅地へ流れ込む
という 外水氾濫 につながります。
沿岸部+河川近くに住む家庭は特に警戒が必要です。
■④ 満潮とのタイミングが最悪の条件を作る
高潮が危険なのは「いつ起きるか」。
満潮時に重なると、
- 1〜3メートル以上水位が上昇
- 堤防の高さを超えやすい
- 避難が間に合わない
“満潮+高潮+大雨”
これは最も危険な組み合わせです。
■⑤ 地下空間の浸水は一瞬で起こる
高潮が来ると、真っ先に影響を受けるのが 地下空間。
- 地下駐車場
- 地下鉄駅
- 地下店舗
- ビルの地下倉庫
これらは水の通り道になりやすく、
“階段が一瞬で滝のようになる” ケースもあります。
地下に車を停めている家庭は、
台風接近前に 必ず地上階に移動 しておきましょう。
■⑥ 高潮時は「風」が危険をさらに増幅させる
高潮が起きるときは、必ず暴風が吹いています。
暴風は、
- 窓ガラスの飛散
- 外物の転倒
- 漁船・車両の転覆
- 避難の妨げ
こうした二次被害を引き起こし、
避難行動が遅れがちになります。
■⑦ 浸水は“水平移動”ではなく“壁のように押し寄せる”
高潮の特徴は水が「静かに溜まる」のではなく、
海水が風で押されてくる“壁のような水” になることです。
そのため、
- 自転車や歩きでは絶対に避難できない
- 膝下の水深でも転倒の危険
- 夜間は特に気づきにくい
という状況になります。
避難は必ず 明るいうち・早めの段階 で。
■⑧ まとめ|高潮は“複合災害になる”前提で行動する
高潮は単体でも危険ですが、
実際に命を奪うのは次の組み合わせです。
- 高潮 × 大雨
- 高潮 × 内水氾濫
- 高潮 × 外水氾濫
- 高潮 × 満潮
- 高潮 × 暴風
防災士としての結論はこれです。
高潮は「複合災害」になるからこそ、早めの避難が唯一の命を守る手段。
自宅のハザードマップを確認し、
海・川・低地に関わるリスクがないか
必ずチェックしておきましょう。

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