【防災士が解説】高潮⑤|自治体が進める高潮対策とは|地域の命を守るための“公助”の仕組み

高潮は、家庭だけでなく自治体がどれだけ備えているかで
被害の規模が大きく変わります。

防災士としての現場経験から、
自治体が取り組んでいる“高潮対策の実際”をわかりやすく整理します。


■① 堤防・護岸の整備|「高さ」と「強度」で高潮を食い止める

自治体の高潮対策で最も重要なのが、堤防や護岸です。

対策の内容:

  • 老朽化した堤防の補強
  • 高潮を想定した高さへのかさ上げ
  • 波の勢いを弱める消波ブロック
  • 護岸コンクリートの強化

高潮は一度に大きな海水が押し寄せるため、
“壊れない構造”が命を守る基盤になります。


■② 水門・排水機場の運用強化

河川の河口や港湾部では、

  • 水門の閉鎖
  • 排水ポンプのフル稼働
  • 満潮と高潮の時間に合わせた制御

これらが迅速に行われます。

水門や排水機場は自治体の職員が常時見守っており、
内水氾濫や逆流を防ぐための最前線 です。


■③ 高潮ハザードマップの作成と住民への周知

自治体は、国や県のデータをもとに
高潮浸水想定区域と浸水深を示すハザードマップを作っています。

内容:

  • 浸水が予想される範囲
  • 最大浸水深(0.5m・1m・3mなど)
  • 避難場所の位置
  • 避難ルート

ただし、配布しても意外と読まれていないため、
自治体は説明会や学校教育を通じて周知を進めています。


■④ 避難情報の発令|早めの判断が自治体の役割

高潮は進行が早く、
自治体の避難情報の早さが生死を分けます。

自治体が出す情報の流れは以下の通り:

  • 高潮注意報
  • 高潮警報
  • 高潮特別警報
  • 警戒レベル3(高齢者等避難)
  • 警戒レベル4(避難指示)

特に警戒レベル3は “要支援者のための時間確保” の意味が強く、
自治体の判断と住民の行動がセットで命を守ります。


■⑤ 避難所の開設と運営体制

高潮時は、次の点を考慮して避難所が開設されます。

  • 海抜の高い場所
  • 浸水想定区域外
  • 駐車場がある避難所
  • 多言語表示
  • 福祉避難所との連携

自治体は避難所の環境を整えるだけでなく、
高齢者や障がい者の移動支援にも力を入れています。


■⑥ 高潮センサー・監視カメラの設置

最近はICT(デジタル)を活用した高潮監視が進んでいます。

例:

  • 海面上昇のセンサー
  • 堤防の監視カメラ
  • 河川水位計
  • リアルタイム情報アプリ

これにより、高潮の“異変の早期発見”が可能になります。


■⑦ 海沿いの土地利用規制・防災まちづくり

自治体は、浸水リスクが高い地域に対して、

  • 建築制限
  • 必要な高さの確保(かさ上げ)
  • 防災集団移転の検討
  • 大規模施設の立地規制

などの対策を行い、
高潮に強いまちづくりを進めています。


■⑧ まとめ|自治体の対策と家庭の行動はセットで機能する

自治体は多くの高潮対策を進めています。

  • 堤防・護岸の強化
  • 水門・排水ポンプの運用
  • ハザードマップの作成
  • 避難情報の発令
  • ICTによるリアルタイム監視
  • 避難所の運営
  • 土地利用の調整

防災士としての結論:

自治体の対策は万全ではない。だからこそ、住民が“早く動くこと”が最も重要。

高潮は自治体だけでは防ぎきれない災害です。
「公助 × 自助 × 共助」の連携が命を守ります。

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