高潮は、家庭だけでなく自治体がどれだけ備えているかで
被害の規模が大きく変わります。
防災士としての現場経験から、
自治体が取り組んでいる“高潮対策の実際”をわかりやすく整理します。
■① 堤防・護岸の整備|「高さ」と「強度」で高潮を食い止める
自治体の高潮対策で最も重要なのが、堤防や護岸です。
対策の内容:
- 老朽化した堤防の補強
- 高潮を想定した高さへのかさ上げ
- 波の勢いを弱める消波ブロック
- 護岸コンクリートの強化
高潮は一度に大きな海水が押し寄せるため、
“壊れない構造”が命を守る基盤になります。
■② 水門・排水機場の運用強化
河川の河口や港湾部では、
- 水門の閉鎖
- 排水ポンプのフル稼働
- 満潮と高潮の時間に合わせた制御
これらが迅速に行われます。
水門や排水機場は自治体の職員が常時見守っており、
内水氾濫や逆流を防ぐための最前線 です。
■③ 高潮ハザードマップの作成と住民への周知
自治体は、国や県のデータをもとに
高潮浸水想定区域と浸水深を示すハザードマップを作っています。
内容:
- 浸水が予想される範囲
- 最大浸水深(0.5m・1m・3mなど)
- 避難場所の位置
- 避難ルート
ただし、配布しても意外と読まれていないため、
自治体は説明会や学校教育を通じて周知を進めています。
■④ 避難情報の発令|早めの判断が自治体の役割
高潮は進行が早く、
自治体の避難情報の早さが生死を分けます。
自治体が出す情報の流れは以下の通り:
- 高潮注意報
- 高潮警報
- 高潮特別警報
- 警戒レベル3(高齢者等避難)
- 警戒レベル4(避難指示)
特に警戒レベル3は “要支援者のための時間確保” の意味が強く、
自治体の判断と住民の行動がセットで命を守ります。
■⑤ 避難所の開設と運営体制
高潮時は、次の点を考慮して避難所が開設されます。
- 海抜の高い場所
- 浸水想定区域外
- 駐車場がある避難所
- 多言語表示
- 福祉避難所との連携
自治体は避難所の環境を整えるだけでなく、
高齢者や障がい者の移動支援にも力を入れています。
■⑥ 高潮センサー・監視カメラの設置
最近はICT(デジタル)を活用した高潮監視が進んでいます。
例:
- 海面上昇のセンサー
- 堤防の監視カメラ
- 河川水位計
- リアルタイム情報アプリ
これにより、高潮の“異変の早期発見”が可能になります。
■⑦ 海沿いの土地利用規制・防災まちづくり
自治体は、浸水リスクが高い地域に対して、
- 建築制限
- 必要な高さの確保(かさ上げ)
- 防災集団移転の検討
- 大規模施設の立地規制
などの対策を行い、
高潮に強いまちづくりを進めています。
■⑧ まとめ|自治体の対策と家庭の行動はセットで機能する
自治体は多くの高潮対策を進めています。
- 堤防・護岸の強化
- 水門・排水ポンプの運用
- ハザードマップの作成
- 避難情報の発令
- ICTによるリアルタイム監視
- 避難所の運営
- 土地利用の調整
防災士としての結論:
自治体の対策は万全ではない。だからこそ、住民が“早く動くこと”が最も重要。
高潮は自治体だけでは防ぎきれない災害です。
「公助 × 自助 × 共助」の連携が命を守ります。

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