ニュースでは「台風」「ハリケーン」「サイクロン」など
似たような言葉が出てきますが、実は“発生場所の違い”で呼び方が変わるだけで
本質的には同じ種類の嵐です。
しかし、地域特性や建物構造の違いから、
被害の出方や対策には大きな差があります。
防災士としての視点から、
ハリケーンと台風の違いをわかりやすく解説します。
■① ハリケーンと台風は“発生場所”で名前が違うだけ
熱帯で発生する「強い熱帯低気圧」の名称は
地域で呼び方が変わります。
- 台風(Typhoon)
→ 北西太平洋(日本・中国・フィリピン周辺) - ハリケーン(Hurricane)
→ 北大西洋・カリブ海・アメリカ周辺
→ 北東太平洋(メキシコ西岸) - サイクロン(Cyclone)
→ インド洋・南太平洋周辺
つまり、仕組みは同じです。
■② 最大風速の区分が違う|ハリケーンは“カテゴリー”
台風は「強さ」で分類されますが、
ハリケーンは カテゴリー(Saffir–Simpson Scale) が使われます。
●台風の強さ(日本基準)
- 強い(33〜44m/s)
- 非常に強い(44〜54m/s)
- 猛烈な(54m/s以上)
●ハリケーン(カテゴリー)
- カテゴリー1:33〜42m/s
- カテゴリー2:43〜49m/s
- カテゴリー3:50〜58m/s(巨大災害級)
- カテゴリー4:58〜69m/s
- カテゴリー5:70m/s以上(壊滅的)
特にハリケーンのカテゴリ4・5は
家屋が吹き飛ぶレベルの破壊力 があり、被害は桁違いです。
■③ ハリケーンの方が“巨大化しやすい”理由
アメリカ周辺は、
- 水温が高い海域(28〜30℃)が広く
- 成長しやすい海の面積が大きい
そのため、
長期間エネルギーを取り込み巨大化しやすい構造 になっています。
一方で、日本周辺は水温の高い海域が限られ、
本州に近づくころには強さが落ちる場合もあります。
■④ 被害の種類が違う|ハリケーンは“高潮被害”が極めて大きい
台風・ハリケーン共通のリスクはありますが、
ハリケーンの方が高潮被害が極端に大きくなる傾向があります。
理由:
- 海岸が浅く広い(アメリカ南部)
- 潮位が一気に数メートル上昇
- 広範囲で浸水が進む
「カトリーナ(2005年)」のように
都市全体が水没した例もあります。
■⑤ 建物構造の違い |日本は台風前提、アメリカは“嵐に弱い地域も多い”
日本は台風常襲国のため、
- 耐風基準の建築法
- 窓の強度が高い
- 屋根瓦が固定されている
など“台風前提の建物”が多いですが、
アメリカ南部は、
- 木造の平屋が多い
- 飛来物で壊れやすい
- 川沿いの町が多い
といった地域特性もあり、被害拡大につながっています。
■⑥ 防災情報の伝え方も違う
アメリカでは、
- Mandatory Evacuation(強制避難命令)
- シャッター閉鎖命令
- 高速道路一方通行(避難専用)
など、行政が強力に避難を促します。
日本では「避難指示」が最も強い表現ですが、
アメリカほど強制力はありません。
■⑦ 私たちが知っておくべきポイント
日本も海水温の上昇により、
“ハリケーン並みに発達する台風” が増えると言われています。
つまり今後は、
- 強風のピークが強烈化
- 高潮のリスク増加
- 停電が広域で長時間化
- 河川氾濫との複合災害
こうした可能性が高まっていきます。
■⑧ まとめ|ハリケーンも台風も“本質は同じ”。備えが命を守る
違いはありますが、
どちらも「巨大な熱帯低気圧」であることに変わりません。
- 呼び名は発生地域の違い
- ハリケーンは“カテゴリー”で強さを分類
- 日本の台風より巨大化しやすい
- 高潮被害は世界的に共通して危険
- 建物・避難勧告の文化が違う
防災士としての結論:
ハリケーンも台風も、備えの基本は同じ。 早めの避難と事前準備が最も多くの命を守る。
日頃から防災情報に触れておくことが、
“どんな強風災害にも対応できる力” につながります。

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