看護師不足が深刻化し、医療体制そのものが維持できない地域が増えています。
看護師処遇改善として2024年の診療報酬改定で+2.5%のベースアップが行われましたが、
激務と比べると賃金が追いつかず、人材流出が止まらないのが現状です。
防災の視点で見ると、医療体制の弱体化は“災害時の人命救助力の低下”に直結します。
ここでは、防災士として「病院集約化が避けられない理由」をわかりやすく整理します。
■① 診療報酬による賃上げだけでは流出を止められない
政府は看護師の待遇改善に動いてはいますが、
+2.5%の賃上げでは、
- 他産業より待遇が低い
- 夜勤・急変対応など激務リスクが大きい
- メンタル負荷が高すぎる
といった理由で看護師が離職してしまいます。
「処遇改善が追いつかないほど過酷な現場」
これが看護師不足の根本です。
■② 看護師に給与を還元するには“病院経営の改善”が必須
看護師を引き留めるには賃金アップが最も効果的です。
しかし急性期病院は、
- 公定価格(診療報酬)で収益が決まる
- 人件費比率が非常に高い
- 経営改善の余地が少ない
という構造的な限界があり、
給与アップしたくても原資がない状態が続いています。
■③ 病院の集約化が「やむを得ない」理由
地域に病院が分散していると、
人材・設備・医療機能が分散し、どこも慢性的に不足します。
逆に、病院を集約すると、
- 症例数が増えて高度医療が可能
- スタッフの専門性が高まる
- 夜勤を含むシフトが組みやすくなる
- 教育体制が整い復職しやすい
- 病院収益が安定し待遇改善が可能
こうした効果が出るため、
看護師の離職減 → 看護師不足の改善につながります。
■④ 実際に“大規模病院ほど看護師の待遇が良い”
日本看護協会の調査(2024年)によると、
勤続10年・非管理職の平均月収
- 99床以下: 約31.9万円
- 500床以上: 約36.7万円
大規模病院のほうが 約5万円も高いという結果。
さらに大規模病院は、
- 復職支援制度
- 研修プログラム
- キャリアアップ制度
が整っており、看護師にとって“働きやすい職場”になっています。
■⑤ 集約することで“医療の質が上がる”
医療体制を一つにまとめると、
- 急性期医療が一気に強くなる
- 重症患者への対応力が上がる
- 救急の受け入れ件数が増える
- 医療事故のリスクも減る
災害時には、
- 同時多発の救急搬送
- 避難所の医療サポート
- 高齢者・持病患者のケア
これらに対応できる病院が不可欠です。
病院集約は、防災的にも 「命を守る病院機能を強化する手段」 になります。
■⑥ 病院集約は“アクセスの悪化”という課題がある
当然ながら、病院を統合すれば、
- 病院が遠くなる地域
- 高齢者や免許返納者の移動問題
- 救急車の搬送距離増加
といったデメリットが出ます。
しかし、
- 人口減少
- 医療需要の低下
- 人材不足
これらの現実を踏まえると、
アクセス・質・コストの3つを同時に満たす医療はもう不可能という段階に来ています。
そのため、
「質」を守るために「アクセス」を削る
という選択が現実的になっているのです。
■⑦ 日本の医療は“選ばなければならない局面”に来た
今後は、
- 何を維持し
- 何を削り
- どこに集中させるか
を地域ごとに決めていく必要があります。
病院を減らすということではなく、
限られた人材と資源を最も効果的に配置し直すことが目的です。
■まとめ|病院の集約化は“厳しいが必要な防災対策”
看護師不足は深刻で、
今のままでは救急医療も災害医療も持ちません。
結論:
病院集約化は「不便になる改革」だが、命を守るためには避けられない。
防災士として強く感じるのは、
“医療体制の弱体化=災害時の死亡率上昇”という確固たる現実。
病院が分散したままでは、本当に助けるべき命を守れません。
看護師、医師、地域、行政が一体となり、
「未来の命を守る医療体制」を作ることが、日本の防災力を大きく高める鍵になります。

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