【元消防職員が解説】防災×香港マンション大規模火災|“151人死亡”から学ぶ高層火災の最大リスク

香港・大埔区で発生した高層マンション火災。
わずか1つの火災で151人が死亡する極めて異例の大惨事となりました。

高層7棟が焼失し、遺体の多くは炭化。
難燃基準を満たしていない保護ネットの使用や、避難経路の複雑化が被害を拡大させたとみられています。

元消防職員として、
高層火災の本質的な危険性と私たちが学ぶべき防災ポイントを解説します。


■① なぜ被害がここまで拡大したのか

今回の香港火災では、以下の要因が重なりました。

● 修繕工事で使われた“難燃性不足の保護ネット”
● 高層階まで一気に火が上がる構造
● 多棟が連結され延焼しやすい
● 避難が遅れた住民が多数
● 走行不能なほど煙が充満

高層火災は「煙の広がりが早い」のが最大の特徴。
煙に巻かれると 2〜3分で意識を失うため、被害が一気に拡大します。


■② 炭化遺体が多い理由:高温火災の恐ろしさ

香港消防は「一部遺体が炭化」と発表。
これは、火炎温度が800〜1000℃以上に達していた可能性を示します。

● 可燃物の多いマンション
● シート・足場が“煙突効果”を生む
● 風が火勢を強くする

これらの条件が揃うと、火災は一気に“高温火災”へと変貌します。

元消防職員としても、
高温火災は人間が生存できる環境ではないことは断言できます。


■③ 難燃性基準を満たさないネットの危険性

香港当局によると、工事用ネットの一部は難燃基準に不適合。

工事現場では、
▶ 樹脂系ネットが火源を受けると一瞬で延焼
▶ 縦方向に炎が走り、上層階へ“火の道”をつくる
▶ 住民の避難ルートに炎が到達

高層火災の延焼速度は、平屋の比ではありません。

「工事中のマンションは火災リスクが高い」
この意識が重要です。


■④ 640人体制の災害被害者識別チーム(DVI)が出動

香港警察は640名規模のDVI(災害犠牲者識別チーム)を投入。

● 遺体捜索
● 身元確認
● 搬送
● 家族支援

大規模火災では“亡くなった後の対応”だけで数百人規模が必要になるほど、現場は過酷です。

日本でも、マンション火災の増加に備え
DVI活動の重要性が急速に高まっています。


■⑤ 避難遅れが致命的になる「高層火災の特性」

高層マンション火災は、避難が困難です。

✔ 階段の数が限られる
✔ エレベーターは使用不可
✔ 上階ほど煙が回りやすい
✔ 1階までの移動に時間がかかる

77階建て、60階建てなどが主流になりつつある都市では、
「逃げ切れない」ケースが急増しています。


■⑥ 高層火災では“煙を避ける”行動が最重要

火災の死亡原因の7割以上は “煙による窒息”。

そのため、住民が取るべき最重要行動はこれです。

● 姿勢を低くする
● ぬれタオルで口を覆う
● 風上・安全側の階段を使う
● ドアノブが熱い場所を開けない
● 部屋に戻り隙間を塞いで救助を待つ

「マンション火災=外へ逃げる」とは限りません。
煙の状況で行動を変える判断力が命を分けます。


■⑦ 工事中の建物は火災リスクが2倍以上

工事中の建物には、火災リスクが多く潜んでいます。

● 足場ネット
● 養生シート
● 電線の露出
● 仮設電源
● 加工作業による火花

日本でも、修繕工事中のマンション火災は頻発しています。

「工事期間中は火災に注意」
これは住民全員が知っておくべきポイントです。


■⑧ 避難ルートの事前確認が“生死を左右する”

マンション火災の一番の防災対策は
「避難経路の把握」です。

✔ どの階段がどこにつながっているか
✔ 非常階段はどこにあるか
✔ どのフロアに防火扉があるか
✔ どの階が避難しやすいか

火災は突然起こります。
日頃の“10秒の確認”が命を救います。


■まとめ|高層マンション火災は「初動」と「煙」がすべて

✔ 高層マンション火災は被害が拡大しやすい
✔ 難燃性不足の工事資材は大きなリスク
✔ 煙の充満は数分で命を奪う
✔ 避難経路の事前確認が最重要
✔ 工事中の建物は特に危険
✔ 高温火災は人が生存できない

結論:
高層火災では“煙との勝負”。 避難経路の事前確認と初動判断が、生死を分ける。

元消防職員として断言できます。
火災は“見える火”ではなく“見えない煙”が一番の敵です。
都市型マンションが増える今、火災への備えは必須です。

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