【元消防職員が解説】防災×煙の恐怖⑤|階段・廊下が“最速で致死空間になる理由”

火災で最も危険な場所の一つが、実は 階段と廊下
元消防職員として強く断言します。

「階段に煙が流れ込んだ瞬間、その建物は一気に逃げにくくなる」

この記事では、普段何気なく通る“階段・廊下”が、火災時に最も危険になる理由を徹底解説します。


■① 階段は“煙の通り道”になりやすい構造

階段は上下に空気が流れる“縦の穴”。
煙は暖められて上昇するため、階段は煙の高速通路になります。

● 数十秒で上階まで充満
● 下階の火災でも最上階まで煙が広がる
● わずか1〜2分で避難不能になることも

実際、火災で最も逃げ遅れが多いのは 階段付近 です。


■② 廊下は“煙の袋小路”になる

廊下は細長い空間で、煙の逃げ場がないため…

● 一気に充満
● 視界ゼロ
● 前の人を見失う
● どっち方向か分からない
● 走ると壁に激突する

煙で方向感覚を失った人は、そのまま倒れ込むことが多い。

元消防職員として、廊下の途中で意識を失ったケースを何度も見てきました。


■③ “階段へ避難”は正しい。しかし状況次第で最も危険

多くの啓発資料では「階段で避難」と言われますが、
煙が階段に入り始めたら一瞬で危険ゾーン化します。

なぜなら…

● 白煙→黒煙へ数秒で変化
● 温度が急上昇
● 上階へ逃げると煙に追いつかれる
● 下階へ逃げると炎の熱に近づく場合も

“階段を見た瞬間に判断する力” が生死を決めます。


■④ エレベーター前は最悪の“煙だまり”

火災の煙は、エレベーター前のホールに溜まりやすく…

● エレベーターシャフト(縦穴)が煙を吸い上げる
● シャッターが降りる前に煙が侵入
● ホール全体が黒煙充満スペースになる

実際に、エレベーター前で倒れていたケースは非常に多い。

エレベーター前=絶対に長居しない場所 です。


■⑤ 上階ほど“煙の温度”が高く致死率が上がる

火災の煙は上に行くほど高温になります。

● 1階の火災でも、5階・6階は80〜150℃
● 深呼吸しただけで気道が損傷
● 数秒で呼吸不能
● 体が硬直し動けなくなる

煙は毒性だけでなく“熱”でも命を奪います。


■⑥ 廊下での“避難ルート喪失”が最も多い原因

煙が廊下に入ると、出口が完全に見えなくなり…

● ドアがわからない
● 階段が見つからない
● 反対方向へ走る
● 部屋に戻れない
● 低姿勢でも視界がゼロ

特に黒煙は、ライトを照らしても
1m先が何も見えない ほど強力。

廊下は煙が満ちると“迷路”になります。


■⑦ 階段・廊下で生き残るための行動優先順位

元消防職員として、最も生存率が高かった行動をまとめます。

✔ 1|煙が見えた瞬間、姿勢を低く

考える時間はありません。即行動。

✔ 2|壁づたいに移動する

壁に手をつけて移動すると出口・階段を見失わない。

✔ 3|煙が濃い方向へは進まない

黒煙=最短で致死。
色の薄い側(白煙側)へ進む。

✔ 4|階段が黒煙なら階避難も検討

部屋に戻る方が生存率が上がるケースもある。

(元消防職員として、実際に“部屋に留まって助かった事例”は多い)

✔ 5|ハンカチ・服で口を覆う

熱と毒をわずかに遅らせることができる。


■⑧ 高層階では「横移動」が最も生存率が高い

火災時、上階へ向かうのは最悪の選択。

● 煙は上昇する
● 熱が上階に集中
● 廊下は数十秒でアウト

高層階の場合は
階段の反対側へ横移動 → 避難階か別棟へ逃げる
が最適解となるケースが非常に多い。


■まとめ|階段・廊下は“煙が最速で命を奪う場所”と理解しておく

✔ 階段は煙の高速通路
✔ 廊下は袋小路で逃げにくい
✔ 煙が入ると数十秒で視界ゼロ
✔ 上階ほど温度上昇で致死性が高い
✔ 壁移動と低姿勢が最重要
✔ 黒煙の階段は絶対に使わない
✔ 高層階は横移動が基本

結論:
階段と廊下は“煙の支配領域”。ここを理解した人ほど生存率が高い。

元消防職員として、何度も現場で見てきた事実です。
「煙が階段に入った瞬間が勝負」という意識を、必ず持ってください。

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