冬の車中泊で最も多い死亡原因は 低体温症。
外気が氷点下になると、車内温度は30分で急降下し、装備不足のまま過ごすと命に関わります。
ここでは、防災士として「低体温症を防ぐ体温管理」に特化して解説します。
■① なぜ車内は“家よりも激しく冷える”のか
車は金属の箱。
住宅のような断熱材や暖房設備がないため、外気温の影響をモロに受けます。
▼ 車内が冷える理由
- 金属ボディが熱を奪う
- 床下から底冷え
- 結露が発生して体温をさらに奪う
- 寒冷地では車内温度が外気とほぼ同じになることも
→ 車内は「屋外と同等」だと考えるべき。
■② 低体温症の危険サイン(初期〜重症)
低体温症は静かに進むため気づきにくいのが特徴です。
▼ 初期症状
- 強い震え
- 唇が紫
- 手が動かない
- 眠気
- めまい
▼ 中等症
- 震えが止まる(危険なサイン)
- 意識がぼんやりする
- 呼吸が浅くなる
▼ 重症
- 意識消失
- 呼吸・脈が弱くなる
- 死に至る
震えが止まったら、すぐ温める緊急対応が必要です。
■③ 車中泊で使う衣類の“正しいレイヤリング”
冬は重ね着の順番で体温保持力が大きく変わります。
▼ レイヤリング(3層構造)
① ベースレイヤー(吸湿)
ヒートテック・速乾アンダーウェア
→ 汗を吸って冷えを防ぐ
② ミドルレイヤー(保温)
フリース・ダウン・起毛インナー
→ 熱を閉じ込める
③ アウター(防風)
ウインドブレーカー・防水ジャケット
→ 外気を遮断し熱の流出を防ぐ
これだけで体感温度が5〜10℃変わります。
■④ 正しく温まる“体温の上げ方4つ”
低体温を防ぐには「体の中心」を温めることが最優先。
▼ 効果的な温めポイント
1️⃣ みぞおち(太い血管が通る)
2️⃣ 仙骨(腰の中心)
3️⃣ 首元
4️⃣ 太ももの付け根
ここを温めると、5分で全身が温まりやすくなります。
■⑤ カイロ・湯たんぽの使い方で安全が変わる
カイロは貼る位置を間違えると意味がありません。
▼ 正しい使い方
✔ 体の中心部(お腹・背中)
✔ 靴下の上(足首)
✔ 手首を保温
✔ 就寝前に寝袋の中へ入れて温床を作る
▼ 危険な使い方
❌ 直接肌に貼る
❌ 足の裏に貼る(低温やけど)
❌ 冬用寝袋なしで頼りすぎる
カイロは補助、メインは保温装備です。
■⑥ “底冷え”を防ぐマットの使い方
冬の車中泊で最も体温が奪われるのは「底面」から。
▼ 正しい断熱構造
✔ 座席に毛布
✔ その上に銀マット
✔ さらに寝袋
これだけで、体温保持力が2倍以上違います。
■⑦ 温かい飲み物は“体を内側から温める最強の防災”
冬の車中泊でホット飲料はほぼ必須。
▼ 体温回復に効果的な飲み物
✔ ココア
✔ スープ(味噌汁・カップスープ)
✔ 生姜湯
✔ 白湯
✔ 常温のスポーツ飲料
▼ 避けるべき飲み物
❌ アルコール(体温を下げる)
❌ 冷たい水ばかり
■⑧ 危険な“座席での寝方”と安全な体勢
▼ 危険
❌ 直角の座席のまま寝る
❌ 足を動かさず数時間固定
❌ 体がむき出し
→ 低体温症+エコノミー症候群が同時に起きる可能性。
▼ 安全な寝方
✔ 30〜40度背もたれを倒す
✔ 太もも下にクッション
✔ 体の露出をゼロに
✔ 足を定期的に動かす
■まとめ|冬の車中泊は「体温管理」が生死を分ける
✔ 車内は外気とほぼ同じ温度まで冷える
✔ 低体温症は静かに進行する
✔ レイヤリングで体温保持力が激変
✔ 温めポイントは“体の中心”
✔ 底冷え対策は最優先
✔ ホット飲料は最強の味方
✔ 正しい寝方で命を守る
結論:
冬の車中泊は「どれだけ体温を守れるか」で生存率が決まる。 防災士として、寒さ対策は備蓄より先に準備すべき最重要項目です。

コメント