【元消防職員が解説】防災×救急車の適正利用|“本当に必要な人に届けるために”いま知っておくべきこと

救急車は「いつでも無料で呼べる」非常に心強い存在です。
しかし実際の現場では、本当に命が危ない人に救急車が向かえない ケースが全国で多発しています。

元消防職員として現場にいた経験から断言できます。
救急車の適正利用は、あなた自身と家族、そして地域の命を守る行動です。


■① 救急車が“本当に必要なケース”とは

救急車をためらう必要はありません。
以下に当てはまれば 迷わず119番 してください。

  • 意識がない、返事がない
  • 呼吸が苦しい・ゼーゼーしている
  • 激しい胸痛・圧迫感
  • けいれんが続く
  • 大量出血・止まらない出血
  • ひどい頭痛・片側のしびれ
  • 高いところからの転落
  • 子どもの急激な変化(ぐったり、呼吸異常)
  • 交通事故で体に異常がある

現場では「もう少し早ければ救えた命」が確かにあります。
迷ったらすぐ119番でOKです。


■② 救急車が不要なケースとは?

以下は、病院での診察が必要でも救急車ではなく 自家用車・タクシーで十分 な例。

  • 軽い発熱だけ
  • 数日前からの腹痛
  • 風邪やインフルの疑い(意識障害なし)
  • 軽い頭痛
  • 通常の嘔吐下痢(脱水なし)
  • 軽いケガ(歩ける・会話できる)
  • 通院のための“タクシー代わり利用”

もちろん不安なら医師に相談してOKですが、
緊急度の低いケースで救急を使用すると
本当に命が危険な人の到着が遅れる ことがあります。


■③ “救急車が来るまでの時間”は伸び続けている

実は、全国的に救急搬送時間は年々伸びています。

  • 搬送件数の増加
  • 高齢化
  • 軽症による要請の増加
  • 受け入れ先病院の確保に時間がかかる

元消防としての感覚でも、
“軽症要請が重症者を遅らせる現実”を何度も見てきました。


■④ 救急車を呼ぶか迷ったら?

厚労省・消防庁が提供しているツールが便利です。

救急受診ガイド(♯7119)
→ 看護師が電話で状態を聞き、救急車が必要か判断してくれる

こども医療電話相談(#8000)
→ 子どもの症状に慣れた看護師が対応

「呼ぶべき?」「様子見ても大丈夫?」の不安を減らせます。


■⑤ 救急車が到着するまでにやるべきこと

救急車を呼んだら、ただ待つのではなく 命を守る準備 をします。

  • 玄関を開けておく
  • ペットを別の部屋に
  • 家族に声かけ
  • 服薬情報・保険証(またはマイナ保険証)を準備
  • できる範囲で応急手当
  • 状態が急変したら119に再度連絡

これをしておくだけで、到着後の処置が圧倒的に早くなります。


■⑥ 子どもの救急は「急変しやすい」ことを前提に

元救急の現場では、子どものほうが急激に悪化するケースを何度も見ました。

以下は迷わず119番です。

  • ぐったりして反応が弱い
  • 呼吸が早い・苦しそう
  • 唇が紫
  • 高熱でけいれん
  • 水分が取れない
  • 顔色が明らかに悪い

子どもは言葉で訴えられません。
「おかしいと思った瞬間」が勝負です。


■⑦ 高齢者は軽症に見えても危険

高齢者の場合、以下は“重症のサイン”です。

  • 食事がとれない
  • 立てない・ふらつく
  • ぼんやりして反応が遅い
  • 転倒後に痛みを訴えない
  • 水分不足の疑い

軽い症状に見えても、急激に悪化する ことが多いため要注意。


■⑧ 災害時はさらに「適正利用」が重要に

地震・停電・豪雨では救急要請が急増します。

  • 道路が渋滞
  • 受け入れ病院が限られる
  • 通信混雑で119がつながりにくい
  • 救急隊の稼働が追いつかない

防災の観点からも、
本当に必要な人へ救急車を“空けておく”ことが地域の防災力につながります。


■まとめ|救急車は「地域全体の命」を守るために使う

救急車は無料で使えるからこそ、適切に使う必要があります。

  • 命の危険があるときは迷わず119
  • 軽症は自家用車・タクシーで
  • ♯7119や#8000で迷いを解消
  • 到着まで応急手当と準備
  • 高齢者・子どもは急変しやすい
  • 災害時は適正利用が地域の命を守る

結論:
救急車の適正利用は“あなた自身の命”と“誰かの命”を同時に守る防災行動である。

元消防職員としての経験から強く言えます。
救急車は「遠慮するためのもの」ではなく、
“必要な時に正しく使う”ツールです。
その意識が、地域の救える命を確実に増やします。

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