冬になると、どうしても悩ましいのが「暖房費」。
電気代・ガス代・灯油代が一気に上がり、節約のために暖房を控えるご家庭も多いと思います。
しかし、防災・健康の視点で見ると、
「暖房費をケチりすぎて、体調を崩す」ことが一番高くつくケースも少なくありません。
この記事では、防災士の立場から
- 冬の暖房費の目安の考え方
- 「我慢しすぎ」が危険な理由
- 暖房費を抑えつつ安全に過ごす工夫
- 停電や災害時も見据えた備え方
をわかりやすく整理します。
■① 冬の暖房費は「いくらが正解?」より「何に使っているか」が大事
「冬の暖房費はいくらが普通ですか?」という質問をよく受けますが、
正直なところ、正解の金額は人によって全く違います。
- 住んでいる地域(北海道と九州では大きく違う)
- 住宅の性能(築年数・断熱・窓の種類)
- 家族構成(高齢者・乳幼児がいるか)
- 働き方(在宅時間が長いかどうか)
同じ“1万円の暖房費”でも、
「よく考えた使い方」の1万円と、「スカスカの家でダラダラつけっぱなし」の1万円では意味が違います。
大切なのは、
① どのくらい暖房にお金を使うか
② そのお金で“どれだけ安全と健康を守れているか”
をセットで考えることです。
■② 暖房費を削りすぎる“見えないリスク”
暖房費を気にするあまり、
- 室温が10℃前後
- 厚着も不十分
- 高齢者が一日中冷えた部屋で過ごす
こうした環境は、次のようなリスクを高めます。
- 低体温症
- 脳卒中・心筋梗塞(温度差によるヒートショック)
- 風邪・インフルエンザ
- 関節痛・腰痛の悪化
- 眠りの質の低下
結果的に医療費や休職、体調不良によるパフォーマンス低下など、
「暖房費を削った以上に大きなコスト」につながることも珍しくありません。
■③ ざっくりイメージする「冬の暖房費の目安」
あくまで目安ですが、一般的な家庭では
- 電気+ガス(または灯油)で
夏より月数千〜1万円程度アップ
というケースが多いです。
たとえば、
- 夏:光熱費合計 1万円
- 冬:光熱費合計 1万5,000〜2万円
という増え方は、決して“異常な金額”ではありません。
大事なのは、
- 「どれくらい上がるか」をざっくり把握しておく
- 家計の中で「冬の安全な室温確保」を、最初から必要経費として組み込んでおく
ことです。
■④ 暖房費を抑えつつ“安全な室温”を守るポイント
「安全な室温」を目安にしながら、効率よく暖房を使いましょう。
目安とされる室温
- リビング:18〜20℃以上
- 高齢者・乳幼児がいる部屋:20℃前後を意識
コツ
- 部屋全体を暖めすぎない(使う部屋を絞る)
- サーキュレーターで温かい空気を循環
- カーテンを長めにして窓からの冷気を防ぐ
- ドアの隙間風対策(テープ・隙間ストッパー)
- 床冷え対策にラグ・マットを敷く
「設定温度だけ下げる節約」ではなく、
“逃げていく熱”を減らす工夫が一番の節約・防災になります。
■⑤ 「全身暖房」より「ポイント暖房」でコスパを上げる
部屋全体を暖めるより、
“人”に近いところを効率的に暖める方が、暖房費を抑えやすいです。
- 電気毛布
- こたつ
- ホットカーペット
- 足元ヒーター
- 湯たんぽ
- 膝掛け・ブランケット
これらは消費電力が比較的少なく、
「体を温める」に特化した道具なので、暖房費と防災のバランスが取りやすくなります。
■⑥ 災害時・停電時も見据えた“暖房費の考え方”
防災の視点では、
「普段の暖房費」と「もしもの寒さ対策」はつながっています。
- 普段から湯たんぽ・毛布・寝袋を活用している家庭
→ 停電時にもそのまま使える - 家族分の防寒インナー・靴下がそろっている
→ 避難所生活や在宅避難の強い味方
つまり、
“冬の省エネ暖房グッズ”=“災害時も使える防災グッズ” です。
少し良い寝袋やブランケットにお金をかけるのは、
「光熱費の節約」と「災害への備え」を同時に買う感覚でOKです。
■⑦ 家計と命を両立させる「暖房費の考え方」
暖房費を考えるときは、次のような順番で考えると整理しやすくなります。
- 「最低限守りたい室温」を決める
- その温度を保つための“最低限必要な暖房費”を認める
- その上で「断熱・服装・ポイント暖房」で支出を減らす
- 冬用の防災グッズ(寝袋・湯たんぽ等)を少しずつ整える
「とにかく暖房は我慢!」ではなく、
“使うべきところには使い、削るところは工夫で削る” ことが大切です。
■⑧ 防災士として感じる“冬の暖房費”の本当の価値
被災地派遣や高齢者宅の訪問で、
「寒さを我慢しすぎた結果、体調を崩してしまった」ケースを何度も見てきました。
- 光熱費を気にして暖房を控え、関節が痛くなり動けなくなる
- 寒い脱衣所での入浴中にヒートショック
- 電気代が怖くて暖房を切って寝て体調を崩す
冬の暖房費は、
「快適のためのお金」ではなく「命と健康を守るためのお金」として考えてほしい、
というのが防災士としての率直な思いです。
■まとめ|“冬の暖房費”は「命と健康の基本料金」
冬の暖房費は、
- いくらが正解、というより
- どれだけ安全と健康を守れているか
で考えるべき支出です。
- 室温18〜20℃を一つの目安に
- 断熱・服装・ポイント暖房でコスパを高め
- 災害時にも使える防寒グッズを少しずつ整え
- 「我慢しすぎない冬の防災」を家族で意識する
ことが大切です。
結論:
冬の暖房費は“削る費用”ではなく、“家族の命と健康を守るための必要経費”として、上手にコントロールしていくことが防災につながります。
防災士として現場を見てきた立場から言うと、
「暖房費を少し惜しんで体調を崩す」より、
“安全な室温を確保するための最低限の支出”を先に確保する方が、結果的に安心で安上がりです。
無理のない範囲で、暖房費と防災をセットで考えていきましょう。

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