冬の災害では、
「避難が遅れて命を落とすケース」が特に多くなります。
その背景には、
寒さ・暗さ・心理・生活習慣が複雑に絡み合った“冬特有の遅れ要因”があります。
ここでは防災士として、
なぜ冬は避難が遅れるのか? どうすれば遅れを防げるのか?
をわかりやすく解説します。
■① 冬は家から出たくない心理が強くなる
冬は外気温が低く、
「寒いからまだ大丈夫だろう」
「今は出たくない」
と 人間の心理が避難を拒否しやすい季節 です。
これは災害時の“正常性バイアス”を強め、
避難判断を遅らせる最大の原因です。
■② 夜が長く、暗さで判断力が鈍る
冬は日没が早いため、
避難判断の7割が“暗い時間帯”に重なると言われています。
暗いと以下の力が低下します。
- 周囲の状況把握
- 危険予測
- 行動の決断力
- 足元の安全確認
「まだ様子を見る」という決断につながりやすいのです。
■③ 室内が暖かく、危険に気づきにくい
冬は暖房で室内が快適なため、
外の危険に気づけないケースが多発します。
- 豪雨の音が聞こえにくい
- 雪崩の気配を感じにくい
- 川の増水を確認しに行かない
- 風雪の激しさが把握できない
家の中で安心してしまう心理が、避難の遅れを生みます。
■④ 防寒着・荷物準備に時間がかかる
冬の避難は、
準備に時間がかかることも大きな要因。
- コート
- 手袋
- マフラー
- 防寒靴
- カイロ
- 追加の水や食料
夏より3〜5倍の準備時間が必要と言われています。
この準備時間が“運命の差”になることも。
■⑤ 高齢者・子どもの移動が遅くなる
冬は体が固まりやすく、
高齢者は特に動き出しに時間がかかります。
- 関節痛
- 筋肉のこわばり
- 転倒リスクの増加
また子どもは夜間の寒さでぐずり、
出発が遅れることが多いです。
避難のスタートが遅れる家庭は少なくありません。
■⑥ 路面凍結・積雪で“外に出られない”
冬の避難が遅れる最大の物理的理由。
- 家の前が凍って滑る
- 車が出せない
- 長靴や靴が濡れて動けない
- 視界が悪く歩けない
「外に出る危険 > 家に留まる心理」
となり、避難が遅れるのです。
■⑦ 停電で情報が届かない
冬の災害では停電が多発します。
停電時の問題:
- テレビが見られない
- Wi-Fiが使えない
- スマホが冷えでバッテリー急減
- 外の様子がまったく分からない
結果、“避難情報が届かず遅れる”ことが起きます。
■⑧「明日でいいか」の心理が強くなる
冬は疲れやすく、
夜は特に「今日はもう動きたくない」という心理が働きます。
- 布団から出たくない
- 睡眠時間が長くなる
- 暗くて何もしたくない
この状態で避難指示が出ても、
判断力が30〜50%低下するという研究もあります。
■まとめ|冬は避難が遅れやすい“季節要因”が揃っている
冬は、
心理・気象・生活習慣・環境の全てが
“避難遅れ”に向かってしまう季節です。
結論:
冬の避難は「早めの判断」が命を守る最大の行動。
防災士として感じるのは、
「あと5分早ければ助かった命」が本当に多いということ。
早めの判断、早めの準備、早めの行動。
これだけで冬の災害リスクは大きく下げられます。

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