冬は、在宅医療を受けている方にとって
一年で最も危険の多い季節です。
✔ 停電で医療機器が止まる
✔ 気温低下で体温維持が困難になる
✔ 乾燥・感染症リスク増
✔ 雪・凍結で病院へ行けない
✔ 配送や訪問サービスが遅れる
在宅酸素・人工呼吸器・吸引器・経管栄養など
電力や温度管理が命に直結するケースほど、冬の災害に弱いという現実があります。
今回は、防災士の視点から
「冬の在宅医療家庭が最低限しておくべき備え」をまとめます。
■① 冬の在宅医療が抱える最大の脅威は“停電”
在宅医療の多くが電力に依存しています。
停止すると命の危険がある機器:
- 在宅酸素(酸素濃縮器)
- 人工呼吸器
- 吸引器
- 経管栄養ポンプ
- 電動ベッド
- CPAP(睡眠時無呼吸)
- 換気システム
冬は気圧や気温の影響で停電が多くなります。
停電時は暖房も止まり、低体温のリスクが急上昇。
「電気が止まる=全ての医療が止まる」
これを前提に対策が必要です。
■② 在宅医療家庭が必ず準備すべき“電源”
在宅医療では 電力の二重化・三重化 が鉄則。
準備しておくべきもの:
- ポータブル電源(大容量タイプ)
- 予備バッテリー
- 延長コード
- 車から給電するモバイルインバーター
- 自家発電機(使える家庭は最強)
とくに 酸素濃縮器・人工呼吸器は最優先で電力確保。
すべての機器について
「何時間動くか」「代替手段は何か」
を書いたメモを作り、家族全員が把握しておくと安全です。
■③ 冬は“低体温”が命に直結する
在宅医療の患者さんは、体温調整機能が低下していることが多く、
- 手足が冷える
- 寝ている間に体温が下がる
- 部屋の寒さに気づけない
などの危険があります。
対策:
- 部屋の断熱(隙間テープ・厚手カーテン)
- ひざ掛け・電気毛布(停電対応として毛布も必須)
- 湯たんぽ(電気不要)
- 室温18〜22℃を維持
- 加湿器で湿度40〜60%に
冬の災害では、低体温が最も多い死亡原因の一つです。
■④ 冬は在宅医療の“移動手段”が奪われる
雪・凍結により、次のような問題が起きます。
- 病院へ行けない
- 訪問看護・訪問医師が遅れる
- 薬局や配達が来ない
- 救急車も遅延する
在宅医療家庭は特に、
「予定通り誰も来ない状況」を想定して備えることが重要です。
準備:
- 常用薬を1〜2週間分ストック
- 医療情報の紙メモ(お薬手帳・診療内容)
- 病院・訪問看護・家族の緊急連絡網
- 深夜・早朝に迷ったら「早めに相談」する姿勢
「ギリギリの量で生活する」は冬に最も危険です。
■⑤ 感染症は在宅医療家庭にとって致命的
冬は感染症のリスクが爆発的に増えます。
在宅医療の患者は重症化しやすく注意が必要。
対策:
- 手洗い・アルコール消毒
- 来客は最小限
- マスク着用
- 部屋の換気(短時間でOK)
- 加湿でのどの乾燥を防ぐ
- 体調異変はすぐに医師へ相談
避難所でも感染リスクは高いため、
できる限り在宅で安全に過ごせる環境を事前に整えることが重要です。
■⑥ 在宅医療の“冬の防災グッズ”
通常の防災袋とは別に、医療専用袋を作ってください。
入れておくべきもの:
- 在宅医療の説明書
- 常用薬・予備薬
- 医療用手袋
- 消毒セット
- 体温計・血圧計
- 予備チューブ・部品
- モバイルバッテリー
- 毛布・カイロ
- 防寒ポンチョ
- 緊急連絡先一覧(医師・看護師)
避難先でも必要な物がすぐに出せるよう
医療用バッグを“常備”として使える状態にしておくのが理想です。
■⑦ 在宅避難が難しい時は“福祉避難所”
在宅医療家庭は、一般の避難所では対応できないケースが多くあります。
利用できる場所:
- 福祉避難所(介護・医療対応あり)
- 病院併設型避難所
- 自治体が指定する医療的ケア児避難スペース
対策:
- 事前に場所を把握する
- 介護度・医療機器の利用を自治体に登録
- いざという時は迷わず移動
“普通の避難所へ行って困る”ケースを
防災士として何度も見てきています。
■⑧ 家族・地域で「支援ネットワーク」を作る
在宅医療は、家族だけでは限界があります。
備えるべき人脈:
- 担当医
- 訪問看護師
- ケアマネ
- 民生委員
- 近隣の協力者
- 親族
- 自治体の福祉課
冬の災害時は、
人の支援が“装備以上の力”になることがあります。
■まとめ|在宅医療家庭は“冬が最も危険”。備えは家族の命を守る行動
✔ 停電で医療機器が止まると命に関わる
✔ 電源の二重化は必須(ポータブル電源・予備バッテリー)
✔ 低体温を防ぐ環境づくりが重要
✔ 雪・凍結で病院や訪問看護が来ない前提で備える
✔ 感染症対策は冬こそ徹底
✔ 医療専用の防災袋を作る
✔ 福祉避難所の場所は必ず確認
✔ 家族だけで背負わず、支援連携を広げる
結論:
冬の在宅医療は“災害にもっとも弱い層”。早めの備えと電源確保こそが命を守る最大の防災です。防災士として最優先で備えてほしい家庭です。

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