2025年12月2日夕方、北海道函館市の五稜郭近くで発生した火災は、
11時間以上燃え続ける大規模延焼となり、
繁華街・商業施設・市電運休を巻き込む騒然とした事態となりました。
元消防職員として、今回の火災の特徴と、
“誰にでも起こり得る火災リスク”をわかりやすく解説します。
■① なぜ火の勢いが衰えなかったのか?
今回の火災は 建物内部で猛烈に燃焼し続けた ことが特徴です。
●① 出火場所が「トイレの裏口付近」=可燃物の密集
・内装材
・配管周り
・建材
などが密集し、急激な温度上昇につながりやすい。
●② 店舗建物は“隠れた空間”が多い
・天井裏
・壁の中
・ダクト
こうした場所に火が入り込むと、
外から放水しても火が届きにくいため延焼します。
●③ 鉄骨造でも「火の通り道」ができる
鉄骨=燃えない ではありません。
内部の壁・天井・断熱材が燃えることで
火が通るルートが生まれ、“長時間燃焼”になります。
■② 繁華街で火災が起きると何が危険?
●① 人が多い=避難行動が複雑
買い物客・会社員・飲食店利用者などが多数。
煙が建物に入ると一斉に避難が始まり混乱しやすい。
●② 隣接店舗が多い=すぐ延焼
商店街・ビル密集地は
1棟の火災が複数棟へ広がる典型パターン。
●③ 消防車の進入が困難
交通量の多い道路、路上駐車、歩行者…
繁華街は「消防活動が遅れやすい構造」です。
■③ 実際に起きた生活への影響
今回も複数の被害がありました。
●デパートが煙流入で臨時閉店
煙が入っただけで建物は営業不可能になります。
●市電が終日運休
火災による
・煙
・安全確認
が必要なため、公共交通も止まります。
●周辺ビルも延焼
飲食店などが入る建物へ火が広がり、
深夜まで消火が続きました。
“強風注意報や乾燥注意報がなくても火は広がる”ことを再確認すべきケースです。
■④ 冬の火災が危険な理由
●① 空気が乾燥している
目に見えなくても、12〜2月は湿度が低く、
火がつくと一気に燃え広がります。
●② 暖房器具の使用増加
ストーブ・電気ヒーター・延長コード…
火災原因が増える季節です。
●③ 夕方の早い時間帯は人が多い
帰宅、買い物、塾、飲食店など繁華街が混み合う時間帯の火災は危険度が跳ね上がります。
■⑤ 火災現場で最も危険なのは“煙”
炎よりも煙が危険です。
●一気に視界ゼロ
●10〜20秒で喉に激痛
●数分で意識障害
元消防職員として、火より煙で倒れる人を多く見てきました。
煙を吸ったら逃げ切れない
これが現実です。
■⑥ 繁華街で火災に遭遇した時の行動
✔ ① とにかく煙から離れる
上ではなく横・下へ移動。
✔ ② 風下に行かない
煙は風に流れるため、
風上へ逃げるのが鉄則。
✔ ③ 建物へ戻らない
物を取りに戻る行為は死亡原因の上位。
✔ ④ スマホで情報確認
・市電運行
・交通規制
・周辺火災情報
をリアルタイムで確認。
■⑦ 商業地域の店舗オーナーがすべき防火対策
✔ 火気使用部分の点検
トイレ・厨房・バックヤードは出火が多い。
✔ 天井裏の可燃物清掃
ホコリ×電気配線は最悪の組み合わせ。
✔ 消火器の“すぐ使える位置”への配置
奥にしまうと役に立ちません。
✔ 防火管理者の研修
ビル火災は知識不足が被害拡大につながります。
■⑧ 住宅も他人事ではない理由
今回のような店舗火災でも、
住宅地域に置き換えれば
密集地での延焼火災 と同じ構造です。
・古い家屋が密集
・木造が多い
・風がない日でも煙が充満しやすい
・道路が狭く消防車が入りにくい
住宅街でも十分起こり得る火災です。
■まとめ|冬の市街地火災は“条件がそろうと一気に広がる”
今回の函館火災から学べることは…
● 火災は風がなくても延焼する
● 建物の構造が火を隠して燃やし続ける
● 人が多い場所では避難が困難
● 煙が最も人命を奪う
● 冬は火災リスクが1年で最も高い
結論:
火災の恐ろしさは「煙・延焼・隠れた構造」にある。 元消防職員として、建物の火災は早期通報と初期消火、そして煙から逃げる行動が命を守る最大のポイントです。
商業地・住宅地どちらでも起きうる火災。
冬の今こそ、家と職場の防火対策を見直してください。

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