冬は、高齢者の死亡リスクが年間で最も高くなる季節です。
その背景には「寒さ」だけでなく、いくつもの危険が重なる“冬特有の環境”があります。
今回は、防災士として
「冬に高齢者の死因が増える理由」
「家庭でできる予防策」
をわかりやすく解説します。
■① 冬に高齢者の死亡が増える最大の理由|“急激な寒暖差”
高齢者は体温調整が苦手になり、
室内の寒暖差で血圧が大きく変動します。
▼代表的な死因
- 心筋梗塞(血管が急に縮む)
- 脳梗塞・脳出血(血圧急上昇)
- 不整脈・心不全
特にリスクが高い場所:
トイレ・脱衣所・浴室・玄関
→ 家の中で最も温度が低い空間。
■② 冬の入浴事故は“夏の10倍”|最も危険な時間帯は夜
高齢者の冬の死因で多いのが 入浴中の突然死。
年間1万9000人以上が“家庭の浴槽”で命を落としています。
原因は、
- 熱い湯で血圧急上昇
- 浴室が冷えて血管が縮む
- のぼせ→意識障害
- 溺水(おぼれ)
という流れ。
特に危険な状態:
熱い湯(42℃以上)× 冬の寒い脱衣所
■③ 冬は「呼吸器系」が弱りやすい季節
寒さで免疫が落ち、
ウイルスや細菌に感染しやすくなります。
代表的な死因:
- 肺炎
- 慢性呼吸不全の悪化
- インフルエンザ合併症
- 誤嚥(ごえん)性肺炎
高齢者は咳の反射が弱く、
わずかな誤嚥でも肺炎になることがあります。
■④ 冬は“脱水”が目立たないまま進む
冬でも脱水で命を落とす高齢者は多いです。
理由:
- のどの渇きを感じにくい
- トイレを我慢して飲水を減らす
- 暖房の乾燥
- 痰が出にくい → 肺炎リスク上昇
冬の隠れ脱水は、
脳梗塞・心筋梗塞の引き金 になります。
■⑤ 転倒・骨折 → 長期入院 → 体力低下 → 死亡の連鎖
冬は路面凍結や家の中の冷えで転倒が急増します。
特に危険:
- 大腿骨骨折
- 頭部外傷
高齢者は一度倒れると
入院で筋力が落ち → 認知症進行 → 体力低下 → 死亡
という流れになるケースが多いです。
■⑥ 冬の災害(停電・断水・大雪)が死因を増やす
災害時は特に高齢者が危険。
- 暖房が止まり低体温症に
- 電気機器(吸引器・在宅酸素)が使えない
- 道路寸断で早期受診できず重症化
- 避難所で感染症に弱くなる
※ 冬の低体温症は「家の中」でも起きます。
■⑦ 高齢者の命を守る“冬の家庭対策”8つ
✔① 室内の温度差をなくす
- 脱衣所・トイレに小型ヒーター
- 廊下にカーテン
- ドア下のすきま風を防ぐ
✔② 入浴ルールを統一
- 湯温は 38〜40℃
- 長湯しない
- 入浴前後に白湯を飲む
- 一人で長時間入らない
✔③ こまめな水分補給
- 1日 1.2L を目安
- 白湯・スープ・お茶でOK
- 寒い日は意識して飲む
✔④ こたつは必ず“足だけ”
→ 上半身が冷えて心臓・脳血管に負担
✔⑤ 夜のトイレ動線を暖かく
- スリッパ
- 電気毛布
- 廊下ライト
✔⑥ 玄関・窓の断熱
- 断熱シート
- 冬用カーテン
- すきまテープ
✔⑦ かかりつけ医の薬を多めに
大雪で通院できない場合に備えて 2週間分。
✔⑧ 見守りの連絡を増やす
- 冬は“孤立”が死亡リスクを上げる
- 毎日1回の連絡でも命が守られる
■まとめ|冬は高齢者にとって一年で最も危険な季節
高齢者の冬の死因は、
「寒さ × 血圧変動 × 感染症 × 転倒 × 災害」
が重なって起きます。
防災士としての結論:
冬の備えは、高齢者の命を直接守る行動です。
室温管理、入浴対策、こまめな水分補給、見守り。
どれも今日からできる“命をつなぐ行動”です。
大切な家族を守るために、できるところから一つずつ整えていきましょう。

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