災害現場では、道路の寸断・階段の破損・車の侵入不可など、
負傷者をすぐ運べない状況がよくあります。
そうした場面で役立つのが 応急担架作成スキル。
毛布・上着・物干し竿・イス・棒など、
“どこにでもある物”で安全に負傷者を運ぶための技術です。
消防現場でも応急担架は頻繁に使用され、
訓練しているかどうかで搬送スピードが大きく変わる重要スキルです。
■① 応急担架が必要になる場面
災害では、次のような状況がすぐ発生します。
- 階段や廊下が崩れて救急車が近づけない
- 建物内に煙や瓦礫があり、歩行できない
- 足を骨折し、歩かせると症状悪化の危険
- 高齢者や子どもを安全に移動させたい
- 担架の数が不足している避難所
“負傷者をすぐ動かせない”ことが命に関わるため、
応急担架作りは非常に重要です。
■② 応急担架の基本原則「強度」「安定」「固定」
応急担架は、見た目より 安全性 が最優先。
✔ 体重を支えられる強度がある
✔ 揺れない安定性がある
✔ 負傷者の体がずれないよう固定できる
この3つが満たされていれば、材質は問いません。
■③ 代表的な応急担架の作成方法(消防でも使用)
●① 毛布+棒(物干し竿・竹・長柄)
もっとも有名で安全性が高い担架です。
- 毛布を広げる
- 左右に棒を置く
- 毛布を折り返して棒を包む
- 中央に負傷者を寝かせる
棒が“レール”となり、強度・安定ともに高い担架になります。
●② 上着(ジャンパー)+棒
棒を上着の袖に通すだけで、
簡易担架になります。
力が弱い人でも持ちやすいのが特徴。
●③ 椅子を使った応急担架
イス2脚を向かい合わせて両端を持ち搬送。
階段など狭い場所でも使えるため、実際の現場でも多用されます。
●④ ブルーシート担架
非常用として避難所に多い方法。
- 四隅を強く丸めて結ぶ
- 端を複数人で持つ
- 軽量者なら短距離搬送が可能
ブルーシートは滑りやすいため、固定が重要です。
■④ 搬送時の正しい姿勢と注意点
応急担架は作るだけでなく 運び方 が安全の鍵です。
●足腰を落とす(膝を曲げる)
中腰で持つと腰を壊す原因になります。
●持ち手は「同じ高さ」にそろえる
高さが違うと担架が傾き、負傷者が滑落する危険。
●掛け声で動く
「せーの」「いち・に」でタイミングを合わせる。
●階段では“頭側を高く”
これは救急現場の基本技術です。
■⑤ 絶対にやってはいけない搬送方法
間違った方法は負傷者の容体を悪化させます。
- 負傷者を引きずる
- 首や背中をねじりながら動かす
- 固定せず揺さぶりながら運ぶ
- 一人で無理に持ち上げる
特に 脊椎損傷の疑いがある場合は慎重に。
■⑥ 子ども・高齢者を搬送する時のポイント
災害現場ではこの2つのケースが非常に多いです。
●子ども
・体重は軽いが不安が強い
・布で密着して“安心感”を与えると落ち着く
●高齢者
・揺れに弱く、意識が落ちやすい
・強めの固定が必要
・寒さ対策も同時に行う(毛布を巻く)
■⑦ 応急担架訓練の目的は「手順の自動化」
災害時は緊張と混乱で手が震えます。
その状態で初めて応急担架を作るのはほぼ不可能。
訓練の目的は以下です。
✔ どの素材で作れるか瞬時に判断できる
✔ 手順が自然に出てくる
✔ 役割分担(持ち手・声かけ)がスムーズになる
✔ パニックせず動ける
“できるかどうか”と“迅速にできるか”は別物です。
■⑧ 家庭でできる応急担架訓練
家の中にあるもので、簡単に訓練できます。
- 毛布を敷いて棒をセット
- 子どものぬいぐるみを乗せて搬送練習
- 椅子を2脚使って短距離の移動
- 体重を想定して持ち手の高さを合わせる練習
特に子どもと一緒に行うと、防災教育としても非常に効果的です。
■まとめ|応急担架作成スキルは“災害弱者を守る技術”
- 道路寸断・瓦礫・煙で救助が遅れることは多い
- 応急担架は身近な物で作れる
- 毛布+棒の担架は最も強度が高い
- 揺れ・傾き・固定が安全のすべて
- 訓練すれば誰でも1分以内に作成可能
- 子ども・高齢者の安全確保に直結
■元消防職員から最後に
災害現場では、
「担架がないから運べない」という理由で命が助からないケースを何度も見てきました。
しかし応急担架を作れる人が1人でもいれば、
救助までの“数分の空白時間”を埋めることができます。
今日できる一歩は――
→ 家の毛布と棒(モップ・ほうき)で一度だけ作ってみること。
それだけで、家族の防災力は確実に上がります。

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