【元消防職員が解説】JICA「消防・防災」研修とは?海外の現場と日本の教訓をつなぐ“実務の学び”

地震、洪水、台風、都市火災。災害の種類や国の制度は違っても、現場で起きる混乱は驚くほど似ています。情報が集まらない、指揮が揃わない、搬送が詰まる、避難所で生活が崩れる。JICAの「消防・防災」研修は、こうした共通課題に対して、各国の実務担当者が学び合い、自国の制度や現場に合う形へ持ち帰るための研修です。ここでは、研修の意義と、住民の命を守る仕組みにどうつながるのかを整理します。


■① JICA「消防・防災」研修とは何か

JICAの「消防・防災」研修は、開発途上国を中心とした各国の防災・消防関係者が、日本の防災制度や現場運用、訓練、装備活用、避難の考え方などを学び、自国の改善につなげることを目的とする研修です。単なる座学ではなく、現場の運用や意思決定の仕組みを含めて学び、「次の災害で助かる確率を上げる」ための実務研修として位置づけられます。


■② なぜ国際研修が必要なのか(災害対応の本質は共通)

災害時に現場が止まる原因は、国が違っても似ています。
・通報や要請が集中して整理できない
・情報が断片化し、優先順位が揃わない
・複数機関の連携が噛み合わない
・避難所運営が追いつかない
研修の価値は、他国の経験を先に学び、失敗の繰り返しを減らせる点にあります。災害は起きてから改善するのでは遅く、学びを先に取りに行くことが重要です。


■③ 研修で扱われやすい実務テーマ(指揮・通信・避難)

研修で重要になりやすいのは、装備の種類よりも運用です。
・指揮命令系統と現場統制
・消防指令や通信の整備と冗長化
・救急搬送の連携(医療との接続)
・広域応援の受援(受け入れ)の設計
・避難情報の出し方、避難所運営(衛生・区画・情報)
「仕組みが回るかどうか」が、救命の速度を決めます。


■④ 日本の強みは“装備”より“手順と訓練”

日本の防災で学ばれやすいのは、必ずしも高価な装備ではありません。
・標準化された手順
・訓練での反復
・役割分担の明確化
・記録と振り返りによる改善
災害時に人は焦り、判断が重くなります。手順が整っているほど、迷いが減り、同じ状況でも被害を抑えやすくなります。


■⑤ 被災地派遣(LO)で感じた「言葉が揃うと現場が揃う」現実

被災地派遣(LO)の現場で強く感じたのは、現場が乱れる原因は“能力不足”より“言葉と基準が揃っていないこと”だという点です。被害状況の共有の仕方、優先順位の付け方、応援の入れ方が揃うだけで、同じ人数でも動きが噛み合い始めます。研修で共通言語と運用の型が育つと、災害時に「迷いのコスト」が減ります。これは、現場の速度を上げる最も確実な方法の一つです。


■⑥ 研修の効果が出る場面(広域応援・避難所・医療連携)

国際研修の効果は、次のような場面で特に出ます。
・広域応援が入る災害で、受援が回る
・避難所で衛生と情報が整い、感染や混乱が減る
・救急搬送が詰まりにくくなり、重症者の救命率が上がる
・指揮が揃い、重複活動や危険行動が減る
成果は、目に見える派手さより、混乱が減る形で現れます。


■⑦ 住民にとってのメリット(地域の備えが更新される)

住民から見ると国際研修は遠い話に見えますが、実際は身近な安全に直結します。
・避難情報が分かりやすくなる
・避難所が回りやすくなる
・救助や搬送が迷いにくくなる
・応援部隊が早く力を出せる
こうした改善が積み重なるほど、災害時の不安と危険行動が減ります。研修は“地域の耐災害力”を上げる投資です。


■⑧ 今日からできる備え(個人も学びを生活に落とす)

制度や研修だけでなく、個人の行動も命を守ります。
・避難の判断基準を家族で決める
・通信断を前提に連絡ルールを作る
・避難所生活の負担(トイレ・睡眠・衛生)を減らす備えをする
・ハザードマップを見て「行かない場所」を決める
最小の行動を決めておくだけで、災害時の判断が軽くなります。


■まとめ|JICA「消防・防災」研修は、世界の現場に“回る仕組み”を持ち帰る実務の学び

JICAの「消防・防災」研修は、各国の実務担当者が日本の制度や運用、訓練の考え方を学び、自国の現場に合う形へ翻訳して改善につなげる研修です。災害対応の本質は国を越えて共通し、指揮・通信・避難・受援・医療連携など運用面の学びが特に効きます。学びが積み重なるほど、災害時の混乱が減り、救える命が増えます。

結論:
国際研修の価値は「次の災害で迷いを減らすこと」。仕組みと共通言語を整えれば、同じ条件でも救命の速度は上がります。
元消防職員として、被災地派遣(LO)の現場でも、基準と言葉が揃った瞬間に動きが噛み合い、支援が前へ進む現実を見てきました。学びは、見えない防災インフラです。

出典:https://www.jica.go.jp/

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