防災は「知っている」だけでは、いざという時に体が動きません。特に地震や火災は、音・暗さ・煙・人の叫びで一気に判断が重くなり、普段できることができなくなります。そこで有効なのが、VR防災体験車です。現実に近い臨場感を“安全な環境”で体験し、避難行動を身体に落とし込むための訓練ツールとして注目されています。
■① VR防災体験車とは何か
VR防災体験車は、バーチャルリアリティ技術を用いて、地震や火災などの災害場面を臨場感ある映像・音で体験し、避難行動や危険回避を学ぶための移動型訓練車両です。会場に出向いて体験できるため、学校・地域行事・企業訓練などで、防災学習を“その場で完結”させやすい利点があります。
■② 体験で得られる最大の価値は「判断が軽くなる」こと
VRで得られる価値は、知識の上乗せよりも「行動の選択肢が増える」点にあります。怖さを疑似体験しておくと、実災害で起きやすい次の状態を減らせます。
・固まって動けない
・出口を探して迷う
・家族を呼び戻してしまう
・煙の中で無理に戻る
体験があるだけで、最初の一歩が出やすくなります。
■③ 元消防職員として現場で見た“初動の差”とVRの意義
火災現場で差が出るのは、設備よりも「最初の数十秒の判断」です。通報が遅れる、避難誘導が揃わない、戻ってしまう。この小さな遅れが、逃げ遅れや負傷につながります。私は現場で、避難がうまくいく建物ほど「訓練で一度“怖さ”を体験している」と感じる場面がありました。VRは、その怖さを安全に再現できるため、訓練の質を一段上げられます。
■④ 体験後に必ずやるべき“3つの振り返り”
VRは体験して終わりにすると効果が落ちます。体験直後に、次の3つだけ振り返ると行動が定着します。
・どこで迷ったか(出口、階段、集合場所)
・何を先にやるべきだったか(通報、声かけ、避難開始)
・自分の家・職場なら何を変えるか(家具固定、避難経路、合図)
この振り返りで、体験が「自分ごと」に変わります。
■⑤ 被災地派遣で痛感した“経験の有無”が不安を左右する
被災地派遣の現場では、同じ被災状況でも「経験がある人ほど、次に何をすべきかが早い」と感じました。怖さが消えるわけではありませんが、判断が早い人は不安に飲まれにくい。避難所でも、最初に動ける人が一人いるだけで、周囲の人の安心感が上がります。VR体験は、実災害の前に“疑似経験”を作り、不安を小さくするための手段になります。
■⑥ 注意点:全員に同じ体験をさせない
臨場感が高いほど、体調や心理への負担が出る場合があります。次の方は、無理に体験しない判断も重要です。
・乗り物酔いしやすい
・強い不安発作がある
・過去の災害体験でフラッシュバックが起きやすい
防災は「頑張る」ほど良いわけではなく、続けられる形が最優先です。
■⑦ 家庭・地域で効果を最大化する使い方
VR体験を地域や家庭の備えに変えるコツは、体験後に“行動を一つだけ決める”ことです。
・家の避難経路を一つ確認する
・家具固定を一か所だけやる
・集合場所と連絡手段を決める
一気に完璧を目指さず、最小行動を積み上げると、体験が備えに変わります。
■⑧ 今日できる最小の準備(体験前・体験後のセット)
VR体験車を活用するなら、次のセットが最小で効きます。
・体験前:家族(または職場)で「避難の合図」を一言決める
・体験後:迷った場面を共有し、「次にやる1行動」を決める
このセットで、体験が“現実の行動”に変わります。
■まとめ|VR防災体験車は「怖さを安全に体験し、行動を変える」ための訓練ツール
VR防災体験車は、災害の臨場感を安全に体験し、避難行動を身体に落とし込むための有効な訓練手段です。効果を最大化するには、体験後の振り返りで「迷い」を言語化し、今日できる最小行動を一つ決めることが重要です。全員に同じ強度の体験を求めず、体調や心理への配慮も含めて、継続できる防災に落とし込みましょう。
結論:
VR防災体験車は、知識を“行動”に変える装置です。体験の後に「次にやる1つ」を決めれば、備えは確実に前に進みます。
元消防職員として、現場では「最初の判断」が結果を分ける場面を見てきました。怖さを安全に疑似体験し、迷いを減らしておくことが、逃げ遅れを減らす現実的な備えになります。
出典:https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/ts/bousai_fukyu/bousai_vr.html

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