【元消防職員が解説】「あなた一人の世じゃない」|消防学校初任科で先に身につけたい“公の心”

消防学校の初任科に入ると、体力や技術より先に「組織の空気」に戸惑う人がいます。
結論から言うと、初任科で一番早く身につけるべき土台は、「自分中心で考えない」「公の仕事は社会に支えられている」という視点です。
これは精神論ではなく、現場で事故を減らし、信頼を積み上げるための“安全装備”です。

私は元消防職員として、現場は個人競技ではなくチームで命を守る仕事だと痛感してきました。被災地派遣(LO)でも、避難所の運営は「住民」「自治体」「支援者」「現場職員」が支え合って初めて回ることを何度も見ています。誰か一人の正義や都合で回る世界ではありません。だからこそ、初任科のうちに“公の心”を整えておくと、その後の成長が速くなります。


■① 「あなた一人の世じゃない」が刺さる理由:消防は“公”の仕事

消防は、住民の税や地域の信頼によって成り立っています。
つまり、装備も教育も訓練も「社会が負担してくれている」面が大きい仕事です。

だから初任科では、こういう感覚が大事になります。

  • 自分の努力だけでここに立っているわけではない
  • 支えてくれる人がいるから学べている
  • 期待されているのは“結果”だけでなく“姿勢”でもある

この土台がある人ほど、指導を素直に吸収し、チームの中で伸びます。


■② 初任科で起きやすい“独り善がり”:悪気がないのが一番怖い

初任科でつまずくのは、能力不足より「視点のズレ」が多いです。

例としては、こんなズレです。

  • 自分の都合だけでルールを解釈してしまう
  • 伝達より自己判断を優先してしまう
  • “正しさ”で押し切って空気を壊してしまう
  • 苦しいときに「自分だけが大変」と思い込む

現場は、ズレが積み重なると事故になります。
だから初任科では、早い段階で“自分の中心”を外す訓練が必要です。


■③ 「不公平」という言葉の罠:視野が狭いと正しさが危険になる

「近代消防」の文章には、社会全体を見ずに“自分の不利”だけを切り取る危うさが描かれています。
初任科でも同じで、視野が狭いまま「不公平」「納得できない」を握りしめると、組織の信頼を失いやすいです。

大切なのは、こう考える習慣です。

  • 自分が見えていない背景がある
  • 他の立場には別の負担がある
  • まずは全体の安全と運用を優先する

公の仕事は、個人の感情より“全体最適”が先に来ます。


■④ 消防の仕事で本当に評価されるのは「協調性」と「信頼の積み上げ」

初任科で強い人は、最初から何でもできる人ではありません。
多くの場合、強いのはこういう人です。

  • 指示を受けたら、まずやってみる(素直)
  • 分からなければ、早めに聞く(報連相)
  • 周囲を見て、遅れている人を支える(協調性)
  • “自分が目立つ”より“全体が整う”を優先する(公の心)

被災地派遣(LO)の避難所でも、空気を壊さず、淡々と役割を果たす人が最後に信頼を集めていました。派手さではなく、継続する姿勢がチームを守ります。


■⑤ 被災地の現場で見た「あなた一人の世じゃない」

被災地では、「自分だけ助かればいい」という空気が少しでも広がると、避難所は崩れます。
逆に、誰かが一歩引いて譲るだけで、全体が落ち着く場面も多いです。

印象に残っているのは、物資が十分でないときほど、

  • 配る側が冷静に手順を守る
  • 受け取る側が“今は我慢する”判断をする
  • 周囲が弱い人を先に通す
    こういう小さな協力が積み重なって、混乱が防がれていたことです。

初任科も同じで、個人の正しさより「全体の安全」が先です。
その視点を持てるだけで、あなたは現場で強くなります。


■⑥ 初任科で実践できる「公の心」チェックリスト

難しいことは要りません。毎日これだけで十分です。

  • 返事と挨拶を先に出す(空気を整える)
  • 指示は“確認してから”動く(自己判断で突っ走らない)
  • 不満が出たら、まず「全体の事情」を想像する
  • 自分が疲れているときほど、言葉を短く丁寧にする
  • 困っている同期を1回だけ助ける(小さくでいい)

“気持ち”ではなく“行動”で公の心を作れます。


■⑦ 将来の所属で活きる:公務は「信頼が資本」

所属に戻ると、住民はあなたの背景を知りません。
見られるのは、言動と態度だけです。

だから、初任科で

  • 自分中心を外す
  • 情報を丁寧に扱う
  • 組織の一員として動く
    この習慣ができている人は、所属で伸びます。

「あなた一人の世じゃない」は、きれいごとではなく“現場の生存戦略”です。


■⑧ 今日できる最小行動:言葉を1つ決める

迷ったときの合言葉を一つだけ持っておくと強いです。

「全体の安全が先。次に自分。」

これを思い出せるだけで、初任科のストレスは減り、信頼が増えます。


まとめ

結論:消防学校初任科で先に身につけたいのは「あなた一人の世じゃない」という公の心。自分中心を外し、全体の安全と運用を優先する姿勢が、現場で事故を減らし信頼を積む。被災地でも、協力と譲り合いが避難所を支えていた。初任科のうちに“公務の視点”を作るほど、所属で強く活きる。


出典

「近代消防」アーカイブ だより vol.170(「近代消防」昭和42年2月号より/赤色灯 第42回(その2))
https://ff-inc.co.jp/wpmailmaga/sekisyoku_no42_b/

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