「マンションは耐火だから安心」「戸建ては燃えやすいから危ない」――こうしたイメージは半分だけ正しく、半分は危険です。
火災の怖さは、建物の種類そのものよりも、煙の動き、避難経路、区画(防火の仕切り)が機能するかで決まります。
この記事では、マンションと戸建てで延焼や避難がどう違うのかを、現場目線で整理します。
■① 延焼の本質は「炎」より「煙」と「区画」
多くの人が炎を怖がりますが、住宅火災で先に命を奪うのは煙です。
煙は建物内を移動し、視界と呼吸を奪い、逃げる力を奪います。
そして煙の広がりを止める鍵が「区画」です。扉や壁で煙を止められるかどうかで、同じ火災でも結果が変わります。
■② マンション火災の特徴①:コンクリートでも“室内は燃える”
マンションは鉄筋コンクリート造が多く、建物全体が燃え落ちるリスクは相対的に低いです。
ただし、室内の家具・布・プラスチックは普通に燃えます。
つまり「建物は燃えにくいが、部屋は燃える」。ここを間違えると対応が遅れます。
火元の部屋では短時間で煙が充満し、避難不能になることがあります。
■③ マンション火災の特徴②:煙が“縦方向”に動きやすい
マンションは廊下、階段、配管スペースなど、縦に煙が上がりやすい構造を持ちます。
特に火元が下階の場合、上階へ煙が流れ込みやすく、「自分の部屋は火が出ていないのに危険」という状況が起きます。
このとき重要なのは、玄関扉を不用意に開けないことです。廊下側が煙で満ちていると、一気に室内へ煙が入ります。
■④ 戸建て火災の特徴①:延焼が“横方向”に広がりやすい
戸建ては、間取りが連続していることが多く、火が回ると部屋から部屋へ横に燃え広がりやすいです。
また、木造は燃えないわけではなく、構造材が燃える段階に入ると進行が速くなります。
ただし、戸建ては外へ出る出口が複数取りやすく、避難が成立しやすい面もあります。逃げ道の設計で生存率が変わります。
■⑤ 戸建て火災の特徴②:階段が“煙の通り道”になる
戸建てでは階段が煙の通り道になりやすく、1階火災で2階が危険になることがあります。
「2階に上がれば助かる」というイメージは危険で、煙が先に階段をふさぐと逃げ道がなくなります。
特に就寝中の火災では、煙で目覚めたときには階段が使えないケースも現実にあります。
■⑥ 避難の違い:マンションは“共用部の安全確認”、戸建ては“即外へ”
マンションは、玄関を開けた先が共用廊下です。そこが煙で満ちていれば、外へ出る動き自体が危険になります。
そのため、
・玄関扉を触って熱くないか
・ドアの隙間から煙が入っていないか
を確認し、危険なら扉を閉めたまま待機や別行動を考える判断が必要です。
戸建ては、可能なら最短で外へ出ることが基本になります。
■⑦ “閉める”が命を守る:扉は最強の防煙壁
マンションでも戸建てでも共通するのが、扉を閉めることの強さです。
扉を閉めるだけで、煙と炎の進行を遅らせ、避難時間を稼げることがあります。
元消防職員として現場で何度も見たのは、扉が閉まっていた部屋だけ被害が軽いケースです。
避難するときも、最後に扉を閉める。これは家族で共有しておく価値があります。
■⑧ 被災地派遣で感じた共通点:構造より「判断の型」が生死を分ける
被災地派遣の現場でも感じるのは、状況が悪化するほど人は判断が遅れるということです。火災でも同じです。
マンションか戸建てかよりも、
・火災報知器で早く気づく
・煙を吸う前に動く
・危険なら無理をせず逃げる/待機する
という判断の型を持っている家庭が強いです。
建物の性能に期待しすぎず、家庭側で「迷わない手順」を決めておくことが命を守ります。
■まとめ|マンションも戸建ても“煙”が主役。安全神話を捨てる
マンションは建物自体は燃えにくい一方、煙が縦方向に動きやすく、共用部の状況で避難が左右されます。
戸建ては横方向に延焼しやすく、階段が煙の通り道になりやすい一方、外へ出やすい利点もあります。
共通の最強対策は、火災報知器で早期発見し、煙が来る前に動き、扉を閉めて時間を稼ぐことです。
結論:
マンションか戸建てかで油断せず、煙と避難経路を最優先に考えることが生存率を上げます。扉を閉める、煙を吸う前に動く、この型が命を守ります。
元消防職員としての現場実感では、「建物は強いから大丈夫」という思い込みが一番危険です。安全神話を捨てて、家族で避難の手順を決めておいてください。
出典:総務省消防庁「住宅防火 いのちを守る10のポイント」
https://www.fdma.go.jp/

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