【元消防職員が解説】地域と一緒に強くなる|消防フェスタが「災害に強いまち」を育てる理由

消防の仕事は、災害が起きてからだけではありません。火災予防や防災の啓発、そして市民との信頼関係づくりも、現場力を底上げする重要な仕事です。

鹿児島県・薩摩川内市消防局が開催した「消防フェスタ2025」は、車両体験搭乗や展示、放水体験に加え、初企画の「ホースボウリング」、廃棄ホースを活用した「コースター作り」など、子どもから大人まで“楽しみながら学ぶ”仕掛けが盛り込まれていました。こうした場は、地域の防災力を静かに確実に上げていきます。


■① 消防イベントの本当の価値は「顔が見える関係」

災害時に強い地域ほど、平時から「誰が」「どこで」「何ができるか」が自然に共有されています。消防フェスタのような場で、消防職員と住民が会話し、距離が縮まること自体が、災害時の安心につながります。

私が被災地派遣で感じたのは、避難所や現場で「消防や行政に相談できる空気」がある地域ほど、混乱が小さいという事実です。顔が見える関係は、情報の流れを良くし、助け合いを加速させます。


■② 体験搭乗・展示は「怖さ」を「理解」に変える

消防車両や資機材は、普段は近くで見る機会が少ない分、災害時には“よく分からないもの”になりがちです。展示や体験搭乗は、その不明を減らします。

・消防車はどんな装備で動いているのか
・現場で何を優先しているのか
・市民が安全に協力できることは何か

この理解があるだけで、災害時の行動は整います。防災は“できることを増やす”より、“迷いを減らす”ほうが効きます。


■③ 放水体験が教える「水は無限ではない」という現実

放水体験は楽しいだけでなく、火災対応の現実を体感できます。水利の確保、ホースの扱い、姿勢や反動、指揮の重要性。見た目以上に「段取り」が必要な世界だと分かります。

元消防職員として言えるのは、火災は“気合い”では消えないということです。水、装備、人員、連携。これを市民が少しでも理解していると、現場の安全が上がります。


■④ 「ホースボウリング」は立派な防災教育

遊びの形にしても、ホースに触れるだけで学びが生まれます。

・ホースは意外と重い
・踏むと滑る、転びやすい
・延長や撤収に人手が要る
・道具は「扱えること」が強さ

被災地でも、片付けや支援作業で「長いもの・重いもの・濡れるもの」を扱う場面は多いです。遊びの中で身体感覚を持っておくのは、実は実戦的です。


■⑤ 廃棄ホースのコースター作りが示す「循環の防災」

コースター作りは、単なる工作に見えて、災害対応の裏側(装備の更新・点検・廃棄)を自然に伝えます。

災害は“古い装備”が一番きつい。これは現場の実感です。道具は使えば傷みます。更新、点検、管理が当たり前に回る組織ほど、災害に強い。イベントでその価値に触れられるのは大きいです。


■⑥ 質問が増える地域は強い

職員に対して、現場活動・訓練・資機材について質問する場面が多かったという点は、とても良い兆候です。

質問が増える地域は、次の流れが作れます。
「知る → 家で話す → 備える → 近所で共有する」

LOとして現場調整に入った時も、地域の力は結局“普段の会話量”で決まると感じました。防災は知識より、共有の文化です。


■⑦ 家族連れで賑わうイベントが、地域の安全を底上げする

1,100名を超える参加があったということは、地域の防災への接点がそれだけ増えたということです。

特に家族で来る意味は大きいです。
・子どもが「怖い」ではなく「知ってる」に変わる
・親が備えを見直すきっかけになる
・家庭内で防災の会話が増える

被災地派遣では、家庭内の“共有不足”が行動の遅れにつながる場面を何度も見ました。家族での参加は、その弱点を補強します。


■⑧ 今日からできる「消防フェスタを活かす」行動

イベントに参加した・参加していないに関係なく、次の3つが効果的です。

・家族で「火災の初動」を1分だけ話す(通報・避難・初期消火の順)
・消火器と住宅用火災警報器を確認する(場所と期限だけでOK)
・地域の避難先と連絡方法を決める(1つでいい)

行動は小さくて十分です。小さな行動が、いざという時の迷いを減らします。


■まとめ|

消防フェスタのような取り組みは、楽しさの中に「災害に強い地域の土台」を作る力があります。体験・遊び・工作・会話が、消防を身近にし、住民の行動を変え、信頼を積み上げます。

結論:
消防フェスタの本当の成果は、体験そのもの以上に「顔の見える関係」と「家庭の会話」を増やすこと。これが地域の安全・安心を底上げします。
元消防職員として現場で強く感じたのは、災害時に助かる地域ほど、平時に“声をかけられる空気”があるということです。イベントは、その空気を作る最短ルートの一つです。

出典:鹿児島県・薩摩川内市消防局「地域と共に守る安全・安心-『消防フェスタ2025』」

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