【元消防職員が解説】女性労働基準規則の対象物質と就業制限の範囲|全ての女性労働者(特に妊産婦)を守る安全設計

化学物質を扱う現場では、「誰がどの作業に就けるのか」を正確に理解しておくことが安全管理の基本です。
女性労働基準規則は、全ての女性労働者を対象とした規制であり、特に妊娠中・産後・授乳中の女性(妊産婦)については、より厳格な配慮が求められます。

結論から言うと、
対象物質(26)+ 発散の程度 + 作業環境測定の管理区分
この3点で就業制限の判断が決まります。


■① 結論|対象は「全ての女性労働者」+特に妊産婦は厳格管理

女性労働基準規則は、妊娠の有無を問わず全ての女性労働者が対象です。
そのうえで、妊娠中や産後1年以内などの妊産婦については、より慎重な取り扱いが求められます。

ポイントは次の通りです。

・対象物質は26種類
・すべての業務が一律禁止ではない
・曝露リスクが高い作業環境に就業制限がかかる

安全管理は「個人の判断」ではなく「法令と測定結果」で決めます。


■② 対象物質(26物質)|妊娠・出産・授乳機能に影響し得る物質

対象となる26物質は以下です。

1 塩素化ビフェニル(PCB)
2 アクリルアミド
3 エチルベンゼン
4 エチレンイミン
5 エチレンオキジド
6 カドミウム化合物
7 クロム酸塩
8 五酸化バナジウム
9 水銀およびその無機化合物(硫化水銀を除く)
10 塩化ニッケル(Ⅱ)(粉状のものに限る)
11 砒素化合物(アルシンと砒化ガリウムを除く)
12 ベータ―プロピオラクトン
13 ペンタクロルフェノール(PCP)およびそのナトリウム塩
14 マンガン
15 鉛およびその化合物
16 エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)
17 エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
18 エチレングリコールモノメチルエーテル
19 キシレン
20 N,N-ジメチルホルムアミド
21 スチレン
22 テトラクロルエチレン
23 トリクロルエチレン
24 トルエン
25 二硫化炭素
26 メタノール


■③ 就業制限の根拠法令

根拠となる主な法令は以下です。

・労働基準法 第64条の3
・女性労働基準規則 第2条・第3条

女性労働者の健康、とくに妊娠・出産・授乳機能への影響を未然に防ぐことが目的です。


■④ 就業制限①|蒸気・粉じんの発散が著しい業務

対象物質を扱う作業場のうち、

・タンク内
・船倉内
など、蒸気や粉じんの発散が著しく、呼吸用保護具の着用が義務付けられている業務は就業制限の対象になります。

ここで重要なのは「物質がある」だけではなく、曝露濃度が高い環境かどうかです。


■⑤ 就業制限②|第三管理区分となった屋内作業場

労働安全衛生法令に基づく作業環境測定を実施し、

第三管理区分(規制値超過・改善が必要な状態)

と評価された屋内作業場での業務も就業制限対象です。

ここで注意すべき点は、
第三管理区分は主に、

・特定化学物質障害予防規則
・有機溶剤中毒予防規則
・鉛中毒予防規則

の対象物質に関して評価される点です。

単に濃度があるというだけでなく、法令上の測定・区分に基づいて判断されます。


■⑥ 実務上の重要ポイント|SDSと測定結果の共有

現場での混乱を防ぐために重要なのは、

・対象物質のSDS確認
・作業環境測定の実施
・管理区分の共有
・妊娠等の申出への迅速対応

安全は「気遣い」ではなく「仕組み」です。


■⑦(一次情報)見えない化学物質ほど、ルールが命を守る

元消防職員として化学災害対応に関わった経験から言えることは、
化学物質は目に見えないからこそ、ルールを守ることが最大の防御ということです。

臭いがしない、刺激が弱い、すぐ症状が出ない。
だからこそ、測定・区分・規則が命を守ります。

妊産婦だけでなく、全ての女性労働者を守るための制度設計です。


■⑧ 判断に迷った時のチェックリスト

迷ったら以下を確認します。

1 対象26物質に該当するか
2 発散が著しい作業か
3 第三管理区分かどうか
4 妊娠・産後・授乳の状況

この4点で整理すれば判断は明確になります。


■まとめ|「対象物質 × 発散状況 × 管理区分」で判断する

女性労働基準規則は、全ての女性労働者を対象にしつつ、特に妊産婦を厳格に保護する制度です。

結論:
対象物質(26)と作業環境の管理区分を正しく理解すれば、就業制限の判断は迷わない。

化学物質の安全は根性では守れません。
法令・測定・仕組みで守る。これが最も確実な方法です。


出典:
・e-Gov法令検索「女性労働基準規則」
・厚生労働省「妊娠中・出産後の女性労働者の母性健康管理」リーフレット

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