消防学校に入る前、多くの人が口に出しにくいけれど気にしているのが、
「もし途中で辞めたくなったらどうなるのか」
という不安です。
訓練がきつすぎたらどうするのか。
人間関係が無理だったらどうなるのか。
体調が持たなかったら、本当に続けるしかないのか。
結論から言えば、消防学校で途中退校は現実にあります。
ただし、それは「合わなければすぐ辞めればいい」という軽い話ではなく、任命権者、消防学校、本人の三者に関わる正式な手続きと判断を伴うものです。
元消防職員として率直に言えば、入校前に一番大事なのは、退校を怖がりすぎることでも、逆に軽く考えることでもありません。
「どんな時に本当に危ないのか」「誰にどう相談すべきか」を先に知っておくことです。
■① まず前提として、途中退校は制度上きちんと存在する
消防学校では、途中退校は制度上きちんと想定されています。
栃木県消防学校規則では、任命権者が学生を退校させようとするときは、退校願を提出して校長の許可を受けるとされています。
徳島県消防学校規則でも、病気その他やむを得ない理由により退校させようとする場合は、理由を明らかにして校長の承認を受けることが定められています。 (pref.tochigi.lg.jp) (reiki.pref.tokushima.lg.jp)
つまり、途中退校は「ありえないこと」ではありません。
ただし、本人がその場の感情だけで勝手に決めるものではなく、正式な理由と手続きのある判断です。
防災士として見ても、ここはかなり大事で、苦しい時ほど「全部終わり」と思い込みやすいですが、実際には制度上の流れがあります。
■② 公式の全国退校率は見つからないが、「まったく起きない話」ではない
ここは正確に言った方がいいです。
全国共通の公式退校率は確認できませんでした。
だから、「消防学校では何%が辞める」と断定するのは危険です。
一方で、実際に退校処分や途中退校の事例がないわけではありません。
埼玉県消防学校は2024年、第149期初任教育課程の学生143人のうち、賭博行為により1人を退校処分、8人を謹慎処分と公表しています。
また消防庁の研修記事でも、研修途中で人事異動や所属事情により途中退校した例が確認できます。 (pref.saitama.lg.jp) (fdma.go.jp)
元消防職員として率直に言えば、消防学校の途中退校は
「みんな普通に辞める」
というほど軽いものではありません。
でも、
ゼロでもない
です。
このくらいの距離感で捉えるのが一番現実的です。
■③ よくある理由は「体力」だけではなく、生活全体の崩れ
入校前の人は、途中退校の理由を
「訓練がきつすぎるから」
と考えがちです。
もちろんそれもあります。
でも元消防職員として見ると、実際にはもっと複合的です。
たとえば、
・体力的についていけない
・持病やケガ、腰痛など身体面の問題
・睡眠不足や食欲低下などの生活の崩れ
・人間関係や集団生活のストレス
・教官の指導や規律への適応困難
・家族事情や私生活の大きな変化
・不祥事や規律違反
などです。
つまり、途中退校は「根性がないから」ではなく、体・心・生活・規律のどこかが先に崩れた結果として起こることが多いです。
だから入校前から「体力だけつければ安心」と思いすぎない方がいいです。
■④ 辞めたくなった時に一番危ないのは“無言で限界まで行くこと”
元消防職員として、ここはかなり強く言いたいです。
消防学校で本当に危ないのは、
辞めたくなること自体ではなく、誰にも言わずに限界まで抱え込むこと
です。
苦しくなった時、人は
「まだ我慢しないと」
「ここで弱音を吐いたら終わり」
と考えやすいです。
でも、そこから一気に体調を崩したり、感情が切れたり、規律違反や衝動的な判断につながることがあります。
防災士として見ても、危機管理では“違和感の段階で共有する”ことが鉄則です。
消防学校も同じで、
眠れない
食べられない
涙が出る
朝に吐き気がある
訓練が怖くて動けない
こうしたサインが続くなら、かなり危険信号です。
辞める・辞めないの前に、まず共有することが大切です。
■⑤ 相談の流れは「同期より先に教官方・所属・学校側」を意識した方がいい
苦しい時、人は同期に相談しがちです。
それ自体は悪くありません。
ただ、元消防職員として現実的に言うと、正式に状況を動かせるのは学校側や所属側です。
制度上も、退校は任命権者や校長の手続きを伴います。
だから、本当に続けるかが揺らぐほどの問題なら、
・まず教官や担当者へ相談
・必要に応じて所属消防本部へ共有
・体調や心身の問題なら医療・相談窓口につなぐ
という流れを意識した方がいいです。
消防庁はハラスメント等への対応策として、相談窓口や通報制度の整備、初任科教育段階での共通認識づくりの重要性を示しています。
つまり、今は「我慢するしかない」時代ではなく、相談する仕組みが前提にあると考える方が正確です。 (fdma.go.jp) (fdma.go.jp)
■⑥ 退校理由として“不祥事や規律違反”はかなり重い
途中退校には、体調不良ややむを得ない事情だけでなく、規律違反による処分退校もあります。
埼玉県消防学校の公表事例では、校内での賭博行為により退校処分が出ています。 (pref.saitama.lg.jp)
元消防職員として率直に言うと、消防学校では
「このくらいは大丈夫だろう」
が一番危ないです。
寮生活、同期とのノリ、軽い遊び感覚が、不祥事に変わることがあります。
だから途中退校を避ける上で重要なのは、体力やメンタルだけでなく、規律違反に近づかないことです。
■⑦ “辞めたくなる瞬間”と“本当に辞めるべき状況”は分けて考えた方がいい
消防学校では、一度も「もう辞めたい」と思わずに終わる人ばかりではありません。
元消防職員として言えば、
訓練で強く注意された日
体力がついていかない週
同期と比べて落ちた日
休み明け
こういう時に一瞬そう思うことは、珍しくありません。
でも、そこで大事なのは、
一時的なしんどさなのか、継続する危険信号なのかを分けることです。
たとえば、
・1〜2日で戻る落ち込み
・疲労で一時的に弱っているだけ
なら、まず生活を整える余地があります。
一方で、
・数週間続く不眠
・食事が取れない
・過呼吸や強い不安
・身体症状が悪化する
・違法・不適切な状況がある
なら、かなり重く見た方がいいです。
つまり、辞めたい気持ちが出た瞬間に結論を出すのではなく、危険信号の継続を見る方が現実的です。
■⑧ まとめ
消防学校で途中退校は現実にあります。
ただし、全国共通の公式退校率は確認できず、「みんな普通に辞める」とも「絶対に辞められない」とも言えません。
制度上は、任命権者や校長の手続きの中で退校が扱われ、病気その他やむを得ない理由による退校規定もあります。
一方で、規律違反による退校処分の公表例もあります。 (pref.tochigi.lg.jp) (pref.saitama.lg.jp)
元消防職員として強く言えるのは、消防学校で本当に大切なのは「絶対に辞めないと意地を張ること」ではなく、危ない時に無言で限界まで行かないことです。
迷ったら、まずは一時的なしんどさか、継続する危険信号かを分ける。
次に、同期だけで抱えず、教官方・所属・相談窓口へ早めにつなぐ。
この考え方が、一番現実的で自分を守りやすいです。
出典:栃木県消防学校規則

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