消防学校の訓練の中で、不安を感じやすいものの一つが「夜間縦走訓練」です。
暗い中を歩くのか?どのくらいの距離?きついのか?怒られるのか?――入校前はイメージが膨らみます。
結論から言うと、夜間縦走訓練は“根性試し”ではありません。
災害現場で必要になる「暗闇でも動ける力」「隊として崩れない力」を身につけるための訓練です。
正しく理解して準備すれば、必要以上に怖がるものではありません。
■① 夜間縦走訓練とは何か
夜間縦走訓練とは、夜間に一定距離を隊列で移動する訓練です。
単なるウォーキングではなく、以下の要素を含みます。
・隊列維持
・号令・復唱
・時間管理
・装備管理
・体力管理
・安全確保
暗さという不利な条件の中で、統一行動を崩さないことが目的です。
■② なぜ夜に行うのか
火災や災害は昼だけに起きません。
夜間出動は現場の常態です。
夜は、
・視界が狭い
・足元が不安定
・疲労が蓄積している
・判断力が落ちやすい
という条件が重なります。
この環境で「隊として崩れない」ことを体で覚えるのが夜間縦走訓練です。
■③ きついのは体力より“メンタル”
実際にきついのは距離そのものより、
・眠気
・暗さ
・不安感
・声が出にくい状況
です。
だからこそ大切なのは、
・一定の歩幅を維持する
・呼吸を乱さない
・前の隊員だけを見る
・考えすぎない
という「崩れない型」です。
■④ 評価されるポイント
夜間縦走で見られるのは、速さではありません。
・返事が出るか
・隊列が乱れないか
・遅れた隊員を置き去りにしないか
・安全確認ができるか
消防は個人競技ではありません。
“全員で到達する”ことが最優先です。
■⑤ やってはいけない行動
夜間縦走で事故につながりやすいのは次の行動です。
・無理にスピードを上げる
・小走りで転倒する
・私語で集中を切らす
・疲労を隠して申告しない
夜は小さなミスが大きな事故になります。
安全第一が最優先です。
■⑥ 今からできる準備
特別なトレーニングより大切なのは基礎です。
・日頃から姿勢を意識する
・歩幅を安定させる
・靴擦れ対策を知る
・水分補給を習慣化する
そして一番大事なのは「焦らない心」です。
夜は焦るほど崩れます。
■⑦(一次情報)災害現場で本当に強いのは“静かに動ける人”
被災地派遣や夜間活動を経験して感じたのは、
夜に強い人は体力自慢ではなく、“静かに型に戻れる人”だということです。
暗闇、疲労、寒さ、情報不足。
その中でも、
・確認
・復唱
・隊列維持
を崩さない人が信頼されます。
消防学校の夜間縦走は、その感覚を安全な環境で学ぶ時間です。
■⑧ 不安を減らす考え方
夜間縦走は一生続くものではありません。
期間限定の成長イベントです。
「きついかも」ではなく、
・終わった後に自信が残る
・同期との絆が強まる
・夜間活動への耐性がつく
と捉えると、意味が変わります。
■まとめ|夜間縦走訓練は“根性”ではなく“統一行動”を学ぶ時間
夜間縦走訓練は、暗闇の中でも隊として崩れずに動ける力を身につける訓練です。
速さよりも、隊列・復唱・安全確認が評価されます。
結論:
夜間縦走訓練は怖い訓練ではなく、夜でも冷静に動ける消防士になるための基礎づくりです。
元消防職員として現場や災害対応を見てきた実感として、
夜に強い人は「気合い」ではなく「型」を持っている人でした。
不安より準備。
焦りより呼吸。
それが夜間縦走を乗り越えるコツです。
出典:総務省消防庁「消防学校における教育訓練の概要」

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