火災は「消して終わり」ではありません。
本当に重要なのは、“なぜ起きたのか”を突き止めることです。
その役割を担うのが、警視庁捜査1課内にある専門チーム「火災犯捜査係」です。
焼け跡から真実を拾い上げ、必要であれば再現実験まで行う。今回はその役割と、防災との関係を整理します。
■① 火災犯捜査係とは何か
火災犯捜査係は、火災の原因究明と事件性の有無を調べる専門チームです。
・焼け跡での実況見分
・現場検証
・専用施設での再現燃焼実験
火の出どころ、燃え広がり方、出火時刻、可燃物の配置などを科学的に分析します。
火災は証拠が“焼ける”事件です。だからこそ高度な専門性が求められます。
■② 1953年発足、木造家屋時代の火災とともに拡充
1953年に「放火班」として9人体制で発足。
当時は木造住宅が主流で、火災件数も多く、1966年には約30人に拡充されました。
現在は人数非公表ですが、
・原因究明を担う「1係」
・事件捜査を担う「2係」
という体制で活動しています。
■③ 焼け跡から何を読み取るのか
焼け跡には「火の足跡」が残ります。
・V字型の焼け方
・炭化の深さ
・溶け方の違い
・電気配線の溶断痕
これらを総合して出火点を特定します。
放火か、失火か、通電火災か。
見た目では分からない部分を科学で積み上げます。
■④ 再現燃焼実験の意味
火災犯捜査係は、専用施設で実際に燃やす実験も行います。
これは非常に重要です。
・燃え方の再現
・延焼速度の確認
・可燃物の影響検証
元消防職員として言えますが、現場は一瞬です。
しかし再現実験では“条件を固定して比較”できます。
科学的裏付けがあるからこそ、原因特定の精度が上がります。
■⑤ ベテランの経験値が生きる世界
通算十数年在籍するベテランもいるとされています。
火災原因究明は、教科書だけでは足りません。
私自身、火災現場で感じたのは「違和感」に気づけるかどうか。
炎の広がり方、家具の倒れ方、煙の流れ。
経験の蓄積が判断力を磨きます。
だからこそ、各地の警察本部から出向者を受け入れ、ノウハウを共有しているのでしょう。
■⑥ 防災との関係|原因を知ることが最大の予防
火災原因が明らかになれば、
・電気配線の改修
・暖房器具の注意喚起
・通電火災対策
・放火対策強化
具体的な予防策につながります。
阪神・淡路大震災や東日本大震災では電気火災が多発しました。
原因究明が進んだからこそ、感震ブレーカーなどの対策が生まれました。
■⑦ 被災地で感じた「火災の二次被害」
被災地派遣やLOとして入った地域では、
倒壊よりも“延焼”が被害を拡大させる場面を何度も見ました。
火災は単独災害ではありません。
地震+火災
停電+再通電
避難遅れ+煙
原因を突き止める専門チームがあるからこそ、次の災害で同じ被害を繰り返さずに済みます。
■⑧ 私たちができること
専門チームの活動は市民には見えにくいものです。
しかし、私たちにできる予防はあります。
・コンセント周りの整理
・延長コードの劣化確認
・地震後はブレーカーを落とす
・放火されにくい環境づくり(可燃物を屋外に放置しない)
火災は「起きてから」では遅い災害です。
■まとめ|火の真実を追う人たちが未来を守る
火災犯捜査係は、焼け跡から原因を突き止める専門家集団です。
消火の裏で、静かに再発防止の基礎を築いています。
結論:
火の原因を突き止めることが、最大の防火対策である。
元消防職員として断言します。
原因究明は“過去を見る仕事”ですが、その目的は“未来の命を守ること”です。
出典:時事通信「ニュースワード『火災犯捜査係』」(2026年2月28日)

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