現示旗とは、消防訓練で火災や煙の状況を視覚的に示す旗のことです。
実火や実煙を使わずに「ここが火点」「ここが延焼区域」「ここが煙滞留」「ここは進入禁止」といった想定を明確に示し、安全性を保ちながら判断力を養うための実在ツールです。日本や台湾の訓練資料でも、火災仮定位置を旗で示す運用例が確認されています。
■① 現示旗の定義と基本的な役割
現示旗は、炎や煙などの訓練想定を付与する旗です。
代表的な色分けの運用例は以下の通りです。
・赤旗:火点(出火場所)
・黄旗:延焼拡大区域
・青旗:煙滞留想定区域
・黒旗:高温・危険・進入禁止区域
色の意味は組織ごとに固定して運用するのが基本です。
視覚で示すことで、参加者が状況を“読む”訓練になります。
■② なぜ訓練効果が高いのか
現示旗の最大の効果は、指示待ち訓練から自律判断訓練へ移行できることです。
旗があると、隊員は次のように考えます。
・火点はどこか
・延焼はどの方向か
・煙が溜まる位置はどこか
・退路は確保されているか
実際の自衛消防編組訓練でも、旗を段階的に追加して状況を変化させることで、判断力が高まることが確認されています。
■③ 実火・実煙を使わない安全性
現示旗の大きなメリットは、安全側でリアリティを作れることです。
・視界不良が発生しない
・転倒リスクが低い
・換気不要
・低コストで多数訓練可能
スモークマシンや実火訓練は効果が高い一方、事故リスクも伴います。
現示旗は初級〜中級訓練において、非常にバランスの取れた手法です。
■④ 段階的変化で“状況判断力”を鍛える
効果を高めるには、旗を固定せず、段階的に変化させます。
例:
1回目:火点のみ
2回目:延焼区域追加
3回目:退路閉鎖(黒旗設置)
この変化が「想定力」を鍛えます。
被災地派遣の現場でも、目に見えない危険を想定できるかどうかで判断が分かれました。現示旗は、その思考訓練になります。
■⑤ よくある失敗例
運用を誤ると効果は落ちます。
・色の意味が毎回変わる
・説明が長く、覚えられない
・旗の高さが低く視認性が悪い
・振り返りをせず終わる
旗は“ルール固定”が命です。
■⑥ 運用のコツ(実務的ポイント)
・色の意味を統一する
・旗は胸より上の高さで設置する
・開始前に意味を復唱させる
・終了後に「なぜその判断をしたか」を確認する
振り返りまで実施して初めて、判断訓練になります。
■⑦ 行政・基準との整合性
総務省消防庁の訓練関連資料や「消防訓練礼式の基準」では、安全管理や合図統一の重要性が示されています。
現示旗の活用は、こうした安全管理指針と整合する実務的手法です。
■⑧ 現示旗は“想定力”を鍛える装置
現示旗は、単なる目印ではありません。
火災や煙の状況を視覚的に示すことで、参加者が「自分で読む」訓練に変わります。
自律型避難の考え方でも、最終的に頼れるのは自分の判断力です。
旗一枚が、その力を育てます。
■まとめ|現示旗は安全に判断力を高める実在ツール
現示旗は、消防訓練で火災や煙の状況を視覚的に示す実在の旗であり、安全性を保ちつつ判断力を養う実務ツールです。
結論:
現示旗は、動作訓練を「状況判断訓練」に引き上げる装備です。
元消防職員としての実感ですが、強い組織ほど“想定”を軽視しません。
旗で状況を可視化するだけで、訓練の質は確実に変わります。
出典:総務省消防庁「消防訓練礼式の基準」関連資料

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