【元消防職員が解説】統括防火管理者とは?複合ビル・大規模施設で「全体の火災安全」を回す要

複合ビルや大規模施設では、店舗・事務所・テナントなど関係者が多く、火災時の動きがバラバラになりやすいのが現実です。避難誘導の判断が割れたり、通報や初期消火が遅れたりすると、被害は一気に拡大します。そこで重要になるのが「統括防火管理者」です。これは肩書きではなく、建物全体の火災安全を“回す責任者”の役割です。ここでは、統括防火管理者が何を担い、何ができれば被害を減らせるのかを整理します。


■① 統括防火管理者とは何か

統括防火管理者とは、複合用途の建物や多数の関係者が入る施設などで、建物全体の防火管理を統括するために選任される責任者です。テナントごとの防火管理が存在していても、建物全体としての避難・通報・初期消火・連携が揃わなければ、火災時に混乱します。統括防火管理者は、その「全体」を整える役割を担います。


■② なぜ必要なのか(テナント任せだと穴が残る)

テナントごとに防火管理者がいても、建物全体では次のような穴が残りがちです。
・共用部(階段・廊下・エレベーターホール)の管理が曖昧
・非常放送や避難誘導の指示が統一されない
・訓練がテナント単位で分断される
・災害時の連絡網がつながらない
火災は境界線を無視して広がります。統括防火管理者は、境界線の“すき間”を埋めるためにいます。


■③ 統括防火管理者が整えるべき「全体最適」のポイント

統括防火管理者が整えるべき核心は、建物全体の共通ルールです。
・火災発生時の初動(通報、初期消火、避難誘導の優先順位)
・共用部の避難障害の排除(物を置かない、扉を塞がない)
・非常設備の運用(非常放送、誘導灯、防火戸の扱い)
・テナント間の連絡体制(誰が誰に伝えるか)
「知っている」ではなく「動ける」形に落とすことが重要です。


■④ 消防計画との関係(紙を作るより、回る形にする)

統括防火管理者は、建物全体の消防計画に関わり、関係者の役割分担や連携手順を明確にします。ただし、消防計画は作っただけでは意味がありません。
・誰が通報するか
・誰が非常放送を入れるか
・どこで合流し、誰が点呼するか
・避難誘導の声かけはどうするか
こうした実務が、現場で迷わないレベルまで具体化されているかが勝負です。


■⑤ 訓練で差が出る(声かけ避難の徹底)

大規模施設ほど、火災時は「誰かがやるだろう」で動きが止まります。だから訓練では、声に出して役割を割ります。
・「119番お願いします!」
・「非常放送を入れてください!」
・「こちらへ避難です、走らないで!」
こうした声かけがあるだけで、人の流れが整い、逃げ遅れを減らせます。統括防火管理者の仕事は、声かけ避難が自然に出る土台を作ることです。


■⑥ 被災地派遣(LO)で痛感した「共用部が詰まると全体が止まる」現実

被災地派遣(LO)の現場では、情報や動線が一か所で詰まると、全体が止まる場面を何度も見ました。避難所でも、通路に荷物があふれるだけで救護や搬送が遅れ、混乱が増えます。建物火災でも同じで、共用部が塞がれたり、誘導の指示が割れたりすると、全体が機能不全になります。統括防火管理者は、平時から“詰まり”をなくし、非常時に全体が回る形を作る役割だと実感しています。


■⑦ よくある誤解(統括=全部やる人ではない)

統括防火管理者は、何でも一人でやる役ではありません。重要なのは、
・役割を割り振る
・連絡網をつなぐ
・訓練で確認する
・改善を回す
という「仕組みづくり」です。統括が機能すると、現場はむしろ軽くなります。


■⑧ 今日からできる最小の改善(見える化と一つだけ直す)

大規模施設で最初に効くのは、難しい改革ではなく見える化です。
・避難経路に物が置かれていないかを週1で確認
・非常口の前を“絶対に空ける”ルールを徹底
・火災時の最初の一言(合図)を決める
一つだけ直して、継続する。これだけで、火災時の混乱は確実に減ります。


■まとめ|統括防火管理者は「全体の穴」を埋め、避難・通報・連携を揃える責任者

統括防火管理者は、複合ビルや大規模施設で、テナントごとの防火管理だけでは残る“全体の穴”を埋めるための責任者です。共用部の管理、初動の統一、消防計画の実務化、訓練による声かけ避難の定着など、全体を回す仕組みづくりが本質です。火災は境界線を無視して広がるため、全体最適ができている施設ほど被害を抑えやすくなります。

結論:
統括防火管理者の役割は「全部やる」ではなく「全体が迷わず動ける仕組みを作る」こと。共用部と連携が整うほど、逃げ遅れと混乱は減ります。
元消防職員として、現場では“動線の詰まり”と“指示の分断”が被害を拡大させる場面を見てきました。統括の力でそれを平時に潰しておくことが、結果的に命を守ります。

出典:https://www.fdma.go.jp/

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